メンバーズ、元アトコレのMiner Studio買収――若手起業家がつくるメディアの未来
ソーシャルメディア活用支援やWebサイト運用などを提供するメンバーズが9月29日、株式会社マイナースタジオ(元・株式会社アトコレ)の買収・子会社化を発表しました。買収額は公表されていませんが、複数の関係者によれば数億円規模だそう。
アトコレは「みんなの美術館 アトコレ」の運営から事業をはじめ、ニュース解説サイト「The New Classic」やお出かけ情報サイト「Banq」など複数のWebメディアを5名ほどのチームで運営しています。
マイナースタジオ社の原型となったアトコレはクラウドワークス取締役副社長・成田修造さんやMERY運営のペロリ代表・中川綾太郎さんや河合真吾さんが在籍していたことでも知られています。資金関連では2011年、Samurai Incubate Fundより約450万円の資金調達を実施。その後もともと代表をつとめていた成田さんが退任され、チームが一新して1年半前から本格的に再スタート、今回の売却に至りました。
「メディアよりもサービスが伸びていた」
今回の件に関して、マイナースタジオ代表の石田健さんに少しお話を伺うことができました。月間200〜300万訪問数に到達していたこともあるThe New Classicが評価されたのかと思っていましたが、どうやらBanqやその他オウンドメディア構築・運営/コンテンツマーケティング関連の知見が大きかったようです。
「実はメディア運営よりもサービスのほうが伸びていたんです。コンテンツをつくり、メディアに落とし込み、流通や分析までおこなうサービスを提供しており、メンバーズグループに入ることでいまのチームが活きるのではないかと思いました」
現在いくつかのオウンドメディア運営にかかわっており、その売り上げが伸びていたとのこと。このあたりには、短期間で複数メディアを数百万UUまで成長させてきたノウハウが生きているのでしょう。
仕組みを意識したインバウンドメディアをつくる
メンバーズでは中長期的に訪日外国人向けのインバウンドメディアに注力したいとの考えがあり、アトコレが運営してきたローカルなお出かけ情報メディア「Banq」がその部分を担っていくようです。
同メディアはリニューアルをおこない、他言語展開を視野に入れて成長させる計画だそう。アトコレではここまでに書かれていないメディアも水面下で運営していましたが、今後はBanqに集中させていくとのこと。
「オウンドメディア運営に関するコンテンツ制作や流通で得た資金を新たなインバウンドメディアに投入していくようなイメージを持っています。チームとしてもワンプロダクトを伸ばすよりも、コンテンツの制作や流通の仕組みをどう活かしていくのかに関心がありました。
また、既存のインバウンドメディアの多くは日本のいいところを紹介するところに寄っていて――ぼくもそこに関心はあるのですが――それなりの数の読者を獲得していくには、仕組みを意識したメディアづくりが大切になると考えています」
「複雑なものを複雑なまま伝えたい」
ところで、石田さんは個人として海外メディア動向を伝えるメディア「メディアハック」を運営していたり、The New Classic時代にはいくつかの重要かつ本質を突く(超)長文記事を執筆するなど、書き手としても精力的に活動しています。
個人的にはThe New Classicのコンセプトやアプローチが好きで、海外メディアにおけるVox.comやBusiness Insider、Quartzあたりの影響が見え隠れしています。このあたりのアプローチを咀嚼して実践している日本のメディア運営者は石田さんくらいしか思い浮かびません。そのコンセプトや狙いについては過去のインタビューなどでも話されています。
石田:複雑なものを複雑なまま伝えたい、という意味では、編集の方針はむしろ時代に逆行しているとも思うんです。どんなにニュークラでふざけた画像を出しても、その分で、重めにコミットしている人をちゃかすことはしません。複雑なことを複雑なまま届ける、それがいちばんやりたいことです。
(中略)
石田:「世界に世界を説明しよう」を掲げています。これはフランスの歴史家リュシアン・フェーヴルの言葉です。「世界に世界を説明する」。これはとても難しくて、とてもクールなことだと思っています。
たとえば「戦争が起きました」。では「なぜそれが起きたのか」、これを実証しようと思ったらコストも時間もかかるわけです。今のところ、それは大学が担保しようとしていますが、本来的には、大学だけじゃなくて色んなところが担うものだと思っています。新聞なんかもそのひとつですね。
とはいえ、そうした実証はお金や人材がいないとできません。たとえばある人が「第二次世界大戦においては、メディアの影響が大きかった」と語りたいのなら、しっかりとリサーチデザインをして、仮説を立てて…という作業をする必要があります。しかし、そういうコストは一人のブロガーではまかない切れません。ニュークラはそういう情報を生産できる場になればいいな、と考えています。
(「イケハヤマガジン増刊号 Vol.1:MEDIA-MAKERSムーブメントは起こるのか!? メディア野郎への道標」より)
過去には「インターネット界隈の事を調べるお」にて「数年後『アトコレマフィア』とか呼ばれるかもしれない若手起業家達」というブログ記事も出ていたアトコレ(現・マイナースタジオ)。先述のとおり、コアメンバーは多方面で活躍しています。今回の買収は、若手メディア起業家のひとつの成功として重要な出来事だといえそうです。
Yahoo!ニュースはどのように記事の価値を判断するのか? ソーシャル&スマホ普及がもたらす「ニュースの変容」
ヤフートップには1日100本のニュースを掲出
先日、スクーにて「何が『ニュース』なのか Yahoo!ニュースに学ぶ価値判断と『見出し力』」という授業が開講されていました。登場したのはヤフーのニュース編集部リーダーの伊藤儀雄さん。編集部の体制やトピックス編集方針・判断基準のみならず、ニュースとはなにか、といったことを改めて考えるきっかけになる授業でした。
Yahoo!ニュースのトップは1日約100本の記事が掲載されるそうです。300以上の提携メディアから毎日4000本以上のニュースが届くなかで、人が読めるものは限られているため、記事の重要性と本数のバランスがとれているのが現状100本程度とのこと。
1996年7月にスタートし、いまでは月間約100億PV超え、スマホからのトラフィックが半数。2014年のブラジルW杯がきっかけで、スマホ経由が伸びていったのは興味深いことです。東京、北九州、大阪、八戸の4ヵ所体制・4交代制(24時間シフト)の編集部は約25名で構成されているそう。トップの編成は30分に1回(1〜3本)ほど変更され、約2時間でトップ記事8本がすべて変わるといったやり方。
見出しの閲覧だけで、政治知識の学習に効果
やはりエンタメとスポーツがよく読まれるそうですが、硬派なニュースも掲載しているYahoo!ニュース。ヤフーと国立情報学研究所による共同調査によれば、見出しを閲覧するだけでも、政治知識の学習に効果的という結果が出ています。
- Yahoo! JAPANのトップページに掲載される「Yahoo!ニュース」のトピックス見出しを閲覧するだけで、個別の見出しをクリックして記事自体を読まなくても、政治に関する知識の学習効果が認められました。これは、「Yahoo!ニュース」が政治に関する知識を社会に広く伝達するという重要な役割を担っていることを示しています。
- 「Yahoo!ニュース」の閲覧は、政治的関心の高い層と低い層の、政治に関する知識差の縮小に効果があります。特に、政治に関心の低い層が政治的リーダーのパーソナリティについて学習する場として機能しました。
- これらの結果は、ニュースをタイムリーに整理・選定し、バランス良く掲載することで新たな価値を生んできた「Yahoo!ニュース」とその特性、および編集姿勢がもたらした結果であるといえます。
編集方針は、公共の利害にかかわる重要な出来事である「公共性」と世の中の多くの人が知りたいと思っている事象「社会的関心」の2つのバランスを重要とし、7つの観点からニュースの価値を判断しているとのことでした。
7つとは、1. 速報性/時事性/今日性、2. 真実性/信頼性、3. 新奇性、4. 公益性、5. 認知度、6. 表現力、7. 品位。どんなニュースが価値があるんだろう、と思ったときに、こういったポイントで考えてみるのは有用だと感じました(もちろん価値あるニュースだからといってすべてのポイントが含まれるというわけではないです)。
ニュースを変える「ソーシャルとスマホ」
また、伊藤さんはニュースの変容について「ソーシャル&スマホ化」という点を挙げ、発信者、受信者、環境という3つに対して変化が起きていると説明していました。
- 発信者の変容:担い手の爆発的増加、ニュースの種類や質が多様化
- 受信者の変容:メディア接触回数の増加、情報ニーズの多様化
- 環境の変容:情報消費のサイクルが加速、確度や質の高い情報が流通拡散
新聞雑誌テレビなどマスメディア全盛の時代に比べて、現在のスマートフォンとソーシャルメディアが普及する時代においては、友人からの通知などのほうがニュースといったことも言えそうです。そういう意味では、メディアの役割のひとつであるアジェンダセッティング(議題設定)をどのように機能させていくのかは大きな課題になるなと思いました。
Yahoo!ニュースによる授業はこれ以外にもあるようですので、メディアにかかわる方はチェックされるとよいかもしれません。伊藤さんが書かれている「ソーシャル時代の『ニュース』と格闘する」というコラムも合わせて読むとさらなる理解につながるのではないかと思います。
経済誌フォーチュン、"最も影響力のある女性"についてのニュースレター「The Broadsheet」を開始
毎年、「最も影響力のある◯◯」シリーズを発表していることでも知られるアメリカの経済誌フォーチュン。同紙が、新しく、「最も影響力のある女性」についてのニュースレター「The Broadsheet」を開始しました。
「最も影響力のある女性」シリーズの延長線上にあるメディアと位置づけ、平日に配信しています(7月8日から配信がはじまっています)。女性リーダーの記事はもちろん、話題のトピック、インタビュー、アドバイスなどをコンテンツとしています。
女性はもちろん、女性に関するトピックを理解したい男性読者も想定しているとのこと。女性の働き方や社会的なポジションなど、日本ではまだまだ根深いものはありますが、このようなニュースレターやメディアの必要性は高まっていると感じます。戦略的なターゲティングのうえでのニュースレターはいいですね。
今回の内容とは関係ないですが、フォーチュンもビジネスメディアQuartz(クオーツ)のようなスクロールでURLが自然に変わるデザインになっていて、ニュースメディアのデザインとして一つの正解になっている感があります。
Fortune’s Most Powerful Women Team Announces Daily Newsletter - Fortune
BBCニュース、2022年までに5億人の読者獲得を目指す?
最近、ニューヨークタイムズ紙のイノベーションレポートが話題となっており、海外メディアを把握するのにぴったりです。
Guardianの記事によれば、BBCもレポートを出したとのこと。その中では、BBCはほかの新興メディア(Vice MediaやBuzzFeed)よりも「特徴や個性」が足りていないと分析しています。
そのレポートの中では、2022年までに5億人の読者獲得を視野にいれ、デジタル戦略に注力してく、といったことも書かれているようです。
(出典:newswhip)
ちなみに、BBCはツイッターでもっとも記事がツイートされている媒体です。しかしながら、それがトラフィックにつながっているかというと別問題。
上のグラフで9位のバズフィードは最高の月間トラフィックが1.6億PV、一方のBBCが1.5億と、及んでいない状況です。
2022年までに、スマホ、ソーシャルメディア時代に適応したモバイルファーストを進めていくとのことなので、今後の具体的な施策実行が期待されます。
ソーシャルメディア時代の情報発信、ジャーナリズムにおいては、大手メディアが新興メディアから学ぶことは多くありそうです。もちろん逆もありますが。
ニュースの身近化と、フィットする情報を届けるプッシュ型メディア
いま、ニュースが身近になっている気がします。
別の言葉で言うと、「自分ごと」「自分にフィットする」情報や出来事かどうかということが基準になるのかもしれません(これがニュース、これがニュースじゃない、とは厳密に言えないけれど)。
narumiさんのこの記事は、繰り返し読んでいる記事の一つです。
何をもってニュースと呼ぶかという基準は人それぞれなんだと思う。Facebookにアップされてる友だちのランチとか、地元の友だちの近況報告の方がよっぽどニュースだったりする。あるいは「誰かがあなたにTwitterでメンションを飛ばしましたよ」っていうスマホのアラートが重要なニュースだっていう人もいるかもしれない。
上記の記事の中では「読み手が知りたいこと、知りたいと思われる情報が適切なタイミングでわかりやすい形でポーンとスマホなんかに飛んできたら〜〜〜」という表現も見られます。
少し難しく言うと、その人のコンテクストに合わせて、ニュースが届く、そんなメディアが将来は出てくるのでしょう。コンテクストは、文脈や状況といった捉え方で問題ないと思います。
たとえば、「あなたにピッタリの情報をちょうどいいタイミングでお知らせする」というタグラインの「Google Now」。
天気や通勤路の交通情報、予定や自宅までの経路などを「カード」で知らせてくれるのです。まさに、ユーザーのコンテクストに合った情報を届けてくれる仕組み、サービスと言えるでしょう。
この記事の冒頭で述べたような「自分ごと」「自分にフィットする」ニュースが、ユーザーの状況に合わせてプッシュで表示されるようなことが近い未来に来ると思います。
ユーザーが情報を探すようなプル型ではなく、プッシュ型のニュースサービスの需要も増えてきそうです。
このようなメディアの需要が増え、「カード」で情報を受け取ることが当たり前になれば、「ニュース」や「記事」といった概念が一回くずれて、また新しい定義だったり、形をもっていくのだと思います。
海外ウェブメディアの最前線を進む「バズフィード」が実践する4つのポイント(そして迫り来る新興メディア)
Jonah Peretti(Founder & CEO of BuzzFeed)photo: TechCrunch via photopin cc
月間読者1.3億人を数えるウェブメディア
2006年にハフィントンポスト共同創業者Jonah Peretti(ジョナ・ペレッティ)氏らが中心となって立ち上げたウェブメディア「BuzzFeed(バズフィード)」。
月間読者8500万人を超えるサイト「バズフィード」に見る、これからのウェブメディアに重要な7つのポイントという記事で、ウェブメディアの最前線を進む同メディアのポイントをまとめました。
quantcastで調べてみると、直近の月間訪問数は1.3億人というデータとなっています。モバイルからが7割ほど。また、これまでに4300万ドルほどの投資も受けており、順調に成長につなげることができていることが伺えます。
アメリカ版、イギリス版、フランス版、スペイン版、ブラジル版と、どんどん他言語、グローバル展開を行っているところです。
今回は、このバズフィードを4つのポイントに絞って深堀りするとともに、迫り来る新興メディアについても紹介していきたいと思います。
1. リスト記事
バズフィードの真骨頂は「Listicle(List+Article)」とも呼ばれているリスト(まとめ)記事です。日本でも、NAVERまとめやnanapiなどでもリスト系の記事をよく目にしますが、バズフィードの場合は特にGIFを使ったものが受けていました。
そこで、スポンサーには、Google+(グーグルプラス)を迎え、「GIF Feed」カテゴリーを開設しました。グーグルプラスの月間アクティブユーザーは5.4億人以上で、毎週15億枚もの写真がアップロードされているそうです。その中の機能の一つ「Auto Awesome」ではGIF画像も作成でき、「GIF Feed」の右上には同機能を使ったGIFもコンテンツとして掲載されています。
バズフィードのバイラル力とGIF画像のコンテンツ力によって、どれだけグーグルプラスのプロモーションになっていくのか、引き続き見ていきたいカテゴリーです。
リスト記事(Listicle)についてはバズフィードの存在感が増すにつれて議論されるようになってきました。以下に挙げたものだけでも、「ジャーナリズムを変える」「リスト記事の時代」とか大きく出たような記事が見られます。
リスト記事は若い人が読者の多くを占めるバズフィードでは強みとなり、情報発信の形にも少しずつ影響力を持ち始めているのです。
- 5 ways the listicle is changing journalism | Media Network | Guardian Professional
- The 3 Key Types of BuzzFeed Lists To Learn Before You Die » Nieman Journalism Lab
- The Listicle Era
リスト記事系の新興メディアでは、20歳が立ち上げ、2000万人以上に読まれている「Distractify」や1人で運営し、3000万PVほどを記録した「Viralnova」から目が離せません。
2. ネイティブ広告
バズフィードはバナー広告をもたず、企業からのスポンサードコンテンツを販売しています。「バイラル」に強みを持っているので、広く人に読まれる広告を制作できるのです。
英ヴァージングループ傘下のプリペイド方式の携帯電話サービスを手掛けるVirgin Mobileの広告では、Facebookでも5万いいね!を超えており、60万PVほど読まれています。
3. 動画
2014年、動画メディアが来るなんてことをちらほら聞くことがあります。バズフィードでは2013年春から動画についての取り組みもスタートしているのです。
同メディアはCNNとタッグを組んだ、YouTubeチャンネル「CNNBuzzFeed」を開設し、毎週1本のペースでコンテンツをアップしています。
これまでに登録者は3万人を超え、約600万回再生を突破する規模にまで広がりました。1分ほどのニュースサマリーから、30分を超えるようなインタビューまで、多様なコンテンツを実験しています。
これは旧メディアと新メディアの融合として注目ですが、BuzzFeedはオリジナルのチャンネルも持っているのです。ネットワークの合計は7億回再生を超えるに至っています。
また、2番目で紹介した広告ともつながりますが、バズフィードでは動画広告も仕掛けています。2013年の2月にはすでにGEをスポンサーを迎え、動画を制作し、約90万回再生と成功を収めているのです。
さらに、ペット用品のピュリナの動画広告は380万回再生を超えています。
動画のジャンルの新興メディアでいうと、キュレーション系は、UpworthyやFaithit、ニュース制作&発信系では、NOWTHIS NEWS、NEWSY、TOMO NEWSなどが注目だと思います。日本でもオリジナル動画コンテンツをつくるメディアが生まれたらかなりアツいですね。
また、トレンド予測としてはVineやInstagram動画を活用したニュース、ジャーナリズムの取り組みが熱を増してくるような気がします。実際、海外テックメディアのMashableでは、NOWTHIS NEWSでVineをはじめとする動画ニュースを手がけていたJeff Petriello氏などをヘッドハントして短い動画コンテンツの発信に注力する姿勢を見せているのです。
4. 長文コンテンツ&調査報道
バズフィードが最近力を入れ始めた分野の一つに「調査報道」があります。2012年にPOLITICOで活躍していたBen Smith(ベン・スミス)氏を編集長に迎え、政治、ビジネス、調査報道、長文ジャーナリズムの分野にも積極的にコンテンツ展開が行われるようになりました。
2013年10月末には、調査報道で知られる非営利メディア「プロパブリカ」においてピューリッツァー賞受賞した記者Mark Schoofs(マーク・スクーフ)氏を調査部門に迎えられ、調査部門を率いることになりました。
彼が元々、プロパブリカに加わることになったのは2011年。それ以前は、ウォールストリートジャーナル紙の報道レポーターで活躍し、それよりももっと前、「The Village Voice」在籍時の2000年にはアフリカにおけるエイズに関する報道で、ピューリッツァー賞を受賞しているのです。
移籍した理由については、「バズフィードがアメリカの伝統的なジャーナリズムとデジタルの融合を図りたいと考えていること」、そして「調査部門の立ち上げをチャレンジしたい」という2つを挙げています。
130名以上のジャーナリストを抱える同メディアが、バズを起こして広告などを稼ぎ、そのお金を調査報道など社会性の高く時間とコストがかかる部分につぎ込んでいくという姿勢です。どのような記事が出てくるのか注目していきましょう。
また、バズフィードは長文ジャーナリズムにも注力しています。最近でも、スピン誌の編集者だったSteve Kandell(スティーブ・カンデル)氏をヘッドハントしたりと、この動きは加速していることが伺えます。
現状のところ調査報道までいかずとも、長文コンテンツは「LONGFORM」カテゴリーで読むことができます。読み応えありなコンテンツが多いです。電子化なども視野に入れているのでしょうか。
- Spring Break, Mumbai: How Surviving Sexual Assault Makes It Hard To Go Home Again
- How Melissa Leo Became An Overnight Sensation In Just 30 Years
この分野の新興メディアについては、イーベイ創業者が立ち上げる「First Look Media」や長文コンテンツを多く掲載している「Narratively」「Longreads」などが注目でしょう。
以上、4つのポイントでバズフィードや新興メディアを振り返りました。
バズフィードの概要などは下のスライドもチェックしてみると理解が深まると思います。このメディアの思想や見据えるところなどについても、別の機会に深堀りしてみたいです。
2014年、ウェブメディアはさらに盛り上がる! 注目の海外メディア4選
昨年はAmazonCEOのジェフ・ベゾスによるワシントンポスト買収やバイラルサイト「Upworthy」の急成長などメディア界の話題は多くありました。2014年は、さらにウェブメディアは盛り上がる年になることでしょう。
この記事では、個人的に2014年注目したい海外のウェブメディアをピックアップしてみます。
1. Distractify
2013年10月に弱冠20歳が立ち上げたばかりのウェブメディア「Distractify」。その1ヵ月後、ユニークユーザー数が2100万人を記録したことでも話題となりました。
その後、デザインも洗練されていき、現在1.3億人ほどの月間読者を抱える「BuzzFeed(バズフィード)」を追いかけるメディアとしてかなり注目しています。記事コンテンツは、バズフィードでもおなじみの動物まとめなど、リスト型の記事が多くを占めています。
先行するバイラルメディアの流れに乗って立ち上がった「Distractify」。スタート後、1ヵ月で2100万もの訪問数、3300万ページビュー、そして流入の9割がFacebookからとのこと。
このメディアを立ち上げたQuinn Huは、20歳の若者。Youtubeクリエイターとして活躍後、「Distractify」をつくりました。チームは3人からスタートし、現在は編集者やクリエイティブ周りの人材を多く加わっているようで、今後はネイティブ広告にも力を入れていくようです。
また、かねてからオリジナルの記事発信をしていくと言っているので、2014年、どれだけ成長していくのか、大手メディアを脅かす存在になるのか楽しみです。
2. Re/code
昨年の海外メディアに関するニュースの一つに、ウォールストリートジャーナル傘下のテックメディア「AllThingsD」を支えていた、ウォルト・モスバーグ氏とカラ・スウィシャー氏が契約を終えたことから、同メディアから離れることがありました。
以前から2014年1月1日にその2人が新メディアを立ち上げることが言われていましたが、「Re/code」というテックメディアがリリースされています(ニュース専門放送局「CNBC」のパートナーサイト)。一方のウォールストリートジャーナルでは「AllThingsD」をリニューアルし、「WSJD」となっています。
テックニュースやレビューに加え、AllThingsDで行っていたようなカンファレンスも「The Code Conference」として行っていくようです(5月に開催で、IntelやBlackberry、UberのCEO、その他豪華スピーカーが参加予定)。
また、AllThingsD時代からのブロガー/ライターも新メディアに参画しています。新しいテックメディアとして、2014年最も動向が注視されるメディアではないでしょうか。
3. The Information
ウォールストリートジャーナルで7年間ほどシリコンバレーを取材していたジェシカ・レジン氏が独立し、昨年末に立ち上げたのが「The Information」というメディアです。
同メディアは、現在8名ほどのチームで運営され、月額課金のニュースサイトに挑戦。年400ドルに設定しており、課金しないとほとんど機能しないサイト設計になっています。
課金系のウェブメディアには先例もあります。例えば、Andrew Sullivan氏が主宰し、10名ほどで更新している政治メディア「The Dish」は、年間100万ドル(約1億円)ほど集まっているのだとか(月額2ドル、年間20ドルという金額設定)。
このように海外の新興メディアの課金への挑戦は引き続き注目すべきところだと思います。
日本でも有料課金のウェブメディアとして「MyNewsJapan」の会員が2000人を突破したことが話題となっていたばかりです。その他、週150円で読み放題の「cakes(ケイクス)」のようなメディアも引き続き注目したいと思います。
4. First Look Media
CIA元職員のエドワード・スノーデン氏からのリークを受け、米国家安全保障局(NSA)の情報収集活動について、一連の暴露報道を行った英国ガーディアン紙の元コラムニスト、グレン・グリーンワールド氏。
2013年10月には、イーベイ創業者ピエール・オミダイア氏のニュースメディア立ち上げに参画することが明らかになりました。先日、メディア会社の名前が「First Look Media」に決定したばかりです。
オミダイア氏とグリーンワールド氏に加え、ドキュメンタリー映画制作者でスノーデン事件の際にも話題となったローラ・ポイトラス氏と調査報道記者で作家のジェレミー・スケイヒル氏が加わることも発表されています。
さらには、ローリングストーン誌の編集責任者であったエリック・ベイツ氏、ニューヨーク大学教授でメディア批評家のジェイ・ローゼン氏、ハフィントンポストでワシントン特派員を務めていたダン・フルームキン氏、The Nation誌の編集者リリアーナ・セグラ氏、インディペンデント・ジャーナリストのRyan Devereaux氏、ガーディアン紙やアルジャジーラにおいて外交政策を主として書いているムルタザ・フセイン氏、ブルックリン在住ライターのアンドリュー・ジャレル・ジョーンズ氏、非営利組織「電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)」で科学技術者だったミカー・リー氏など、蒼々たる面々が参加することになっているのです。
オミダイア氏は資金面とともに、発行人として携わる予定。「First Look Media」は、政治、スポーツ、エンタメ、ライフスタイル、アート、カルチャー、ビジネス、テクノロジー、そして調査報道、とかなり幅広いトピックをカバーしていくとのことです。
立ち上げるサイトは非営利(NPO)として運用していくようですが、一方でオミダイア氏とグリーンワールド氏の2人が中心となり、"メディアテクノロジー"を基軸とした会社も創業する予定。つまり、「First Look Media」は営利会社と調査報道を中心に据えた非営利の2軸で展開されるのです。オミダイア氏は市民参加型ニュースサイト「Civil Beat」を運営した経験もありますし、その手腕から目が離せません。
引き続き公式サイトの発表を楽しみにしたいですね。
以上、4つの注目メディアを紹介しました。
「Distractify」のようなバイラルサイト、「Re/code」のような大手メディアから出たチームでスタートする新興メディア、「The Information」のような課金メディア、そして「First Look Media」のような新しいマスメディア、調査報道メディア。
一年を通して、これらのメディアがどのように新しいウェブメディアの地平を切り拓いていくのか、楽しみでなりません。
2014年は動画が来る? 今からチェックしておきたい海外の動画ニュースサイト3選
2014年、動画ニュースを手がけるウェブメディアも出てくるかもしれません。
海外ではすでに制作体制を築き、毎日のように動画ニュースを発信しているメディアがありますので、3つのメディアを紹介したいと思います。
1. Newsy
まず最初に紹介するのは、「NEWSY(ニュージー)」です。
1〜2分のサイズの動画ニュースを毎日発信しています。国際、政治、ビジネス、テック、エンタメ、科学、医療、スポーツなど実に幅広いトピックの動画を制作しているのです。
ニュージーは2008年に立ち上がり、ニューヨークタイムズやハフィントンポスト、CNN、ABCニュースなど幅広いメディアを参照し、それらのソースをもとに動画ニュースを制作。
ニュージーにはアプリも出ています。他にも動画ニュースアプリでは、イスラエル発の「wibbitz」も合わせてチェックしてみてください。このアプリは5万以上のメディアから記事提供を受けており、毎月2000万本もの動画ニュースを配信することができるそうです。
Newsy | Multisource Video News
2. NowThis News
ハフィントンポストを共同創業し、バズフィードの会長を務めるケン・レーラーがつくった動画ニュースサイト「NOWTHIS NEWS(ナウディス・ニュース)」。
2012年秋に立ち上がったこのサイトは、大手メディアから優秀な人材をとってきており、30名ほどの編集チームを形成し、毎日20〜25本の動画ニュースを配信することができています。
18〜34歳あたりの、常にオンラインで、常にソーシャル、常にシェアするような読者(視聴者)に向けて、鋭く訴えかけるコンテンツを発信。
スマホ時代、ソーシャル時代のニュースを目指し、アプリはもちろんのこと、ツイッター、フェイスブック、Vine(ヴァイン)、Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)など多様なメディアを活用した情報発信が特徴的です。
以下、ウェブサイトで発信している動画ニュース、インスタグラム動画を活用したニュース、ヴァインを用いた動画の3本を載せておきます。2014年は、インスタグラムやヴァインを活用したニュース発信が盛んになるような気がしています。
3. tomonews
ニュース映像とCGアニメをうまく組み合わせた台湾発の「TomoNews(トモニュース)」も動画ニュースサイトとして頭角を現しています。コンテンツの切り口や見せ方がユニークで中毒性があります。
このメディアを仕掛けているのは、台湾のアニメ制作会社「ネクスト・メディア・アニメーション(Next Media Animation)」。ニュース性のあるトピックにギャクや(ブラック)ジョークを交えたり、時にはゆるく、シュールな味を出した動画ニュースを手がけています。
1本のニュースは約90分で制作され、毎日20本ほどのCGニュースが発信されています。台湾拠点で日本語のニュースをスピーディーにつくっているので、日本のメディアが動画ニュースを立ち上げる時、ベンチマークすると良いかもしれません。
これらの豊富なコンテンツ制作を支えるのが、台湾・台北市の専用スタジオで働く約500人の技術スタッフだ。ヴィデオコンテの作成、キャラクターの3D解析、ナレーションやセリフの録音、モーションキャプチャーから編集まで、すべての過程の同時進行が可能。120秒のCGアニメを発注から90分で完成させる。これまでにないスピードと品質の高さを武器に、日本市場攻略を目指す。
紅白でのAKB大島優子の卒業についても動画がアップされています。ぜひ色々観てみて、トモニュースの可能性を感じてみてください。
トモニュース | アニメーションニュース、 ちょっと変わったニュース、面白いニュース
今年は、動画が来るのでしょうか?
少なくとも海外では熱を帯びている動画ニュースの分野。日本ではオリジナルの動画ニュースを発信するメディアが登場していくのか、楽しみにしたいです。
イーベイ創業者のメディア会社名は「First Look Media」に決定
photo credit: OnInnovation via photopin cc
先日、「イーベイ創業者ピエール・オミダイア氏のニュースメディア立ち上げは今どうなっているのか?」という記事で、オミダイア氏が10月に立ち上げを発表したメディアについての体制などの現状をお伝えしました。
その時はまだ会社名なども不明な状態でしたが、「First Look Media」となったようです。そしてアメリカ東西の両海岸での展開がはじまることも発表されました。
「First Look Media」は営利と非営利に分かれる
オミダイア氏は資金面とともに、発行人として携わる予定です。「First Look Media」は、政治、スポーツ、エンタメ、ライフスタイル、アート、カルチャー、ビジネス、テクノロジー、そして調査報道、とかなり幅広いトピックをカバーしていくとのこと。
立ち上げるサイトは非営利(NPO)として運用していくようですが、一方でオミダイア氏とグリーンワールド氏の2人が中心となり、"メディアテクノロジー"を基軸とした会社も創業する予定。つまり、「First Look Media」は営利会社と調査報道を中心に据えた非営利の2軸で展開されるのです。
大手ウェブメディアが調査報道に乗り出している
これまでのNPOをつくるまでいかなくても、広告などが順調に伸びているバズフィードでは、今秋あたりから調査報道にも非常に注力し、テックメディア「PandoDaily」も調査報道に乗り出しています。ハフィントンポストもライトなコンテンツでトラフィックを稼ぐ一方で、ピューリツァー賞を受賞しているので、このような流れを汲んでいるのかもしれません。
また、NPOを創設して調査報道を行っていくということは、先行する非営利メディア「プロパブリカ」などに続いていくのでしょうか。しかしながら、他の非営利メディアと比べて、政治が中心に幅広いトピックと拾っていくという点はかなり重要だと思います。
今後加わるメンバーにも注目
現在のメンバーを振り返ると、ドキュメンタリー映画制作者でスノーデン事件の際にも話題となったローラ・ポイトラス氏と調査報道記者で作家のジェレミー・スケイヒル氏など、名を馳せているジャーナリストらが10名以上集まり、ニューヨーク大学教授のジェイ・ローゼン氏がアドバイザーを務めるなど盤石な体制を築いているところです。今後どのようなメンバーが参画するのかについても注目のポイントです。
最新情報は、引き続き公式サイトで更新されていくとのこと。いつ頃メディアが公開されてくるのか(メディア名はまだ決まっていない)楽しみにしていきましょう。
【参考記事】
トラフィックの約半分が米国以外からになったハフィントンポスト、今後目指すところは?
11月末、総コメント数が3億件を突破したハフィントンポスト。2013年5月にはローンチされた日本版も、その成長やコメント数などが注目されています。
また、アメリカ版をはじめ、イギリス版、カナダ版、フランス版、スペイン版、イタリア版、日本版、マグリブ版、ドイツ版と展開し、韓国版もこれからできるなど、グローバル展開を進めているところです。
2014年もさらに米国以外からのトラフィックが集まる
世界に打って出ているだけあり、米国以外で全トラフィックの44%にのぼっているとのこと。2014年には中東にも進出予定であり、さらに多くのトラフィックが米国外からになっていくことでしょう。
海外版の広告売り上げは180%アップしたそうですが、メディアの利益には15%ほどの貢献となっている現状。今後は、さらに海外版における広告獲得に注力する予定とのことです。
動画配信とネイティブ広告に注力
ほかにも、ウェブ動画を配信する「HuffPost Live」にも注力する方向性だそう。11月には1,000億回視聴数を記録したそうです(すごい)。
また、ネイティブ広告は前年比で47%と伸びている領域となっています。大手ウェブメディアのネイティブ広告の体制などついては「スポンサードコンテンツ」を支える広告制作チームとは/海外ウェブメディア4事例という記事でも紹介しましたので、ぜひご覧になってみてください。
元々有料で販売スタートしたiPad雑誌「Huffington」もフリーで続けていくそうです。
グローバル展開、広告・動画戦略に注目
ハフィントンポストの現状と今後をまとめると、海外からのトラフィックが増加している(中東への展開でさらに増える見込み)、海外版の広告獲得や動画配信を行う「HuffPost Live」、そしてネイティブ広告に注力。iPad雑誌はウィークリーでのコンテンツ発信の摸索のためそれほど大きく打って出ることはなさそうです。
現在、1日に世界中から8400万人が訪れ、1,500本の投稿がアップされているというハフィントンポスト。今後のさらなるグローバル展開やマネタイズ、動画戦略からは目が離せません。
【参考記事】
立ち上げ半年で3000万PVのメディア「ViralNova」は1人体制らしい
海外におけるウェブメディアのトレンド「バイラルメディア」
最近の海外ウェブメディアの大きなトレンドとしてバイラルメディアがあります。
ソーシャルメディア上でシェアされ、広がっていくようなコンテンツを発信し、SEOよりもソーシャル上での口コミに重点を置いているようなメディアです。
これまでもいくつかバイラルメディアを紹介しましたが、動画コンテンツを強みに史上最速で成長する「Upworthy(アップワーシー)」 や月間訪問者数が1.3億人を突破した「バズフィード」、 ワシントンポストが打ち出した「Know More」そして、20歳が立ち上げたバイラルメディア「Distractify」など様々あります。
運営者が不明でもソーシャル上で広がっている
今回紹介するバイラルメディア「ViralNova(バイラルノバ)」は、運営者が分からない謎のメディアです(オハイオ在住のウェブデザイナー&SEOコンサルタントが1人で運営しているらしい)が、ソーシャルメディア上での存在感が出ているようです。
2013年5月頃に始まったこのメディアのミッションは、人々がシェアしてくれるようなストーリーを投稿するというシンプルなもの。
現在時点では、650万訪問数、3000万ページビューあたりまで成長しています。グラフにある通り、右肩上がりの成長を見せているので、今後もどのくらいまで伸びてくるのか楽しみです。
コンテンツに関しては、まとめ記事やおもしろ系記事が多く見られます。特にかわいいものや信じられないようなもの、ほっこりするようなものなど感情に寄り添ったコンテンツが多いです。
FacebookのシェアやタイトルのA/Bテストがカギ
また、Facebookページのいいね!数は50万を超えており、発信するコンテンツとFacebookの相性が良いことが伺えます。
バイラルメディアを見ていると、コンテンツのキュレーションはもちろんのこと、Facebookのシェアへの誘導やタイトルのA/Bテストなどがカギとなっていきそうです。
最後に運営体制についてですが、ワシントンポストが打ち出した「Know More」は2名で運営、20歳が立ち上げたバイラルメディア「Distractify」は4名、そして今回の「ViralNova」は1人で運営していたりと、少人数で影響力のあるメディアをつくる事例が増えています。
引き続き、バイラルメディアには注目です。
【参考】
「スポンサードコンテンツ」を支える広告制作チームとは/海外ウェブメディア4事例
メディアを運営していると、耳にすることも多いかもしれないスポンサードコンテンツ(ネイティブ広告)。
ざっくり言うと、広告掲載されるサイトやページのデザインなどに適したコンテンツを提供するような広告手法です。
記事広告のような形式はもちろん、フェイスブックのフィード広告やツイッターのプロモーションツイートなど様々ですが、コンテンツ性が高いことが特徴でもあります。
「スポンサードコンテンツ」チームについて
そんな中、海外の広告やメディアについて発信するメディア「AdAge」が海外メディアの「スポンサードコンテンツ」に携わるチーム概要などに関して紹介していましたので、かいつまんでお伝えします。
BuzzFeed(バズフィード)
バズフィードについては、「バズフィード」に見る、これからのウェブメディアに重要な7つのポイントという記事やBuzzFeed、非営利メディア「プロパブリカ」記者を調査部門に迎える、成長止まらない「バズフィード」ーー月間訪問者数が1.3億人を突破!といった記事で何度か紹介しました。
そんなバズフィードの広告チームは40名。全体スタッフ数が300名ほどですので1割強が広告制作に携わっています。バズフィードは今年だけでも600〜700本ほどのスポンサードコンテンツを制作しており、これを唯一の収入源としているのです。
唯一と言っても、6000万ドルの収益を上げているのでウェブメディアの額としてはすごいです。来年はその倍の1.2億ドルの売り上げ見通しという発表もされています。
Gawker Media(ゴーカーメディア)
ゴーカーメディアは16名とのこと。そのうち4名がライターで、広告コンテンツの執筆にあてられているそうです。
残りのメンバーは、戦略やデザインなどを担当。ゴーカーメディアは昨年あたりから明確にスポンサードコンテンツに注力する方向性をとっています。
- GAWKER: We're Making A Ton Of Money From E-Commerce And We're Moving Into Sponsored Content - Business Insider(参考:ゴーカーメディアのマネタイズ方針)
The Washington Post(ワシントンポスト)
広告チームは「WP BrandConnect Studio」というところが行っており、広告主のコンテンツ制作を支援しています。実際の広告例などはサイト上でも見ることができます。
具体的なチーム編成は、デザイナー、プロデューサー、映像作家、ライター、技術者となっているようです。
Hearst(ハースト)
ハーストでは、たった5名とのことです。編集経験者が多数で、給与などは固定給+ページビューに応じたボーナスがあるのだとか。
スポンサードコンテンツも圧倒的なバズフィード
以上、4つの海外メディアの「スポンサードコンテンツ」のちょっとした概要でした。
ハフィントンポストやアップワーシーなども行っているので、そのあたりも機会があれば見てみたいですね。
それにしても、バズフィードの40名体制で、6000万ドルの収益というのは圧倒的ですね。。
BuzzFeed(バズフィード)に見る、これからのウェブメディアに重要な7つのポイント
2006年にローンチされ、今では月間読者が8500万人を超えているバイラルメディア「BuzzFeed(バズフィード)」。CEOジョナ・ペレッティはハフィントンポストの共同創業者の1人としても知られています。
今回は、The Independentで紹介されていたバズフィードの11のポイントから特にこれからのウェブメディア運営において重要になりそうなものを7つ紹介したいと思います。
1. グローバル展開
バズフィードは、10月にフランス、スペイン、ブラジル(ポルトガル語)の各国版を公開しました。
この非英語圏への展開(メディアのグローバル化)の中で特徴的なのが、ウェブで翻訳作業を手伝いながら英語が学べるサービス「Duolingo(ドウリンゴ)」を活用しているということ。
もちろんオリジナルコンテンツを制作する編集者はいますが、メディアのグローバル展開と翻訳(学習)プラットフォームのコラボという動きはこれから増えてきそうです。
2. 調査報道
バズフィードが最近力を入れ始めた分野の一つに「調査報道」があります。2013年10月末には、調査報道で知られる非営利メディア「プロパブリカ」においてピューリッツァー賞受賞した記者を調査部門に迎えるという動きがありました。
バズを起こして広告などを稼ぎ、そのお金を調査報道など社会性の高く時間とコストがかかる部分につぎ込んでいくという姿勢です。どのような記事が出てくるのか注目していきましょう。
参考までにですが、海外では調査報道が盛んになりつつあり、それを支えるクラウドファンディングも出てきています。
3. 政治ニュースの発信
バズフィードは政治ニュースの発信にも力を入れています。お得意のリスト型(まとめ型)記事や、クイズなど、同メディアならではの発信の仕方で政治のトピックをうまく消費させています。
このようにポップに政治ニュースを伝え、バズを起こすことができる媒体は日本でも必要かもしれませんね。
4. 長文ジャーナリズム
調査報道とも重なる部分ですが、バズフィードは長文ジャーナリズムにも注力しています。
スピン誌の編集者だったSteve Kandell氏をヘッドハントしたり、政治メディアポリティコのブロガーBen Smith氏を迎え入れるなど、この動きは加速しているように見えます。
5. リスト記事
バズフィードの真骨頂はそのリスト記事で「listicle(List+Article)」という言葉が生まれるほど。
日本でも、NAVERまとめやnanapiなどでもリスト系の記事をよく目にするのではないでしょうか。バズフィードの場合は特にGIFを使ったものが受けていて、グーグルプラスのスポンサードのものでGIFカテゴリーをつくるまでに至っています。
6. モバイル
公式アプリも出していて、スマホ対応をしています。創設者のジョナ・ペレッティは「モバイルで見ることができないと、コンテンツは広がらない」と言っています。
日本でもたとえば、ITmediaは、スマホでの閲覧専用に特化した「ITmedia News スマート」を打ち出していますし、スマホ / ソーシャルへの対応はやりようがたくさんありそうです。
7. ブランドコンテンツ
バズフィードの広告については、サンケイビズの記事にもありましたので以下に紹介します。
バズフィードはバナー広告を売らない。収益源は企業からのスポンサー提供を受けたコンテンツ、主に記事体広告だ。彼らはバイラル性を生むコンテンツを作り上げる専門家だ。
もちろん、すべての記事が確実にヒットするとはかぎらないが、それなりに流行すれば一般のメディアサイトでインプレッション(広告の露出回数)ごとに料金を課されるよりも、企業は明らかに低価格で効果をあげられるだろう。
東洋経済オンラインなどもブランドコンテンツを行っていたりと、日本でもバナーではなくブランドコンテンツやネイティブ広告の流れになると思いますので、国内外での広告の取り組みは引き続き注視していきたいですね。
ニューヨークタイムズがデータ関連スタートアップを設立ーーその目的とは?
11月20日、New York Times(以下、NYT)がデータ関連のスタートアップを設立することを発表しました。
5名でスタートするデータ関連スタートアップ
NYTワシントン支局長だったDavid Leonhardt氏がマネージングエディター(副編集長)として、今回設立するスタートアップに異動となっているようです。彼に加え、さらに4名のジャーナリストを雇用し、スタートアップの運営をしていくとのこと。
ちなみに、その4名とは「The New Republic」のNate Cohn氏、チャートメイカーのAmanda Cox氏、歴史家のMichael Beschloss氏、そして「Bloomberg」のコラムニストのJustin Wolfers氏というバランス良く専門性のある顔ぶれです。引き続き、メンバーを集めていく予定とのこと。
ビッグデータの天才が抜けた穴を埋めるため?
このスタートアップ設立は、もちろんデータジャーナリズムの注力も目的となっていますが、もう一つの目的があります。
それは、米国大統領選挙で予想を当てたことや映画「マネー・ボール」で有名になったシステムを開発したことでも知られる統計家ネイト・シルバーがウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスポーツ専門チャンネル「ESPN」に転職してしまったことが関わっています。
つまり、彼のNYTの人気政治ブログ「FiveThirtyEight」が更新されなくなるということ。彼は自ら生み出したデータ解析手法で、2008年の大統領選では50州中49州で勝敗を的中させ、2012年には全州で的中させるなど、ビッグデータ解析の天才です(詳しくは最近翻訳された著書『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』を読んでください)。
そんな彼のブログは言うまでもなく注目を集めており、NYTの全トラフィックのうち、約20%も集めていたこともあったのだとか。これは驚異的な数字ですよね。
来年に中間選挙を控え、データチームの必要性が強まる
アメリカでは、2014年に大統領の中間選挙を控えています。だからこそ、NYTとしては彼の穴を埋めるように、ビッグデータ解析手法を活用したコンテンツの発信をして、トラフィックを集めていくことも必要になってきます。
新聞社がデータ関連のスタートアップを立ち上げると聞いただけでも面白いですが、背景を見てみると大きく抜けた穴の補足という面もあったのです。
NYTと言うと、つい最近でも1分動画ニュース「The New York Times Minute」をスタートするなど、新しい取り組みをどんどん行っています。引き続き動向を注視していきたいですね。
【参考記事】
- NYT names new D.C. bureau chief, plans two ‘newsroom start ups’
http://www.poynter.org/latest-news/mediawire/230520/nyt-names-new-d-c-bureau-chief/
- N.Y. Times hires 4 for new data vertical
http://www.politico.com/blogs/media/2013/11/ny-times-hires-four-for-new-data-vertical-177987.html
- New York Times launches new digital ventures
http://www.theguardian.com/media/greenslade/2013/nov/22/new-york-times-digital-media?CMP=twt_fd
- New York Times Hires Nate Cohn for Polling and Election Coverage
- Nate Silver of FiveThirtyEight Blog Is to Join ESPN Staff - NYTimes.com
ハフィントンポスト、総コメント数が3億件を突破ーー良質な言論空間とウェブメディアの未来
3億件のコメントが集まるハフィントンポスト
世界に広がるソーシャルニュースサイト「ハフィントンポスト」の総コメント数が3億件を突破したとのことです。
I’m delighted to announce that @HuffingtonPost just reached 300,000,000 comments today. Thank you to our amazing community!
— Arianna Huffington (@ariannahuff) 2013, 11月 22
アグリゲーションでウェブ上の良質なコンテンツをひたすら発信するとともに、オバマ大統領をはじめ多くの政治家のブログ記事を主力に成長してきました。
コメントコミュニティへのこだわり
そのような中で、コメントの数はもちろんのこと、「ネット上に良質な言論空間」をつくることを目指しているため、コメントコミュニティの構築や管理にも非常に力を入れている同サイト。
「ハフィントン・ポストがアメリカの社会にもたらすことができた最も大きな功績は、彼らが読者を惹きつけることによって、より一般の人々の意見にも注目が集まるようになったこと」
月間訪問数が4000万人ほどでコメントは月間で1000万件を超えるほど。不適切なコメントの削除や良質なコメントを読んでもらうために、自動解析エンジンを活用しています。
日本版のコミュニティ成熟はこれから
一方で、2013年5月にローンチされたハフィントンポスト日本版は、半年たったいま、良質なコメントが来ているものの、コメント数がまだまだ足りないようです。
日本のウェブメディアで、多くのコメントに対してファシリテーションできるようなことができたら、ネットの言論がリアルにも反映されるようなことがどんどん起きていくのでしょう。
ハフィントンポストのコメントガイドラインを見てみるだけでも、他のサイトよりもコメントについてよく考えられていることがわかりますし、コメントに力を入れたいサイトを運営するときなど参考になりそうです。
世界中のメディアがコメント欄に悩む現状
では、ハフィントンポスト以外の海外メディアのコメントに関する取り組みはどうなのでしょうか。
ジャーナリスト・小林恭子さんが書かれた『「コメント欄」に悩む世界のメディア』という記事では世界のメディアの取り組みと葛藤が紹介されています。
例えば、米科学誌「ポピュラー・サイエンス」は悪質コメントを防ぐためにコメント欄を廃止、ベルギー日刊紙「デ・スタンダード」は人材不足により、論説記事のみコメント可能、などメディアによって様々。
編集者が確認するのか、読者が自由に投稿できるのか、いつでも削除できるのか、コメントの責任は誰にあるのか、ソーシャルログインでのコメントか無登録でのコメント可能なのか、悩む要素はたくさんあります。
良質な言論空間の構築に向けて
ネット上の良質なコンテンツを集め、良質なコメントで議論を深め、リアルへと反映していくハフィントンポスト。これからも同サイトのアグリゲーションとブログ、そしてコメントコミュニティに注目していきます。
最後に、今回の内容とはあまり関係ないですが、アリアナ・ハフィントンのTED Talksを張っておきます。
Arianna Huffington: How to succeed? Get more sleep | Video on TED.com
【参考記事】
- 刻一刻と変わるストーリーを:創設者が語る「ハフィントン・ポスト」のアイデンティティ « WIRED.jp
- (29)「コメント欄」に悩む世界のメディア : 企画&リポート : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
- Arianna Huffington: How to succeed? Get more sleep | Video on TED.com
【過去記事】
- 海外メディアについて知りたい時に必ず読むブログ7選(+最近気になったメディア関連記事25本)
- 「要するに」がより求められるスマホ時代、アメリカの注目ブログ「ChartGirl」は一つの答えだ!
- 市民が支える調査報道! ジャーナリズムを促進する海外クラウドファンディングサイト3選
- 月間読者数4600万人を突破したメディア「Upworthy」がゲイツ財団とコラボーースポンサードコンテンツで世界の健康と貧困を伝える
- 繰り返し読みたいメディアや編集に関する記事9本
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