ニューヨークタイムズがデータ関連スタートアップを設立ーーその目的とは?
11月20日、New York Times(以下、NYT)がデータ関連のスタートアップを設立することを発表しました。
5名でスタートするデータ関連スタートアップ
NYTワシントン支局長だったDavid Leonhardt氏がマネージングエディター(副編集長)として、今回設立するスタートアップに異動となっているようです。彼に加え、さらに4名のジャーナリストを雇用し、スタートアップの運営をしていくとのこと。
ちなみに、その4名とは「The New Republic」のNate Cohn氏、チャートメイカーのAmanda Cox氏、歴史家のMichael Beschloss氏、そして「Bloomberg」のコラムニストのJustin Wolfers氏というバランス良く専門性のある顔ぶれです。引き続き、メンバーを集めていく予定とのこと。
ビッグデータの天才が抜けた穴を埋めるため?
このスタートアップ設立は、もちろんデータジャーナリズムの注力も目的となっていますが、もう一つの目的があります。
それは、米国大統領選挙で予想を当てたことや映画「マネー・ボール」で有名になったシステムを開発したことでも知られる統計家ネイト・シルバーがウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスポーツ専門チャンネル「ESPN」に転職してしまったことが関わっています。
つまり、彼のNYTの人気政治ブログ「FiveThirtyEight」が更新されなくなるということ。彼は自ら生み出したデータ解析手法で、2008年の大統領選では50州中49州で勝敗を的中させ、2012年には全州で的中させるなど、ビッグデータ解析の天才です(詳しくは最近翻訳された著書『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』を読んでください)。
そんな彼のブログは言うまでもなく注目を集めており、NYTの全トラフィックのうち、約20%も集めていたこともあったのだとか。これは驚異的な数字ですよね。
来年に中間選挙を控え、データチームの必要性が強まる
アメリカでは、2014年に大統領の中間選挙を控えています。だからこそ、NYTとしては彼の穴を埋めるように、ビッグデータ解析手法を活用したコンテンツの発信をして、トラフィックを集めていくことも必要になってきます。
新聞社がデータ関連のスタートアップを立ち上げると聞いただけでも面白いですが、背景を見てみると大きく抜けた穴の補足という面もあったのです。
NYTと言うと、つい最近でも1分動画ニュース「The New York Times Minute」をスタートするなど、新しい取り組みをどんどん行っています。引き続き動向を注視していきたいですね。
【参考記事】
- NYT names new D.C. bureau chief, plans two ‘newsroom start ups’
http://www.poynter.org/latest-news/mediawire/230520/nyt-names-new-d-c-bureau-chief/
- N.Y. Times hires 4 for new data vertical
http://www.politico.com/blogs/media/2013/11/ny-times-hires-four-for-new-data-vertical-177987.html
- New York Times launches new digital ventures
http://www.theguardian.com/media/greenslade/2013/nov/22/new-york-times-digital-media?CMP=twt_fd
- New York Times Hires Nate Cohn for Polling and Election Coverage
- Nate Silver of FiveThirtyEight Blog Is to Join ESPN Staff - NYTimes.com