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「バズフィードはただのサイトではなく、流通までのプロセス全体」——創業者が語る

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(photo credit: Moth via photopin cc

2014年の収益が1億ドル突破したウェブメディア「BuzzFeed(バズフィード)」。テックメディア「The Verge」がバズフィード創業者、ジョナ・ペレッティ氏にインタビューをおこなっているので印象的な部分を少し紹介します。

バズフィードは先月、アプリ開発会社Hyper IQを買収し、新しいニュースアプリを開発を進めています。検索からソーシャルへ、そして次はアプリへ。これからのメディアビジネスを考える上で、ペレッティ氏の考えやバズフィードの動向を知ることは重要なのかもしれません。

「読者にとってなにがベストなのかをいちばん気にかけている」

ペレッティ氏はバズフィードのニュースアプリの開発などに合わせて、従来のメディア企業との違いを語ります。従来では(現在でも)それぞれの企業がコンテンツをもち、別の企業が流通を担っていました。Yahoo! ニュースであったり、ニュースアプリなどもそうでしょうか。

しかしバズフィードは、自社でコンテンツ制作から流通も手がけるモデルを目指しているとのこと。これはコンテンツに関しても、特定のカテゴリーだけでなく政治もエンタメも扱い、表現方法もテキストや動画、GIFなどを組み合わせ、コンテンツの長さも長文からクイズまで幅広くチャレンジすることで、このモデルが機能しているようです。

CMS開発や記事のレコメンド、ほかのプラットフォームへのコンテンツ配信などを含めコンテンツ制作/流通におけるテクノロジーの重要性」を指摘していることや、「コンテンツがどこで生きるべきかについて、固定観念はもっておらず、アプリなのかウェブなのか、モバイルなのか、読者にとってなにがベストなのかをいちばん気にかけている」といった姿勢も印象的でした。

それこそ多様なシーンでコンテンツに接する読者(視聴者がいる)動画は月間8億回再生を超えており、FacebookYouTube、AOL、Yahooなどさまざまなプラットフォームに配信しているそうです。動画ビジネスについては「超成長(hyper growth)」にあるとし、150名のスタジオで自社スタジオで制作しているとのこと。

それぞれコンテンツに触れるタイミングやデバイス、プラットフォームが異なるなかでそれを想定しながらコンテンツを発信していくことが、伝統メディアと比較して新興のテックメディア企業の有利な部分だとも発言しています。

3年前はネコのサイトだったから」

これから(3年後)のバズフィードのかたちについての質問について、「3年前はバズフィードはほとんど記者がおらず、2年前は動画もほとんど手を付けていない、1年前は海外の特派員(海外展開)がいなかったから。そして3年前はネコのサイトだったから」と変化を予測することの難しさを挙げています。

ここでは、「ただのサイトというよりは、ウェブやモバイル、アプリのうえでニュースや話題なもの、暮らしなどのコンテンツを流通させるプロセス全体」という言葉を残しています。

ソーシャルメディアに最適化したコンテンツ流通できればサイトさえいらないかも、といった実験的なアイデアをもっていることを紹介した以下の記事もぜひ参照していただけたらと思います。

バズフィードはさまざまなプラットフォーム/ソーシャルメディアをうまく活用することで新しい境地を拓いています。「アートとサイエンスを結びつけることができれば、バズフィードはさらに抜きん出る」。だからこそ、プラットフォームやテクノロジーへの投資に積極的であり、そこが主軸なのでしょう。

インタビューを全文読んでみるとこれからのメディア企業としてのあり方やコンテンツの流通への姿勢などを知ることができるかと思います。バズフィードはアメリカからはじまり、イギリスやドイツなどのヨーロッパ、オーストラリア、ブラジル、インドなど各大陸に展開しており、2015年は引き続きの世界展開とニュースアプリのリリースに注目が集まりそうです。

 

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ウェブメディアに一番アクセスをもたらすソーシャルメディアは「フェイスブック」——2位ピンタレストの4倍以上

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(出典:Shareaholic)

スマートフォン保有率やSNS利用者が増えるにつれ、ウェブメディアへのソーシャル流入は増えています。なかでもフェイスブックが一番トラフィックをもたらすことが、Shareaholicのブログで紹介されています。

20万ものウェブサイトの参照元データなどをみたところ、フェイスブックは20〜25%ほど、次いでピンタレストが5%ほどとなり、そのほかは拮抗しているというかたちです。

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(出典:Shareaholic)

拮抗しているなかでは、グーグルプラスとリンクトインが成長を見せているようです。リンクトインについては以前、「リンクトイン(LinkedIn)、長文プラットフォームを志向する」という記事でパブリッシャーとしての面にも触れたことがありました。

とはいえ、フェイスブックの圧倒さは一目瞭然です。しかしながら、フェイスブックにはエッジランクがあるため、このチューニング次第ではトレンドも変わってしまったり、情報発信・収集に影響することもあるので、継続的に追っていかなければいけないところでしょう。

ちなみにフェイスブックからいちばん流入が多いメディアはイスラエル発のクイズ(診断)コンテンツサイトのプレイバズです。月間で870万回もシェアされていることも驚きですが、ハフィントンポストやバズフィードなどのソーシャル時代のメディアやガーディアンやニューヨーク・タイムズなどの伝統メディアを超えています。

プレイバズはメディアというよりはCGMの要素も強かったりするのですが、どうやってフェイスブック最適化をおこなって伸びてきたのか知りたいなあと思います。

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(出典:NewsWhip)

また、フェイスブックについては自動再生される動画というコンテンツの拡大にも寄与しています。先日も「Facebookへの動画投稿数は過去1年で75%増/動画視聴の65%がモバイルから」という記事が出ていましたが、動画も合わせてみていきたいですね。

Facebookでは、過去1年で、1人あたりの動画投稿数が世界で75%増加した(米国だけを見ると94%増)。2014年6月以降は日々の動画視聴回数が平均で10億回を超えている。また、ニュースフィード上に流れてくる動画数は前年比で3.6倍に増えた。さらに、世界中から投稿される写真や画像は一日あたり、3億5千万点となっている。加えて、Instagramでも3億人以上の人々が、日々7千万以上の写真や動画を投稿している。

Facebookへの動画投稿数は過去1年で75%増/動画視聴の65%がモバイルから:MarkeZine(マーケジン)

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バズフィードよりシェアされるバイラルメディア「PlayBuzz」とは? - メディアの輪郭

ニューヨーク・タイムズ編集次長がバイラルメディア「Upworthy」に移籍、編集ディレクターに就任

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YouTube動画より)

ニューヨーク・タイムズの国際部門の編集次長を務めていたエイミー・オリーリ氏がバイラルメディア「アップワーシー」の編集ディレクター(編集のトップ)になりました。アップワーシーの公式ブログが伝えています。

オリーリ氏は今年8月にアップワーシーの編集ディレクターが抜けたことを受け参画。昨年、米メディア業界で話題となったニューヨーク・タイムズの「イノベーションレポート」にもかかわっていた人物です。

ニューヨーク・タイムズは2011年のペイウォール設置から4年で87万人の有料読者を獲得し、ニュースアプリなどを通じて若者読者の獲得にアプローチするなどし(失敗に終わったが)、2014年第3四半期で有料購読者が4.4万人増えるなど重要なようです。

オリーリ氏は編集者として、気候変動や収入格差、変更や移民など社会的・国際的な問題をカバーしてきたそうなので、アップワーシーの扱うトピックやミッションと合致するでしょう。アップワーシーは「国連気候変動サミット」のスポンサードページを設置するなど国際機関ともコラボレーションしています。

PVに代わる指標「アテンション時間」なども導入しているアップワーシーが、ニューヨーク・タイムズという伝統メディアから編集者を獲得することでどのように変わるのか。これからの人材の獲得も合わせて楽しみですね。 

海外メディア「BuzzFeed」と「Upworthy」のルーツとは? - メディアの輪郭

国内外の伝統メディアが参入するアグリゲーションやキュレーション分野 - メディアの輪郭

ハフィントンポストがAP通信からのニュース配信やめる理由

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ハフィントンポストがAP通信からのニュース配信やめる計画を立てているそうです。Capital New Yorkなどが伝えています。

設立当初はアグリゲーションが主体だったハフィントンポストも調査報道でピューリッツァー賞を獲得するなど報道面でも実績を積み上げています。今回の決断は、記者を増やしたり、さらなる他国展開を見据えていることから、自社でもカバーできるようにしていくという姿勢を示していると考えられるでしょう。

近年では、日本、韓国、インドなどアジア圏に加え、ドイツやギリシャなどヨーロッパ、モロッコやアルジェリアなどアフリカでも引き続き展開を進めています。共同創業者で編集長を務めるアリアナ・ハフィントンは、「2015年の契約終了にともない、AP通信との関係を終え、自社でニュースづくりをしていく予定です」と年末の社内メモで言っているという。

また、今年5月の設立10周年に向け、サイトのリニューアルを進めているとのこと。そして、中東版(アラブ版)とオーストラリア版を開設のほか、さまざまな国での展開を予定。昨年は、世界のニュースを報道・紹介する「The WorldPost」というカテゴリーも設置されるなど、世界中のニュースをカバーできる体制や仕組みも整いつつあるように思います。

11月にはアメリカ本国版では月間1.2億訪問数という過去最高の数字を達成したハフィントンポスト。オンライン放送局HuffPost Liveについても閲覧数が20億回にも届きそうと順調なようです。世界展開と報道チームづくりに注目したいです。

 

ハフィントンポストの放送局「HuffPost Live」、「Hulu」に番組配信 - メディアの輪郭

米ハフポストがクラウドファンディング実施ーー「ファーガソンの暴動」の継続的報道に向け - メディアの輪郭

ハフィントンポスト、総コメント数が3億件を突破ーー良質な言論空間とウェブメディアの未来 - メディアの輪郭

Wikipedia共同創業者がつくる新メディア「Infobitt」はひたすらファクトを集めていく

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Wikipedia共同創業者・ラリー・サンガー氏がつくる新メディア「Infobitt」について、Betabeatなどが伝えています。同氏はこのメディアを「Wikipedia for the news」と形容していて、偏見に立ち向かうとのこと。

形式はクラウドソーシングというか、登録した編集者らが、記事をつくっていくかたち。既存のニュースソースからファクトを伝えると同時に要約もしていくというものです。

新しい市民ジャーナリズムとも言えそうです。「単なるアグリゲーターではなく、記事に見つけたファクトを集めていく」とサンガー氏が説明するように、グーグル検索並みに、あらゆるニュースのファクトを簡単に探せるようにすることがゴールだそう。偏見や釣りタイトルなどのないサイトにしていくようです。

いまは世界中からオンラインでの編集に参加する人を集めていて、トップページがある種のクラウドソーシングでのコンテンツで形成されるニュースサイトとなります。集まる人が政治的に偏らないように、バランスをとって参加してもらうようにするとのこと。

Wikipediaでのノウハウがどれだけ生きるのか。そして「ファクト(のみ)をつかむ」というコンテンツの方針がどのように影響するのかに注目したいです。

サンガー氏の考えかたについては、以下のインタビューが参考になるかと思います。関心のある方はぜひ!

ニューヨーク・タイムズがロンドンにも拠点を構える理由

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(photo credit: mezzoblue via photopin cc

今年はイノベーション・レポートが流出し、自社の読者開発に課題があることを示したニューヨーク・タイムズ。なんとロンドンに、100名ほどのスタッフを移動させる計画があると、ガーディアンが伝えています。

来年には、ロンドンのブルームズベリーに借りた新拠点にパリ支社とアメリカ本国から人材を送っていくとのこと。NYTのヨーロッパの「デジタルハブ」であると同時に、国際版の拠点とすることが狙いです。

パリ支社から人材を送るのには、「Paris Herald」を前身にもち、パリに本部を置いてつくられていた英字新聞「International Herald Tribune」がいまではInternational New York Timesと名前を変えたことも影響しています。ヨーロッパ全体をカバーしていくのにパリよりも英語圏であるロンドンが適切な場所だという考えからです。

英ガーディアンも2011年にニューヨークにオフィスを構えており、おなじく英国のDaily Mailはバズフィードの前社長を米国の代表として引き入れています。この米英両国における、読者獲得については引き続き注目していきたいです。

タイム社、大手出版社ではじめてビットコインでの購読料支払いを導入

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雑誌『タイム』などを発行するタイム社が、ビットコインの取引ができるオンラインサービス「Coinbase」と提携を発表。これにより、ビットコインでの購読料の支払いが可能になりました。プレスリリースで発表しています。

大手出版社でビットコインでの支払いを可能にしたはじめての例とのことで、同社が発行する『Fortune』『Health』『This Old House』『Travel + Leisure』で利用できます。

タイム社で上級副社長を務めるLynne Biggar氏は、「われわれは常に、読者がブランドをより好きになってくれる方法を探しており、今回の試験的な取り組みはビットコイン利用者にとってシームレスでシンプルな購読方法になるでしょう」と新しい顧客開拓の側面として捉えているようです。

また、CoinbaseのCEO Brian Armstrong氏は「弊社のような大手出版社がビットコインを採用することは、読者にとってもメディアコミュニティにとっても重要なメッセージとなります」と今回の提携の意義について言葉を残しています。

実際のどれほどの効果が生まれていくのかは気になるところ。海外ではビットコインでの支払いや寄付を取り入れるメディアも増えているので、引き続き追っていきたいです。

「ビットコイン」で寄付できるNPOメディア? - メディアの輪郭

 

米Vice Media(ヴァイス・メディア)、ナイト財団とジャーナリズム基金設立へ

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とても勢いのあるVice Media(ヴァイス・メディア)がメディアやジャーナリズム関連で多くの投資や寄付をおこなうナイト財団と共同で、50万ドル(約5,700万円)規模のジャーナリズム基金を設立するようです。Vice Newsなどが伝えています。

この基金はEntrepreneurial Journalism(起業家ジャーナリズム)のプログラムもあるニューヨーク市立大学大学院に設置。世界中のジャーナリストに対してなかなか報道されないトピックを追うためにさまざまトレーニング提供を含めた支援をおこなうとのことで、具体的な動きは来年以降進めていく予定です。

ナイト財団の副代表の方は「世界中の重要なイシューについて、次世代のニュース消費者に積極的なかかわっていくためには、力強く、質の高い報道を維持するとともに、新しいストーリーの伝え方が必要となる」と目的を説明します。

そのこともあり、イマーシブ(没頭型)な伝え方を教えるプログラムを想定しているそう。このような手法はとくに調査報道や特集などで使用されることが多いですが、なかなか関心をもちにくいトピックに没頭してもらう手法のひとつになるのかもしれません。

関連して、ヴァイス・メディアCEOのシェーン・スミス氏はナイト財団のイノベーション基金を通じて、2.5万ドルの助成金をもらっています。ジャーナリズムの新しい地平を切り開く「ヴァイス・ニュース」などを抱えるヴァイス・メディアは、世界中でなかなか表に出ないようなトピックを多く追いかけていることが魅力的です。

今回のような基金を立ち上げ、次世代のジャーナリスト育成や新しい報道表現にも注力する姿勢は素晴らしいと思います。ヴァイス・メディアに関心がありましたら、以下のいくつかの記事もぜひ読んでみてください。  

米ヴァイス・メディア、元ホワイトハウス次席補佐官を新COOに迎える - メディアの輪郭 

ヴァイス・メディアが映画会社「20世紀フォックス」と新会社設立、映画製作へ - メディアの輪郭 

ウェブメディア編集における「再価値化」と「紙の身体性をウェブに宿すこと」 - メディアの輪郭

 

ジャーナリズム界のSpotifyとなるか? 新聞社の課題に立ち向かう定額読み放題サービス「Inkl」

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オーストラリアのスタートアップが打ち出した「Inkl」というサービスを紹介します。「Spotify for news」と形容されることもあり、定額読み放題サービスといった感じです。米テッククランチなどがくわしく紹介しています。

ウェブアプリとネイティブアプリが公開されており、月間15ドル(約1,700円)ですべてのコンテンツを読み放題とのこと(もしくは1記事10セント支払う)。国内のNewsPicksとも似た値段設定です。広告なし、パーソナライゼーションが少し効いているのも特徴。30日間は無料で使うことができます。

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英ガーディアンやワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなど英語圏の新聞から、シドニー・モーニング・ヘラルドや南華早報(South China Morning Post)などを読むことができ、アメリカに進出する予定もあるようです。

エンターテイメント業界ではNetflixやSpotifyなどの定額制サービスがぐんぐん伸び、影響力をもっています。同じコンテンツを扱うメディア/ジャーナリズム業界でこのモデルが当てはまるのかは注目が集まるところでしょう。

多くの新聞社が若者やモバイル利用に対して、記事販売に苦しみ答えを見つけられていないなか、さまざまなスタートアップが答えのひとつになりそうなものを提案する動きが多く見られます。

ちなみに、InklのCEOはもともと、オーストラリア大手新聞社「Fairfax Media」のディレクターを務めていた人物。そこで読者があまりに課金しないことから、大手メディアから飛び出して、新聞社が抱える課題に対して新しいソリューションをぶつけようとしたのです。

定額制のニュース/コンテンツサービスはほかにも出てきています。たとえば、今年、ニューヨーク・タイムズがドイツの新聞・出版社のアクセル・シュプリンガーと共同で、オランダの新興メディア「Brendle」に300万ユーロ(約4億3000万円)を出資しました(株式の約23%を取得)。

ブレンドルは、iTunesのジャーナリズム版のようなプラットフォームで、記事を1本ずつ購入することができるというもの。20代の元ジャーナリスト2人が創業し、2014年4月にリリースし、13万人以上の会員を獲得しているとのこと。ヨーロッパでも動きが盛んなので追っていきたいですね。

「この先、ネット上の長文コンテンツを支えるのは定額制モデル」ーー長文メディア「Longreads」創設者の言葉

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米メディア「Capital New York」が長文メディアLongreads創設者に短いインタビューをしていました。

メディアの輪郭では長文の流れを積極的に追っていますので、そのなかからいくつか言葉を紹介します。

Longreadsは、2009年設立のメディア。ロサンゼルス・タイムズやタイムなどで記者やデジタル戦略を担当していたマーク・アームストロング氏らが中心となって生まれました。

1500語以上を長文コンテンツと定義して、ノンフィクション/フィクションのどちらもキュレーション。月額3ドル、年額30ドルの有料課金制を採用しており、すべてパブリッシャーや著者に還元しています。

知らなかったのですが、Longreadsは2014年4月に、WordPress.comを運営することで有名なAutomattic社に買収されていました。現在はキュレーションですが、マネタイズの先には独自コンテンツの制作も視野に入れているとのこと。

マーク・アームストロング氏は、「いま、多くの会社が長文のストーリーテリングにお金を注いでいます。それは素晴らしいことですが、多くの場合、実際に支えるモデルがありません。(中略)この先、読者によるサブスクリプション(購読/定額制)が、ネット上でストーリーテリングの質を保証するのに重要です」とサブスクリプションモデルの重要性を語ります。

オリジナルコンテンツやその編集について同氏は、「われわれがいちばん売り出したいのは、よく知られているもの、知られていないものを含めた、いろんな人の声やトピック、形式、その多様性です。われわれは、どんなものでも1500語以上であれば"長文"(long)と定義しています。いま、好きなライターや編集者、出版社に声がけし、いっしょになにかおもしろいことをやろうと言っています」と、これから進めていくようです。

Longreadsについては、編集部とコミュニティメンバーによるキュレーションがあるのが個人的に好きなところです。この時期なので「Longreads Best of 2014」という特集も展開。このように、さまざまなかたちで、キュレーションの価値を高めているのは参考になりそうです。今後のオリジナルの比重を高めていくプロセスやその手法は気になります。

前述の「この先、ネット上の長文コンテンツを支えるのは定額制モデル」といった言葉は、日本でも当てはまると思います。ニコニコ動画やクックパッドのような課金モデルが、ニュースメディアやジャーナリズムで成り立つのか。日本ではどのプレイヤーがこのモデルを確立するのか、注目したいです。

海外メディアの視点と動向を知る! タイム誌「ベストウェブサイト50」から注目メディア5選

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タイム誌が今年もベストウェブサイト50を選定しています。昨年はバイラルメディア「Upworthy(アップワーシー)」やビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」、動画ニュースサイト「NowThis(ナウディス)」などが取り上げられていました。

今年も注目メディアについてみていきましょう。5つ紹介します。 

Imgur(イメージャー)

http://imgur.com

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すでに有名どころですが、イメージャー。画像ホスティングサービスとして、そしてネタの宝庫として、さまざまな使われ方をしており、急成長中です。アニメGIFも多くあります。

2009年にオハイオ大学の学生が立ち上げたサイトですが、2014年5月時点で、1.3億人の月間訪問数、50億ページビューを記録。1日150万もの画像がアップされているとのこと。

4月にはベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツから4000万ドル(約47億円)を資金調達しました。今後の伸びにも期待されます。

Genius(ジーニアス)

http://genius.com

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もともとラップ歌詞解説サイトとしてはじまったジー二アス。リニューアル前はRapGeniusという名前でした。

現在ではラップ以外にもかなり領域を拡大。ロックや詩、歴史、法律、テレビや映画など14つのカテゴリーが存在しています。

サイトのキャッチコピー「Annotate the World(世界に注釈を付ける)」というのもなんともかっこいいです。WIREDの記事では、共同経営者のマーク・アンドリーセン氏の言葉や考えも紹介されていますので、ぜひ読んでみてください。

世界中のあらゆるテキストを引用し、注釈すること、つまりテキストという人類の「知」の遺産を深化させ、豊かにしていくのに最適なプラットフォームをRap Geniusは提供していると彼は考える。言ってみれば、それは電子版のタルムードともなりうる。そうした考えに立てば扱うテキストは何も「ラップの歌詞」に限定する必要はない。世界は、そしてインターネットは、テキストに溢れている。Rap Geniusのポテンシャルは際限ない、と考えるのも的外れではない 

「ラップ歌詞のウィキペディア」Rap Geniusが、1,500万ドルを調達できた理由 « WIRED.jp

ClickHole(クリックホール)

http://www.clickhole.com

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昨年のアップワーシーに続いて、なぜかバイラルメディアが選出されています。ClickHoleは政治風刺サイト「The Onion(ジ・オニオン)」が立ち上げたもの。当初からバズフィードやアップワーシーのパロディとしてメディアに取り上げられていました。

リスト記事や動画、クイズなどのコンテンツを軸に発信しています。ジ・オニオン自体は1998年設立と、少し古いのですが、こうやってソーシャルメディア時代のコンテンツ発信に挑戦・実験している姿勢は素晴らしいと思います。

実はアップワーシーの共同創業者のひとりはもともとジ・オニオンに在籍していたりします。以下のスライドで少し触れているので、ご興味あれば。

Vox(ヴォックス)

http://www.vox.com

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ニュース解説サイトのヴォックスも入っていました。ワシントンポストの人気コラムニストのエズラ・クライン氏が新興メディア企業「ヴォックスメディア」へ移籍して立ち上げたことで話題となりました。

米大統領選の結果をピタリと当てることでも有名な統計家ネイト・シルバー氏の「FiveThirtyEight」や、ニューヨーク・タイムズの「The Upshot」などが競合にあたります。クライン氏はまだ30歳なのですが、これらのサイトと渡り合っているのはすごいなと思います。

ヴォックスは月間2000万人の読者を抱えており、同社のもついくつかのメディア合計では1.5億人いるとのこと。ヴォックスメディアは12月に4650万ドル(約55億円)の資金調達を実施し、評価額は3.8億ドル(約450億円)。ちなみにバズフィードの今年、5000万ドルを調達し、 評価額を8.5億ドルとしています。

Medium(ミディアム)

https://medium.com

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ブログプラットフォームのミディアム。メディアの輪郭でもいくつか書いています。コンテンツパブリッシャーとプラットフォームの絶妙な立ち位置が魅力的です。

先日発売された『WIRED Vol.14』には、「ウェブ上で最も美しい執筆の場」というミディアムのエヴァン・ウィリアムズ氏をはじめ、周辺も取材した記事が掲載されていました。デザインや技術のみならず、編集に力を入れているので今後がとても楽しみです。

 

このほかにも、サブスクリプション型音楽サービス「Spotify」で一度も再生されていない音楽を聴くことができる「Forgotify」が選ばれていたり、かなり有名どころでは6秒動画共有サービス「Vine」やアマゾンに買収されたゲーム実況の「Twitch」などもありました。

メディアにかかわる人は知っておいて損はないリストだと思いますので、ぜひチェックしてみてください。 

イーベイ創業者の「First Look Media」、新メディア「reported.ly」公開

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イーベイ創業者、ピエール・オミダイア氏が出資・創業したファースト・ルック・メディアが新メディア「reported.ly」を公開しています。プラットフォームはミディアムを活用。

NSAの盗聴活動の実態に迫るメディア「インターセプト」に次いで、2つ目のメディアとなります。しかしながら、メディア企業として順調なようではないのです。

本来、2つ目のメディア「ラケット」が立ち上げ予定でしたが、意見があわずジャーナリストが離れたりと、なかなか次の展開が見えてきませんでした。今回の動きは久々の新しい情報でした。

これまでごりごりの調査報道を志向していたファースト・ルック・メディアですが、今回のメディアでは「グローバル・ニュース・コミュニティ」を謳っています。ソーシャルメディアを活用して、ニュースを伝えるとともに、コミュニティ形成も狙っていくようです。

既存のメディアでもソーシャルメディア活用は進んでいますが、あくまで自分たちのウェブサイトへの誘導を図っているツールとして使われていることも多くありますが、そこに問題意識を持っているようです。

このメディアではジャーナリストをはじめ、コミュニティオーガナイザーやストーリーテラー、キュレーターなどが集結し、ウェブサイトやアプリの付随するものではなく、ソーシャルメディアコミュニティに対して「native journalism」を生み出していくとのこと(はだはじまったばかりでよくわかりませんが、大きな構想を感じます)。

メンバーは6名ですが、営利/非営利メディア、ウェブ/ラジオなど横断的なメディア活動家たちが集まっている印象です。この数週間は、メディアに期待する読者らにオンラインでのヒアリングをおこなっています。ツイッターフェイスブック、レディット、ミディアムを中心に活用するようです。

ミディアム上で、メディアの価値や指針などが発表されていますので、関心のある方はチェックしてみてください。編集権の独立や透明性などメジャーな要素もあったり、「速報よりは正しい情報を発信する」「ニュースルームである」など興味深い部分もみられます。

以前、「ブログプラットフォーム『Medium』、編集を入れてジャンル特化の動き」という記事を書いたことがありますが、ミディアムは内外問わずメディアのプラットフォームとして機能していきそうなので、とても楽しみです。

「データジャーナリズム・アワード 2014」の受賞事例2選ーー調査報道とデータビジュアライゼーション

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世界中の報道メディア機関の編集者ネットワーク 「Global Editors Network(GEN)」が主催するData Journalism Awards 2014」の受賞事例を紹介します。

このアワードへのノミネートが最多だったのは、調査報道をおこなう非営利メディア「プロパブリカ」で13事例。次いで、ニューヨーク・タイムズが12事例と続きました。

すでに各部門の受賞メディア・事例が出ています。そこで今回は、データの収集・分析から新しい事実を浮かび上がらせる調査報道に対する「Best Data-driven Investigation」を受賞したワシントン・ポストの事例と、データビジュアライゼーションの最優秀事例の「Best Data Visualization」に選出されたニューヨーク・タイムズの事例を紹介します。

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このワシントン・ポストの記事は、タックス・リーエン(tax lien=租税を先取特する権利)に関するもの。つまり、税金を滞納している人の財産を差し押さえられた人や、その権利を買った投資家などのストーリーです。

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ワシントンD.C.において、どこで滞納処分が起きているのかも分かりやすいです。2005年以来、509件もあり、このシリーズでは一部の事例に焦点を当てています。個人や企業のストーリー、グラフィック、写真などを用いながら、タックス・リーエンを売買する企業の疑義や住民を守ることができない法制度についても迫ります。

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ニューヨーク・タイムズのこのデータビジュアライゼーション事例は2013年夏に公開されたもの。 2002年1月1日〜2013年12月31日という3期12年にわたりニューヨーク市長を務めたマイケル・ブルームバーグ氏の在任期間にどれだけまちが変化したのかをビジュアライゼーションしたのです。

赤く表示されているのが、在職中に新たに建てられた建設物。高層ビルも多くみられます。また、4割ほどの地域を再区分するなど、大きな動きもビジュアライゼーションのおかげで確認しやすくなっています。

さまざまな地区のビフォーアフターを写真とビジュアライゼーションでみることができ、東京のこれからの都市計画などにもこのようなビジュアライゼーションが活用されることを楽しみにしたいです。

今回は2つの事例の紹介でしたが、ほかにも7つの受賞事例が発表されています。関心を寄せる方はぜひ、Data Journalism Awards 2014のサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。 

フェイスブック共同創業者クリス・ヒューズが経営する政治メディア「The New Republic」から13名の編集者が去った

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(photo credit: NecatPace.ORG via photopin cc

長い歴史をもち、フェイスブック共同創業者クリス・ヒューズが経営する政治メディア「The New Republic(ニュー・リパブリック)」に動きがありました。

米メディアThe Daily Beastは、「Facebook Prince Purges 'The New Republic': Inside the Destruction of a 100-Year-Old Magazine(フェイスブック王子がThe New Republicを一掃:100年の歴史をもつ雑誌の崩壊の内情)」と伝えています。

シニアエディターをはじめとする社内のスタッフが13名、外部のコントリビューティング・エディターなどを含めると合計で30名近くがこのメディアを去ったようです。 

この背景にあったのは、編集トップだったフランクリン・フォア氏が辞任し、ブルームバーグのデジタルアドバイザーなどを務めていたガブリエル・シュナイダー氏が就任したことがはじまり。

経営を主導するクリス氏とCEOのガイ・ビドラ氏(元ヤフーニュース部長)がこれからバズフィードのようなデジタルメディアカンパニーにしていきたいという考えをもっていましたが、前編集トップのフランクリン氏とは意見が合わなかったのです。

ちょうど1年前くらいには、「『発行部数は20%増、ウェブ読者数は3倍に』 Facebook共同創設者クリス・ヒューズが雑誌「The New Republic」買収から1年半を振り返る」という記事で順調な様子を紹介しました。

30歳のクリス氏が100年の歴史をもつこのメディアをどのように変えていくのか。この状況への対応を含めて注目したいです。

ニュー・リパブリックについては、以下の記事も参考にしていただけたらと思います。 

BuzzFeed(バズフィード)、2014年の収益が1億ドル突破

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海外メディア「バズフィード」の2014年の収益が1億ドル突破したとのことです。Capital New Yorkなど多くのメディアが取り上げています。バズフィードCEOのジョナ・ペレッティによる社内向けメモから明らかになりました。

ネイティブ広告を武器に、2013年は6000万ドルを売り上げ、2014年は1.2億ドルを想定していましたが、おおよそ計画通りとなっています。

バズフィードのスタッフは700名を超えており、24万ドルほどのボーナスもあるのだとか。そして、月間2億訪問数や月間の動画再生回数が7.5億回といった数字が達成されると、Apple Watchが配られるのだとか。この2つの数字を達成したいようです。

バズフィードの動きとしては、ウェブメディアとの連携を減らしてオリジナルニュースなどに回帰しつつ、テレビのネットワークなどとは積極的に協働しています。引き続き、動向が気になるところです。