メディアの輪郭

更新するだけ健康になれる気がしています

読者はどこにいて、なにを求めているのか。最先端を行く海外メディア編集長らが語るメディアの論点

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(左から、ケビン・ディレイニー氏、リッチ・ジャロスロフスキー氏、藤村厚夫氏

伝統メディアから「完璧な事例」が生まれた理由

先日、スマートニュースが事業戦略発表会を開催しました。そのなかで「SmartNewsと米国メディア責任者が語る最新メディア動向とジャーナリズム」というセッションがありましたので紹介します。

登壇したのは、メディア事業開発担当/シニア・ヴァイス・プレジデントの藤村厚夫氏、ヴァイス・プレジデント コンテンツ担当/チーフ・ジャーナリストのリッチ・ジャロスロフスキー氏、アトランティック・メディア社「Quartz(クオーツ)」編集長、ケビン・ディレイニー氏の3名。藤村氏がモデレーターを務めました。

リッチ氏、ケビン氏ともにウォール・ストリート・ジャーナル出身。ケビン氏は現在のメディア環境について「質の高いコンテンツが求められており、ジャーナリズムはまだまだ繁栄の余地があります」と語りました。

クオーツでは「クオーツカーブ」という独自の指標・考えのもと、スマートフォンタブレット時代の記事づくりを実践。具体的には、500ワード以下、そして800ワード以上の記事が目安です。長い記事については、グラフィックやチャートを差しこむことで、効果的なストーリーテリングを実現します。

最新の数字では、月間1100万訪問数、トラフィックの半分はアメリカ外から。ジャーナリストは40名ほど在籍しているとのことでした。ウォール・ストリート・ジャーナルや、エコノミストニューヨーク・タイムズなど伝統メディアで能力のあるジャーナリストを雇用しています。そういう人たちがモバイルやタブレットユーザーを意識して書くということ。読者開発の第一歩として、改めてこのことに意味があると思いました。

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クオーツについて藤村氏は、「2年前にリリースされたときに、大手メディアのなかからトップページをもたない媒体が生まれた」ことが衝撃的だったと言います(現在はトップページを用意している)。スクロールでページが自然に切り替わるデザインであるものの、各記事にはURLがあり、検索エンジンも無視していません。また、ストリーム型のコンテンツに対してのリッチな広告を提供するアプローチも特徴として挙げました。

リッチ氏はクオーツを「完璧な事例」と表現。「本当の意味でアナログの部分を持ち合わせていない」デジタルメディアとして評価しました。クオーツの革新性をもったデザインは、いまではタイムなどいくつかの大手メディアも真似するようになっています。

しかし、なぜ、アトランティック・メディアという伝統メディアからクオーツが生まれることができたのでしょうか。

ケビン氏は「7~8年前に、これからのジャーナリズムはデジタルになるだろうと思っていました。当時、紙媒体のほうに50万の購読者がいましたが、あるときオンラインも50万人の読者を記録しました」と当時を振り返ります。また、クオーツはワシントンにオフィスを構え、ニューヨークに拠点を置くアトランティック・メディアとは違う母体としてつくったこともひとつの要因としてあるようです。

「どこに読者がいるのか考えないといけない」

ところで、リッチ氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルのオンライン版立ち上げにもかかわった人物ですが、非営利団体「ONA(Online News Association)」の創設者としても知られています。なぜ立ち上げたのでしょうか。

団体を創設したのは1999年。「当時のアメリカにおけるジャーナリズムは伝統重視でした。印刷媒体からオンラインを立ち上げた人物として、印刷媒体よりもデジタルの人との共通点が多くありました」。紙媒体を主力とする伝統メディアではなく、オンラインのみのメディアも多く生まれ始めており、非営利団体というかたちで問題意識を共有しはじめたのです。

そんなリッチ氏はいま、スマートニュースという紙でもウェブメディアでもない、ニュースアプリというフィールドに挑戦しています。参画した理由には、同社の共同代表2人が大きなコミットをして質の高いプロダクトをつくろうとしていること、苦境の状態が続くメディア産業において、質の高いジャーナリズムがなくなってはいけないということからでした。

藤村氏は2人に「ジャーナリズムは黄金時代に入ったのか。それとも苦境なのか」と問いかけます。ケビン氏は「いまは黄金期です。多くの人がニュースを読むようになっており、だからこそ、ジャーナリストはいい記事を書こうと思います。長い記事を読みたい人がいるのはいいことです」と語り、一方で、「どこに読者がいるのか考えないといけない」というクリティカルな問題についても共有しました。

「ジャーナリズムとともに、広告にもイノベーションが来ている」

メディア環境の変化は、マネタイズにも大きな影響を与えています。海外においてとくに新聞社はペイウォール(課金)を採用することが増加傾向にあります。しかし、ケヴィン氏が編集長を務めるクオーツでは採用していません。

クオーツでは、記事を無料でオープンにしておくことで読者を増やしたいということがひとつ。別の観点から、広告市場をグローバルに考えたときに、課金に依存しなくても収益を上げることができると思ったことも理由に挙げました。

続いてトピックは「ネイティブ広告」について。

リッチ氏は「ユーザーに広告だと伝えること」に加え、「ユーザービリティ」を求める。「広告がコンテンツが隠れるようなことや、クリックしてApp Storeに飛ぶことも、ユーザーの環境を変えてしまうからよくありません。ユーザーがメディアに来ているのは、広告のためではないということです」。ケビン氏は「ジャーナリズムとともに、広告にもイノベーションが来ています」と述べました。

最後は「アルゴリズム」が論点となりました。つまり、本当に必要な情報が届いているのかということです。たとえば、アメリカでいまでも話題が続く、白人警官が黒人少年の射殺したことに端を発したファーガソン暴動。このとき、ツイッターではこれについての情報が多く流れましたが、フェイスブックではいまや懐かしいALS患者と患者団体を支援するアイス・バケツ・チャレンジの動画が占めていました。

アルゴリズムがなにを目的として、どのようなバランス感でパーソナライゼーションをおこなうのか、というのもメディア全体の課題となりそうです。スマートニュース共同CEOの浜本氏はこの日の発表会で「ニュースは公平であるべき」とも語っていました。メディアや公共性の歴史を振り返りつつも未来を見据えながら、「公平とはなにか」といった根本的な議論も活発になるべきなのだと実感しました。

アメリカ大手紙「USA TODAY」によるツイッターと政治に関する指標

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アメリカ大手紙「USA TODAY」が11月4日実施のアメリカ中間選挙に向けて制作した「USA TODAY/TWITTER Political Issues Index」を紹介します。

デイリーでの政治トピックスに関するツイートを収集したもので、年齢別、性別、州別の3つの観点から確認できるというもの。それぞれの値はバブルチャートで示されます。

たとえば、上の写真ではヘルスケアについて。バージニア州、ネバダ州、メリーランド州でもっとも議論されていて、年代は35〜54歳、性別は男性が多いということがわかります。

今回の取り組みの背景には、USA TODAYとTwitterがパートナーシップを結び、Twitterからのデータ提供を受けたことで実現しています(もちろんUSA TODAYがTwitterユーザーのデータに直接アクセスしていることはありません)。

とてもシンプルな指標ですが、毎日のデータを収集・分析をおこなうことで、将来的に大きなプロジェクトなどに活用なども狙っているのでしょうか。

日本でも12月にはネット選挙解禁後初となる衆院選、来年には統一地方選などありますが、今回のようなわかりやすい政治とデータビジュアライゼーションの取り組みもあるといいなあと思いました。

先日、「ツイッターのハッシュタグをきれいにまとめたサイト『Hash』」という記事を書きましたが、このようなサービスはどんどん知りたいです。

USA TODAY/TWITTER Political Issues Index

ツイッターのハッシュタグをきれいにまとめたサイト「Hash」

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ツイッターハッシュタグをきれいなデザインでまとめたサイト「Hash(ハッシュ)」がいい感じ。

サービスを開発したスタートアップ代表のStephen Phillips氏はもともとTwitter社でソフトウェアエンジニアとして働いていた人物。「今日の話題(Today's Talking Points)」を簡単に閲覧することができます。

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横スライドでさまざまな話題を見ていくことができます。気になるものはクリックすると、ページが開き、トップにはウィキペディアの文章、その下にはハッシュタグ付きのツイートが並ぶというかたちです。

サイトの前半部には時事的なものを見つけることができますが、ずっと横スライドしていくと、最後のほうには人気の写真や動画を観ることもできるので、ニュース以外を探すのにも使えそうです。

国ごとや言語ごと、過去のある時点でのランキングなどものぞけたらますますいいなと思います。

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アプリも出ていますね。ハッシュ、たまにのぞいてみたいと思います。 

Hash - Today's Talking Points

オウンドメディアで終わらない「弁護士ドットコムニュース」 国内外でニーズ高まる解説ジャーナリズム

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時事問題以外も扱う弁護士ドットコムニュース

10月に津田ブロマガで、弁護士ドットコムニュース編集長・亀松太郎氏へのインタビューがおこなわれていました。

9月9日、総合ニュースメディアとして、リニューアルされた「弁護士ドットコムニュース」。今回の津田ブロマガは弁護士ドットコムニュースの編集長の亀松太郎氏をお迎えして、弁護士ドットコムの運営方法や今後の展開そしてウェブメディアの未来がどうなっていくかをお伺いします。

亀松編集長に聞く弁護士ドットコム急成長の秘密 津田ブロマガ#27 - 2014/10/23 20:00開始 - ニコニコ生放送

弁護士ドットコムニュースと言えば、1記事の字数が1000〜1500字程度と読みやすく、前半に時事トピックのテキスト、後半に弁護士による解説が添えられているフォーマットが特徴です。このフォーマットは専門性が必要な分野では横展開が可能なものだと思います。

弁護士ドットコムニュースは法律に関するものがメインであるものの、メディア関連のニュースや書き起こしなども提供しています。

ニコ生で亀松氏は、「1年半運営してきて、さらに拡大させていくために、時事問題以外のものも扱うようにしている。しかし、(弁護士ドットコムの)アイデンティティが失われないように、『法律は社会にかかわるなんらかのことを解決するもの』と捉えて、社会にある問題やトラブルは取り上げていく」と話していました。

弁護士コメントを必要とする記事制作は、「企画会議」「導入部分を執筆」「導入部分を編集」「弁護士へコメントを依頼」「弁護士コメント部分を編集」「公開準備」といった6段階だそう(参照:編集長は会社に来ない? なぜ弁護士ドットコムは月100本もの良記事を作り続けられるのか | ベストチーム・オブ・ザ・イヤー)。

現在は300万人の訪問数ーーPV数より訪問者数を重視

いわゆるオウンドメディアにくくられる弁護士ドットコムニュースですが、以下の言葉は個人的に印象に残っています。

亀松:決して現状に満足していません。「“オウンドメディア”の中では頑張ってるね」と評価されることがありますが、オウンドメディアとして終わるつもりはありません(笑)。

オウンドメディアという意識はあまりなくて、個々の記事を作るときには、できるだけ多くの人に読んでもらいたいという意識で作っているんです。

弁護士を始めとする専門家の観点で、これまでのメディアとは異なった切り口で情報配信し、より信頼性を獲得できるメディアにしたいですね。ゆくゆくは日本を代表する「ネットメディア」として認知されるよう長期的な視点に立って育てていきたいと思っています。

編集長は会社に来ない? なぜ弁護士ドットコムは月100本もの良記事を作り続けられるのか | ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

実際、数字もついてきているようです。「月100本以上の記事を配信し、月間のサイト訪問者数は1年半で140万人から、661万人と4倍以上に急成長している」(参照:「逆張り」メディア、弁護士ドットコム急成長の秘訣 :日本経済新聞)。弁護士ドットコムニュース単体では、月間訪問者数300万人ほど。PV数よりは訪問者数を重視しているとのことでした。

かゆいところに手が届く逆張りのメディア

しかし、課題もあります。たとえば、弁護士によって見解も違うので、信用性の担保は難しいということ。現状は基本的には(対象分野の専門性を有する)ひとりの弁護士にコメントをもらうというかたちをとっています。

とはいえ、このあたりはコストがかかるため、しょうがない部分もありそうです。それよりもこのメディアを専従スタッフ6名(+アルバイト)でつくりあげているほうがすごいと思います。スタッフは新聞経験者と法律に専門性をもつ人が半々とのこと。

大手メディアの手が回っていないトピックや情報、いま流行のキュレーションやプラットフォームではなくニュースをつくる逆張りのメディアとして、かゆいところに手が届く存在となりつつあります。亀松氏はしばらくは弁護士ドットコムニュースを大きくしていき、新しい展開にも挑戦していくようです。

国内ではほかにもヤフー子会社によるTHE PAGE(ザ・ページ)などは解説寄りのメディアとして運営を続けていますし、東大大学院生らを中心に運営されるCredo(クレド)なども外部メディアに多数配信するなど存在感をみせています。海外では解説ジャーナリズムのプレイヤーが増えているので注目の分野です。

また、ニコ生では朝日新聞記者時代、J-CASTニュース時代、ドワンゴ時代"以外"の時期の話も多くされていました。「【記者100人の声】亀松 太郎さん 弁護士ドットコムニュース」という記事でも少し触れられていますので参考までに。

最後に、これからのメディアを考える際、弁護士ドットコムニュースの手法や姿勢から新しいメディアやジャーナリズムの可能性が生まれるような気がします。これからもウォッチしていきたいです。

米ヴァイス・メディア、元ホワイトハウス次席補佐官を新COOに迎える

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これまで何度か動向をお伝えしている、注目メディア「Vice Media(ヴァイス・メディア)」が新しい動きを見せています。

ニューヨーク・タイムズなどによれば、ヴァイス・メディアが新COO(最高執行責任者)に迎えたのは、なんと元ホワイトハウス次席補佐官のAlyssa Mastromonaco氏(38歳)。オバマ氏が上院議員だった2005年から、2008年、2012年の大統領選にもかかわり、2014年5月までホワイトハウスでの勤務していた人物です。

すでに世界中に展開していますが、彼女がCOOとしてさらなるグローバル展開を率いていきます。9月に5億ドル(約500億円)を調達し、テレビ/ケーブルまわりの提携や交渉を進めているようです。

Mastromonaco氏がホワイトハウスを辞めた後、バンク・オブ・アメリカCMO(最高マーケティング責任者)を務めている友人からヴァイス・メディアCEOを紹介されたことや、ケーブルテレビ放送局「HBO」で放送されている番組のもともとのファンだったことから今回の動きにつながっているとのこと。海外メディアではこのような人選がみられるので情報収集していて楽しいです。

ヴァイス・メディアはフリーペーパーからはじまり、デジタルメディアではアンダーグラウンドサブカルチャーに振り切った内容を報道し続け、いまではヴァイス・ニュースなど別軸でありながら、極めてまっとうな報道機関としても機能し始めています。

ヴァイス・メディアは、1994年にカナダのモントリオールで発行された『ヴォイス・オブ・モントリオール』というフリーペーパーに始まる。創設者はスルーシュ・アルヴィとシェイン・スミス。

その後、同誌は『ヴァイス』と改名し、ブルックリンのウィリアムズバーグに「ヴァイス・メディア・インク」として本社を構えた。CEOはスミスが務めている。フリーペーパーの発行を続けながら、現在はデジタルメディア、特にビデオの製作と流通を主要ビジネスにしている。ターゲットは若者で、世界35ヵ国にオフィスを置いている。スミスは、ヴァイス・メディアは「ストリートのタイムワーナー」であるとしている。

"ストリートのタイムワーナー"ヴァイス・メディアとティム・プールが実践する横から目線のジャーナリズム

最近では、エンタメやニュースメディア以外にも音楽メディアに進出する動きがありますので、バズフィードと合わせていまいちばん動向が注目されるメディアのひとつと言えるでしょう。

調査報道メディア「プロパブリカ」による、NASAの衛星を利用したジャーナリズム

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これまで何度か紹介してきた、アメリカの調査報道NPOメディア「プロパブリカ」の新しい試みをお伝えします。

なんとジャーナリズムにNASAの衛星を活用した事例をおこなっていたとのこと。今年9月に公開した、ルイジアナ州の消滅しつつある湿地を追ったインタラクティブ記事「Losing Ground」にて衛星からの画像を活用したのです。ソースも「NASA/USGS Landsat」となっています。

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温暖化の議論はいまだされていますが、地上からのみの情報でなく、衛星からの画像で比較することで、海面上昇による海岸線の後退なども明らかです。テキストだけでは伝えることが難しいトピックなので、地図、画像、音声などマルチメディアを活用しています。

プロパブリカでは、ニューオレゴンに拠点を置く調査報道チーム「The Lens」と協働し、データビジュアライゼーションと地上での取材を実施。そして、NASAの衛星からの画像のほか、ルイジアナ州立大学が所有する古地図、アメリカ地質調査所のデータを用いて、今回の記事がつくられています。

GitHubに記事に使用したツールやソースをアップしているのもプロパブリカのオープンな思想や公益性が現れていていいなあと思います。

海外ではドローンを活用したジャーナリズムも進んでいますが、プロパブリカのような資金のあるメディアでは衛星を活用したジャーナリズムにまでおよんでいて、今後もますます楽しみになりました。 

 

'Space journalism': How ProPublica tells stories using satellites | Media news

イーベイ創業者の「First Look Media」、立ち上げ予定のメディア牽引役が離れる

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以前、イーベイ創業者・ピエール・オミダイア氏の「First Look Media(ファースト・ルック・メディア)」が2つ目の調査報道メディアを立ち上げるという話題を提供したことがありましたが、どうやら暗雲が立ちこめはじめました。NSAによる盗聴問題を報じる「The Intercept(インターセプト)」は順調に情報発信を続けています。

そして2つ目のメディアとして、アメリカにおける金融危機や政治腐敗をテーマにしたものを立ち上げるため、ローリングストーン誌にてコントリビューディング・エディターを務めたMatt Taibbi(マット・タイビ)氏が今年初めから率いていましたが、同氏がメディア立ち上げ前に離れると、NYMagが伝えました。

同氏はファースト・ルック・メディアの上層部と意見が合わなかったことで退任したとされています。

ウォールストリートの不品行やリスクを抱えるグローバル経済などを追っていたタイビ氏をはじめ、NPR(米国公共ラジオ放送)で7年間務めていて10万人以上のフォロワーを抱えるAndy Carvin氏も参画、そのほかにも著名なジャーナリストや動画プロデューサーなどが加わるなど、調査報道を行える人材を揃えていましたが、どうなるのでしょうか。

「Racket」というメディア名のもと、今秋にローンチ予定でした。当初は話題性をもっていたものの、迷走を続けるファースト・ルック・メディア。オミダイア氏の2.5億ドル(約250億円)がどのように使われていくのか、引き続き注視していきたいです。

 

BuzzFeed(バズフィード)直近の3つの動き:発行人交代と記事フォーマット・ニュースアプリ開発

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バズフィードが大きく、かつ、着々とさまざまな動きを見せているので、3つにしぼって紹介します。それぞれ発行人交代、フォーマット開発チーム、ニュースアプリ開発(とそれに合わせた人材獲得)です。 

1. グロースハッカーを発行人に

バズフィードのグロースを担当していたDao Nguyen氏が発行人になりました。月間訪問者を2800万人から1億5000万人へと伸ばした立役者の就任は、新しい発行人像としても注目が集まります。

スマートニュースの藤村さんも、「次にメディア組織の中心に座る者/グロースハッカーがメディアを変える」と題した記事で、バズフィードのグロースを支えた彼女の抜擢に注目されています。

今回、BuzzFeed が読者開発に次いで、重要な職責としてグロースハッカーを打ち出したことは、21世紀型のメディア運営にとりデータを駆使して読者を拡大する施策とそれを推進できる能力に大きな注目が集まってきていることを示す動きとして注目すべきです。

次にメディア組織の中心に座る者/グロースハッカーがメディアを変える | 藤村厚夫 Media Disruption

今回はバズフィードCEOによる内部メモが出ているのですが、海外はよくこういったメモが記事になっていることが多い気がします。日本だとあまりないような。

また、こちらも本題と関係ないですが、国内におけるメディアやアプリのグロースハック関連では、よく以下の記事あたりを読み返しています。

2. イギリスにフォーマット開発チーム設置

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28 Before And Afters That Show The Transformative Power Of Makeupより)

バズフィードは、新しいストーリーの伝え方、読者へのエンゲージメントの手法を考える開発チームをロンドンに置きます。率いるのは、バズフィード英国版の編集ディレクターのTom Phillips氏。実験的で新しい記事フォーマット開発に取り組みます。

同氏は、バズフィードの前にはトリニティ・ミラーの実験的なメディア「Us Vs Th3m」にいた経験をもつので、まさに今回のチームを主導するのに適任だと思います。

また、上記の画像は、夏くらいに生まれたフォーマットのひとつ。ビフォーアフター的なコンテンツで活用しているスライド式の画像コンテンツです。バズフィードの創業時にはリスト記事などを積極的に発信してきましたが、ソーシャル時代にはクイズをはじめ、さまざまなコンテンツを試しています。

そのほか、広範囲のコンテンツに(再)利用できるツールCMS開発もおこなうと同時に、来年にせまった選挙など一度きりのツールも開発していく計画です。

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この記事を書くのにバズフィードのサイトを見ていると、ページの右側に、画像について「すばらしい」「つまらない」の2択を選び、結果をシェアできるというシンプルなコンテンツも現れていました。昔はなかったので、最近できたのでしょうか。nanapiがかつてやっていた「まるばつnanapi」みたいですね。

今後のフォーマット開発からには注目です。読者開発も重要ですが、メディア全体としてはフォーマット開発のインパクトのほうが大きい気がしています。

3. ニュースアプリ開発に向け人材獲得

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ニュースアプリ「BuzzFeedNews」の開発にも動きがでています。

9月にはThe New RepublicからNoah Chestnut氏をプロダクト責任者として、直近ではフィナンシャル・タイムズでコミュニティづくりを担当していたStacy-Marie Ishmael氏の参画が明らかになりました。Ishmael氏は編集・編成を担当します。

ニューヨークタイムズもニュースアプリ「NYT Now」などをリリースしたりと大手紙も続々と新しいアプリを出しているなかで、バズフィードがどのようにアプローチしていくのかは興味深いです。

すでに長らくバズフィード単体のアプリはあるため、ニュースキュレーションアプリとなります。そういう意味では、米国進出をしているグノシーやSmartNewsなどにも領域的にかぶるので注目です。

 

このようにさまざま動いているバズフィード。過去にいくつか記事も書いているので参考までに。また、先日のピュー・リサーチセンターの調査によれば、バズフィードはリベラルからも保守からも信頼されていないというデータも出ていて、なんとも興味深いです。

ジャーナリズムの新しい地平を切り拓く「ヴァイス・ニュース」、一気に7ヵ国展開へ

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5億ドルの資金で7ヵ国展開

以前、「世界35ヵ国に展開するVice Media:2016年に売り上げ10億ドル&IPOも?」という記事でヴァイス・メディアおよび、「VICE News(ヴァイス・ニュース)」を取り上げたことがありました。

世界中のトピックをテキストや写真、動画、音声などマルチメディアを活用して伝えているヴァイス・ニュースが7ヵ国展開を発表しました。ドイツ、ブラジル、メキシコ、フランス、イタリア、スペイン、オーストラリアです。

一気にこの展開ができるのには、ヴァイス・メディアが運営する、サブカルチャーアンダーグラウンドなトピックを扱うメインメディア「ヴァイス(日本版はこちら)」がすでに世界35ヵ国にオフィスを構えていることや、今年に入ってから5億ドル(約500億円)の資金調達をしたことが背景にあります。

現在では月間1億人の訪問者をもつヴァイスですが、タイムワーナーが株式取得などの交渉をしようとしていたことも業界では話題にのぼりました。若者を中心として、ここまで求心力をもつメディアは珍しいので、IPOするのかにも注目が集まります。

コンテンツ拡充と流通拡大ーー動画に注目

さて、本題のヴァイス・ニュースですが、前述の投資を受けて、コンテンツ拡充と流通拡大を目指していくようです。展開する7ヵ国は、それぞれの言語で発信するとのことなので、人材をはじめとするコストもかかってきます。

特に動画に注力するようで、VineInstagramのような短い動画から、ドキュメンタリー動画まで手がけていく計画です。昨年11月に解説したYouTubeチャンネルは100万人が登録し、再生回数も1.5億回に届きそうです。

実際、イスラム国に関する動画は42分という長さにもかかわらず、400万回再生を超え、ここまで近くで取材を続けるヴァイス・ニュースに対する評価が集まりました。

ヴァイス・ニュースの運営会社ヴァイス・メディアなどについては「"ストリートのタイムワーナー"ヴァイス・メディアとティム・プールが実践する横から目線のジャーナリズム」という記事も参照ください。

 

(参考) 

Vice Media expands news channel to seven new countries | Media | theguardian.com

ニュース解説メディア「Vox」の記事フォーマットがとてもいい感じ

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ニュース解説メディア「Vox(ヴォックス)」の記事フォーマットがいい感じです。Voxについて知らない方は以下の記事も参照ください。

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たとえば、セネガルでエボラ熱の拡大終了宣言がなされたことに関する記事

上から、関連するタグ、記事タイトル、そしてライター名とツイッターアカウントやメールアドレスなどが記載されています。

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その下には、各ソーシャルメディアのフォローやメルマガへの誘導がかけられています。

黄色でマークされている部分は、ヴォックスの特徴であるカードがあるところ。つまり、エボラ熱の勃発について複数枚のカード形式での解説を読むことができます。

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そして、エボラ熱の現状を世界地図でも解説しています。ヴォックスではカードと同様にマップにも力を入れています。

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記事の最後には、クイズがあります。ここまでニュース解説をしてきて、最後に読者に考えてもらう機会をつくっているのはいいなあと思います。

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さらにその下には、関連するカードにアクセスできるようになっています。抜かりないですね。

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そして、ストーリーやトピックの流れを時系列でも確認できます。

 

単なるテキストによるニュース解説だけではなく、写真やグラフ、地図、カード、クイズ、タイムライン・・・たった1本の記事だとしても、さまざまな切り口で解説を提供しようとしているヴォックスに引き続き注目していきたいです。

 

「メディアの現在と未来」が気になるときにチェックしたい4人の海外メディア人

海外メディアの情報収集の習慣が身に付いてから1年くらい経つのですが、それでもなかなかキャッチアップできていないことが多くなるなあと思っています。

今回は、 「メディアの現在と未来」が気になるときにチェックしたい4人の海外メディア人を紹介します。忙しいときでもこの方々の発信は追っています。

デイビッド・カー(The New York Times

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まず挙げるのは、ニューヨーク・タイムズにて「Media Equation」というコラムを連載しているデイビッド・カーさん(David Carr)。

コラム紹介にもありますが、紙やデジタル、ラジオ、テレビ・・・さまざまなメディアを横断的・精力的に取材をしています。メディアについて25年以上書いているので、どの記事も読み応えがあります。

動向を広く深く追うだけでなく、オピニオンも述べれていて、すごいなあといつも思います。

直近では、ジェフ・ベゾスによるワシントン・ポスト買収から同紙がどのように息を吹き返しているのかアマゾンによるゲーム実況サイト「Twitch」買収イスラム国に関するヴァイス・ニュースの取り組みなどについて伝えています。

また、スノーデン事件の報道で活躍した元ガーディアン記者で現在はイーベイ創業者によるメディア企業で報道を続けるグレン・グリーンワールド氏へのインタビュー記事「Journalism, Even When It’s Tilted」など、過去の記事でも押さえておきたいものがたくさんあります。

ブライアン・ステルター(CNN)

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ニューヨーク・タイムズを経てCNNで活躍するブライアン・ステルターさんは1985年生まれと若いものの、注目のメディアパーソンです。

ブライアンさんは大学生の頃に始めたテレビ・ニュース業界のことを綴ったブログサイト「TVNewser」で一躍有名になり(後日Mediabistroに売却)、その後新卒でニューヨーク・タイムズの記者になり、新しく生まれつつあるデジタル・ジャーナリズムの申し子としての存在感を遺憾なく発揮しています。ちなみにブライアンさんは昨年11月にCNNに移籍、「Reliable Sources」というメディア業界のトレンドをレポートする伝統ある番組のホストとしてますます活躍の幅を広げています。現在弱冠29歳、大学生時代にニューヨーク・タイムズで有名ブロガーとして取り上げられた当時の様子を振り返るにつけ、新しいメディアを担う新世代の躍動感を感じずにはいられません。

ニューヨーク・タイムズの1年間を密着したドキュメンタリー映画『ページ・ワン』/”Page One: Inside the New York Times” (2011)

ぼくもメディアの動向を伝える「メディアの輪郭」をやっているにあたり、ブライアンさんには共感するところも多いです。

そんなブライアンさんは、ニューヨーク・タイムズ時代には幅広くテレビ業界の話題を伝え、CNNでは番組のホストを務めています。最近では、エボラ出血熱についてのさまざまなメディア報道を見ながら良い/悪い伝え方をレビューしていく回などはおもしろかったです。20代でこのようなポジションで振る舞えるのはすごいなあと思います。

マシュー・イングラム(GigaOm)

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テックメディア「ギガオム」でシニアライターとして活躍するマシュー・イングラムさんも、長らくメディアやコンテンツ分野を追いかけている人です。ハーバード大学ニーマン・ジャーナリズム・ラボなどにも寄稿されています。 

ギガオムにおけるマシューさんの記事一覧はこちら。メディア論とかが好きな人はチェックすると良いかと思います。 

最近では、ニューヨーク・タイムズが戦略を再考する必要性バズフィードの発行人交代課金メディアとして成功する「Dish」についてこれまでジャーナリズムとは関係なかった要素がジャーナリズムに影響を与え始めている兆候など、メディアやコンテンツまわりの話題を躍動感をもって伝えていることが多いです。

ジェフ・ジャービス(ブロガー/ニューヨーク市立大ジャーナリズムスクール教授、起業家ジャーナリズムセンター所長)

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ITやメディアをテーマにしたブログ「バズマシン」を書いていたり、2007年度と2008年度の世界経済フォーラムでは「世界のメディア・リーダー100人」の1人に選出され、ニューヨーク市立大ジャーナリズム大学院(CUNY)にて「アントレプレニュリアル(起業家的)ジャーナリズム」プログラムを牽引するジェフ・ジャービスさんを最後に挙げておきます。 

起業家ジャーナリズムとは「新しい、持続可能なジャーナリズムの会社を立ち上げ、運営する能力」のようなことを指すらしいです(参照:「起業家ジャーナリズム」とは

日本ではまだまだ聞き慣れない言葉ですが、最近では日本からもCUNYで起業家ジャーナリズムを学ぶ人もちらほらいたりします。元東洋経済オンライン編集長、現ニューズピックス編集長・佐々木紀彦さんの著書『5年後、メディアは稼げるか?』においても、メディア人の10パターンの生き方の一つとして、紙メディア族+ビジネス族+ウェブメディア族(メディア運営のプロ、起業家ジャーナリスト)として挙げられたりしています。

マシューさんとジェフさんはメディアをサービスとして捉える、という視点なども有名ですね。

ニュースは本当にコンテンツビジネスなのだろうか? 疑問の余地はないか? 自分たちをコンテンツのクリエイターだと思い込んでしまうと、おそらくは落とし穴にはまり込む。
私たちがいるのがコンテンツビジネスでないとすると、何ビジネスだ? ジャーナリズムをサービスとして考えてみよう。コンテンツは何かを満たすためのもの。一方、サービスは何かを達成するためのものだ。サービスであるなら、ニュースは製品としてより、その成果から評価すべきだ。ではジャーナリズムの成果とは? それならわかりきっている:人々や社会が、よりよい情報を手にすることだ。
「ニュースはコンテンツでなくサービス」ジェフ・ジャービスの処方箋 | 新聞紙学的  
多くのメディア企業は、読者(あるいは“顧客”)ファーストに考えることに馴れていない。
ジャーナリストはしばしば、自らの仕事を、自分たちが重要だと、もしくは適切と考えていることを読者に伝えることであり、読者らが最大限に必要とする、望んでいることを提供するより重要だと考えているように見える。
サービスとしてのメディア/“コンテンツ中心主義”のたそがれ | 藤村厚夫 Media Disruption
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という感じで4名のキーパーソンを紹介しました。といっても、なかなか情報を追うのは大変なので、4名だけまとめたツイッターリストをつくりました。「いま、海外メディアってどうなってるんだろう?」と思ったときに眺めるくらいがいいのかなと思います。

時間があるときには、海外メディア関連の300アカウントくらいをまとめた以下のリストを見るようにしています。

今回の本題とははずれますが、注目の若手ジャーナリストとしては『ヴァイス・ニュース』プロデューサー兼記者のティム・プールさんを挙げます。

1986年生まれと若いのですが、危険な地域で、さまざまなデバイスを活用した新しいジャーナリズムのかたちをつくっている貴重な人だと思います。こちらも興味のある方はチェックしてみてください。

新興メディア「Ozy」が約20億円調達ーー魅力的なデジタルジャーナリズムをつくる

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ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)に向けた新興メディア「Ozy」が、タブロイド紙『ビルト』などを発行するドイツのメディア企業「Axel Springer(アクセル・シュプリンガー)」から2000万ドル(約20億円)を調達しました。

海外ではミレニアル世代に向けたメディアがいくつか台頭しており、Ozyはその筆頭でもあります。

立ち上げたのは、マッキンゼーを経て、MSNBCのアンカーを務めたカルロス・ワトソン氏。彼は、ニュースアンカー以外にも、2009年に「The Stimulist」というニュースサイトを立ち上げた経験もあり、2012年にOZY Mediaを設立。

2013年9月にオージーをローンチし、運営開始からちょうど1年ほどが経つ。現在は、月間300万訪問数ほどの規模となっている。これまでに、540万ドル(約5億円)の資金調達を実施しており、寄稿者含め50名以上のチームでメディア運営をおこなう。

「ミレニアル世代」を対象とした有力な新興ニュースメディア5選

これまでに合計で25億円ほど調達していることになります。上記記事にも記しているとおり、政治メディア「Politico(ポリティコ)」のCTO(最高技術責任者)獲得やCNNとのコンテンツ提携は新興メディアとして注目の動きです。 

また、今回の調達でアクセル・シュプリンガーのCEOがOzyの役員に加わりました。同氏は「Ozyは極めて魅力的なデジタルジャーナリズムの有力な例です」とコメントしています。

Ozyはまだ若いメディアですが、広告、イベント、有料購読などさまざまなメニューを組み合わせたマネタイズを考えているとのこと。いまでは月間300万人を超える読者が閲覧しているので、どんどんマネタイズを進めていくのでしょう。

ちなみにOzyのメディア名の由来は、イギリスのロマン派詩人パーシー・ビッシュ・シェリーの詩「Ozymandias」から来ているそう。創業者のワトソン氏はこの言葉を「大きく考え、しかし、謙虚であれ」と捉え、メディアづくりに励んでいます。

海外の新興メディアについては、一度まとめたことがありました。だいぶ時間がたったので、改めてまとめ直したいですね。

 

(参照)

Media Startup Ozy Nabs $20 Million Investment Round | Media - Advertising Age

没頭コンテンツがさらに来る? BBCやガーディアンも活用するプラットフォーム「Shorthand」

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没頭型のコンテンツや美しい表現ができるプラットフォームというのはどんどん流行ってきている気がします。 

今回紹介するのは、「Shorthand」というパブリッシングプラットフォーム。テキストや写真、動画などさまざまなコンテンツを美しく表現できるというものです。2013年11月にベータ版をリリースして、メディアに声をかけていったところ、活用されて広がっていったようです。

フリーの書き手やメディア起業のジャーナリストに向けて開発されており、すでにBBCやガーディアンなど大手メディアも記事を公開しています。事例を見るかぎり、どれもきれいに表現されています。

海外ではニューヨーク・タイムズの「スノーフォール」、日本では朝日新聞の「ラストダンス」などで知られるようになったイマーシブ(没頭型)記事ですが、調査報道やマルチメディアを活用した記事には適したフォーマットだと思います。

ちなみにニューヨーク・タイムズでは没頭型のネイティブ広告も開始しており、マネタイズにもかかわってくる表現となりそうです。滞在時間や記事満足度、コンバージョンを考えたときに、現状の表現よりも良い数字を記録するのではないでしょうか。

このようなプラットフォームが広がることで、特集やインタビュー記事などに活用されていきそうですね。リッチな表現とともに、スマホに最適化したCMSもどんどん競争が激化していく分野になっていくと思います。大手メディアでは自社でCMSを開発することがあまりないように思いますので、このような広がりは楽しみです。

Mediumがテックメディア「Backchannel」を開始

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以前、WIREDやNewsWeekで活躍したテックジャーナリストであるスティーブン・レヴィー氏がブログプラットフォーム「Medium」のテックメディア立ち上げに参画することをお伝えしました。

10月7日には「Backchannel」というテックメディアが立ち上がっています。「もしピカソMacbook Proをもっていたら」「もしNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)がテックカンパニーだったら」などのもしも系の切り口もあれば、Googleに関する長文記事など、これまで読み物としてもなかったような記事が多くあります。

レヴィー氏は、「Why I Started Backchannel」というメディア開始に際した決意表明の記事では以下のように書いています。

テックライティングの世界は混雑し、混乱していた。その多くが冗長で、多くのメディアで同じことが書かれていたり。(中略)センセーショナルなタイトルに多くの読者が釣られ、なにも新しい情報がないことにがっかりするだけで、なお、ジャーナリストは多くの記事を書かないといけない状況がある

このような状況に対して、違うアプローチでテックメディアをつくることが、レヴィー氏の役割なのです。Backchannelではストレートニュースなどは基本的にカバーせず、幅広い分野もカバーしない。記事を通じて、分析や深い報道、長く続く価値を提供していきたいとのこと。

数名の寄稿者の記事はもちろん、Medium上で発信している一般の書き手による優れた記事も掲載する考えがあるそう。ここから新しいテックジャーナリズムのかたちが生まれるのかもしれません。

 

米政治メディア「ポリティコ」、政策メディア「The Agenda」立ち上げへ

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10月7日(火)、米政治メディア「POLITICO(ポリティコ)」が政策メディア「The Agenda(アジェンダ)」の立ち上げを発表しました。タイム誌で特派員だったマイケル・グランウォルド氏(44)を引き抜き、ポリティコのシニアスタッフ、そしてアジェンダの編集主幹として迎えたのです。

政策メディアは大手メディアを中心にどんどんたちあがっているので、楽しみです。

グランウォルド氏は特派員をやりながらも、単著を執筆したり、前アメリカ合衆国財務長官、ティモシー・ガイトナーとの共著もある書き手。タイム誌以前は、ボストン・グローブワシントン・ポストでライターをしていました。

そんな彼が手がけるアジェンダは「政治と政策の交差点」を目指し、スマートで、タイムリーで、オリジナルで、政策ディベートに関係する専門的な記事が出されていくようです。

アジェンダは来年初めころに立ち上がる予定です。将来的には、外部の寄稿や自社での報道をどちらもおこなっていくとのことで、たくさんの政策メディアがあるなかでどのようにシェアをとっていくのか見ていきたいです。

 

Michael Grunwald joins POLITICO - POLITICO.com