メディアの輪郭

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ウェブメディア編集における「再価値化」と「紙の身体性をウェブに宿すこと」

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先日、WIREDのイベントを聞きにいってきました。僕が行ったのは、「新しい海外メディアが日本には必要だ!」というテーマで、Vice Japan コンテンツマネージャー・川口賢太郎さんと『WIRED』編集長・若林恵さんのトークセッションでした。 

川口賢太郎|KENTARO KAWAGUCHI
Vice Japan コンテンツマネージャー。ストイック且つエクストリームにパンチ力を追求し、強靭な音楽性を鍛え上げたバンド54-71においてリーダーをつとめる益荒男。2008年には音楽レーベルcontraredeを立ち上げ奔放に音楽と関わりながら、雑誌Libertin DUNEの副編集長としても活躍。その鋭利な視点で世界中のファッション、アート、カルチャーを切り開いている。そして、2012年WEBメディアとして日本へ返り咲いたVice Japanのコンテンツマネージャーに就任。変質的なまでの好奇心と感性を遺憾なく発揮している。趣味は自転車。

Vice Japanは先日リニューアルし、トップページが縦タグで埋め尽くされるというユニークなデザインです。VICEの川口さんは元バンドマンということで、言葉の表現やテンションが独特で面白かったです。いくつかメモしたことがあったので、残しておきます。

既存の価値をはずして、再価値化する

ころがりこんできたなんでもないものを、いかに面白く魅せるか、流通させるか。いま「マス」がなく興味関心も細分化・多様化するなかで、ターゲットも設定しづらいという状況です。

どんなニュースにも誰かのコメントや発せられる媒体によって価値付けされていたり、流行だから価値があったり。そういう価値をゼロベースで考えて、再び価値化していくことで、様々な価値観を持つ人に対応していく、といってことを話されていたのが印象的でした。 

時間軸の観点での編集

必ずしもニュース性のあるものをいま扱う必要性がないということです。引きで見たり、時間を置いて俯瞰で見たりすることで、また新しいコンテンツ価値につながるのではという話でした。

またニュース性の高いものは、どうしても大手メディアのフィルターを通したものになることが多く、ほかのチャネルが必要になってきそうです。

長文ジャーナリズムの窓口に

「ウェブメディアとして、長文ジャーナリズムの窓口になりたい」といったことは共感しました。海外ではどんどん長文ジャーナリズムメディアが増えていたり、一方で難しい点もでてくるなか、注目なポイントの一つです。 

最高の妥協点を探る

この言葉も頭に残っています。妥協点を探ると言いますが、川口さんはコンテンツマネージャーとして編集者として「最高の妥協点を探りたい」と。目線の高さを見習いつつ、自分もがんばりたいと思いました。 

紙の身体性をウェブに宿す

WIRED編集長の若林さんが言っていたのが「紙の身体性をウェブに宿すこと」。テキストをCMSに流し込んで、プレビューも予想通りという無機質になりがちなウェブ編集で、今後求められるのが紙の身体性かもしれません。

先日、nanapi社のIGNITION(イグニション)について取材した際も「出版業界で培ったエディトリアルの要素をネットに持ち込むことで、次のネットメディアのかたちにチャレンジしていきたい」という言葉を聞いたりしました。

ただただ紙っぽい表現なのか、CMSイノベーションなのか。

IGNITIONは独自のCMSを開発し、記事を更新している。現状は背景の色を変えたりと、ミニマムな機能が備えられているが、さらにエディトリアルの要素が入ることで、記事ごとの変化やリッチな表現を楽しむことができるようになりそうだ。

「ウェブメディアは儲からない」への挑戦---nanapiがグローバルメディアを打ち出す理由と現在地を聞いた

またVice自体には以下の記事が詳しいので、ぜひご覧になってみてください。いままさに注目のウェブメディアのひとつです。

「ヴァイス(悪)」と銘打つだけあって、メインストリームのメディアがあまり扱わないテーマを、強烈なテイストで取り上げる。例をあげると、ペニスの移植イギリスのヒップホップ・シーンニューヨークのストリートファッションXXBCといった具合である。アメリカ版にはNSFW (Not Safe for Work)という18歳以上を対象としたセクシャルなトピックを扱うセクションもある。悪趣味なサイトだと思う人も少なくないだろう。

これが若者には受けている。ヴァイス・メディアのビデオビューは月間5億回。オーディエンスの64%は男性で、年齢では18歳から24歳までが35%、25歳から34歳までが41%を占める。同社の収入の多くはスポンサード・コンテントによるもので、若者にリーチしようとGE、NIKE、ロレアルなど錚々たる企業がブランド・パートナーになっている。

"ストリートのタイムワーナー"ヴァイス・メディアとティム・プールが実践する横から目線のジャーナリズム