流通の勢力図が見えたメディア業界、2016年は「融合」がキーワード?
「いま、新聞などジャーナリズムが危機にあるのは、ユーザー体験を考え抜いたサービスがないからだ」
こんな声を聞いたのは、2015年8月にオランダに渡り、メディアを取材したときのこと。発言の主は、「Blendle(ブレンドル)」というプラットフォームの国際担当だ。どういうことか?
「若者はコンテンツにお金を払わない」を覆す
端的にいえば、無料コンテンツが大量にあふれたとしても、ユーザーの利便性にかなったサービスがあれば、有料モデルは機能するということだ。
たとえば音楽をみたとき、多くの人がYouTubeを通じて無料で音楽を聴いている一方、聴き放題サービスの代表例「Spotify」には7500万人以上のアクティブユーザー、2500万人以上の有料ユーザー(月額9.99ドル)がいる。iTunesで音楽を買う人だっているだろう。
ブレンドルはまさにジャーナリズム業界に現れたiTunesだ。創業者含め20代中心のチームでつくられている。
若者はコンテンツにお金を払わない――。ブレンドルはそんな根強い定説をユーザー体験の考慮によって覆そうとしている。
すでにオランダの主要媒体がすべて参加しており、そこで記事を1本1本ワンクリックで購入できる仕組みを提供している。広告はブロックされる時代に少額の課金のハードルを設けるのはありだろう。
また、各新聞や雑誌のWeb版のペイウォールにいちいち登録するよりも、ひとつのプラットフォームで記事の購入や閲覧を済ませることができれば、それに越したことはない。
極め付けは、一度買った記事を「返品」できることだ。「どうせ返品できるなら、買ってみようかな」と思えれば、記事を買う体験ができる。最初からペイウォールで月1000円となれば、少しの思い切りが必要だ。
また、著名人やキュレーターが記事をおすすめし、友だちが買った記事もわかるため、ソーシャルの結びつきから記事の購入にもつながることがある。これは紙媒体ではできなかったことだろう。
ブレンドルのように、記者やジャーナリスト自身がユーザー体験の向上をカギとして、Web時代におけるジャーナリズムの持続可能性を考えることが重要になる。
実際、そうして運営されるブレンドルで購入される人気記事は調査報道やロングインタビューといった「ちゃんとした」ものなのだ。
流通をめぐる話題・議論が多かった2015年
2015年を振り返ると、「どう」届けていくのかという議論が盛んだった。要するに強大な力を持ちすぎたプラットフォームに引きずられた、流通をめぐる環境の話が多かったのだ。
フェイスブックの「Instant Articles」やSnapchatの「Discover」、アップルが「Apple News」のいずれも今年発表された。でも、そこにどんな「ニュース」が流れるのか、という話はほとんど上がらなかった。
2016年は、どう届けるのかという環境が整ったうえで、「だれが」「なにを」という議論が活性化するのではないかと思う。コンテンツの外側の議論はそれはそれでワクワクする。
しかしながら、なぜメディアをやるのか、なぜそれを伝えるのか。「広く浅く」のメディアから「狭く深く」もしくは「広く深く」のメディアが盛り上がり、よりメディアやジャーナリズムをめぐる本質な方向に動いていく年になるだろう。
2016年、さまざまな「合流」や「融合」が起きていくと思う。
大企業とスタートアップの協業や買収などによる人材やカルチャーの合流、マネタイズでいえば広告と課金、広告とイベント、課金とコミュニティなど手法の融合、紙とWebの融合……2015年に流通の勢力図の見通しが良くなったからこそ、2016年の具体的な中身をめぐる議論に注目したい。
ショートカット化する日本/ムダも余裕も隙もない"最適化"社会へ
大人になってから、「最初はパー」で勝ち急ぐ人はめっきり見かけなくなりました。勝負は目の前の瞬発的なものだけでないと気付いてくるからかもしれません。
ふとそんなことを思いながら家まで歩いて帰る途中で、2015年ユーキャン新語・流行語大賞の候補語50語が発表されたことを知りました。公式サイトによれば、選ばれる基準はある程度定まっているようです。
1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの。(新語・流行語大賞より)
スマホの画面でサイトにアクセスし、ランダムに目に入った50語。そのいくつかには規則性があるような気がしました。違和感というかつっかかるようなものを明確な理由もなく感じたのです。
- ドラゲナイ
- はい、論破!
- 結果にコミットする
- I AM KENJI
- I am not ABE
- レッテル貼り
- 早く質問しろよ
- とりま、廃案
- ミニマリスト
- ルーティン
- フレネミー
- おにぎらず
全部をいちいち取り上げませんが、「はい、論破!」「とりま、廃案」にはこの先のコミュニケーションを想像するのが難しいですし、「レッテル貼り」「I am not ABE」などは勝手に相手や自分の性質や立場を決めてイメージが固定されてしまう。「早く質問しろよ」というのもなんだか決められたプロセスを最短距離で行きたい思惑がみてとれます。
「結果にコミットする」「ルーティン」なんかも無駄のない動きを定める必要性、「ミニマリスト」は持たない暮らし。「おにぎらず」は握らないおにぎり。握るプロセスを省いても見た目がいい感じになります。クックパッドも「時短和食の新定番」とするほど。1991年に『クッキングパパ』で紹介されていたレシピなのにこの2015年に多く流れる言葉になったのは、いまの社会を反映していると思いました。
こういった言葉やそれを通じたコミュニケーションが凝り固まり、最適化されていくなかで、先日取材したライターの武田砂鉄さんの言葉が頭に残っています。
「文章を書くうえで、こうやったら読者にわかりやすいだろうと、交通整理をしすぎるべきではない、と感じています。誰しも自分の頭の中で考えていることは混沌としているし、その瞬間ごとに飛躍を繰り返しているはずです。今回の本では、その変化をそのまま文章に落とし込んでみる方法を探索しました。
読む人に配慮して、サービス精神ばかりが目立つ文章は、尖っている言葉を丸くする行為にも思えます。『これくらいなら分かってくれるでしょ』と読者をナメていると感じることも多い。世の中にいたずらにあふれる言葉を考察するこの本では、考察を展開していくときに、『1』の次に必ずしも『2』が来ないような構成を徹底しました」(武田砂鉄さん)
武田砂鉄と藤原新也が語る「わかりやすさ」への抵抗感 〜現在を躍進させる「言葉」を取り戻せ! | 現代ビジネス [講談社]
フラット・シェア・オープンといったネットの特徴のもとに設計されたメディアは浅く広くページビューを獲得してきましたが、最近では「狭く深く」に向かう雰囲気があるように思います。これまでネット時代に築かれてきたビジネスモデルから脱却することで、そのような新しいメディアの姿も生まれてくるのでしょう。
今回の新語・流行語大賞の候補語を知ったとき、なんだか窮屈な気分がしました。
新しい言葉や今年受容された言葉を讃える賞があるならば、「代理店が一生懸命流行らせようとしたけれど流行らなかった言葉大賞」みたいな賞があってもいいかもしれません。半分冗談ですが、もう少し言葉についてしつこく考え、ムダも余裕も隙も許容されるような(むしろそれらが楽しい)社会を想像していきたいと思いました。
日本版バズフィード編集長が発表されたけれど、他国版の編集長は一体どんな人たち?
10月16日、日本版バズフィード(媒体名は未定)の創刊編集長に元朝日新聞記者の古田大輔さんが就任したことが発表されました。リリースは今冬を予定。古田さんは東南アジア特派員、シンガポール支局長を経て、朝日新聞デジタルの編集者になった人物。「withnews」でニュースアプリやネットメディアについて精力的に取材・執筆をされていました。
伝統的なメディアの最良の部分とインターネットの文化やテクノロジーを融合させる。そして、良質なニュース&エンターテインメントを世界中のより多くの人々に提供し、シェアしてもらう。これがBuzzFeedの目標です。日本の編集部から国内のみなさんにコンテンツを届けるだけでなく、世界にも発信していきたいと思います(古田さんのコメント)
バズフィードは、月間訪問数2億人を数え、動画の再生数も月間15億回を超えるネットメディア。プレスリリースには「オリジナルニュース、エンターテインメントコンテンツやビデオコンテンツの制作、配信を行うグローバルメディア企業。広告の領域においても、ソーシャルメディアへの最適化とテクノロジーに基づいたコンテンツ重視の制作方針を明確にし、新しい広告のあり方を提唱しています」と書かれています。
2006年の創刊以来、バズフィードはアメリカ、イギリス、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ドイツ、スペイン、フランス、インド、メキシコに展開。バズフィード編集長はポリティコ出身のBen Smithさんです。おかげでネコ記事やリスト記事が多かったバズフィードにニュース記事が増えていったのです。
このブログ記事では、世界に広がるバズフィードの各国編集長(Founding Editorや地域によってはEditorを含む)がどんな人たちなのかを見ていきたいと思います。
(バズフィードより)
イギリス:Janine Gibson
2015年6月、イギリス版編集長に就任したのが元ガーディアン米国版編集者のJanine Gibsonさん(1972年生まれ)です。ガーディアン時代にはスノーデン報道にもかかわっていました。
イギリス版自体は2013年3月のスタートでしたが、編集長を置くことで多くの読者を取りに行く、グローバル展開への注力が明らかに見える発表でした。編集長就任時にイギリス版は月間1800万訪問数という規模感です。50名ほどのスタッフをたばねる編集長が女性というのがいいですね。
オーストラリア:Simon Crerar
2013年9月にオーストラリア版編集長となったのがSimon Crerarさんです。News Corpオーストラリア版にてビジュアルストーリーエディターからの転身です。紙もネットも経験しています。
ちなみにオーストラリアは人口2300万人ほどのうち、フェイスブック利用者が1400万人を超えており、この高普及率から、バズフィードと相性のよい国ということができそうです。
ドイツ:Juliane Leopold
イギリス版に続いて2014年にローンチしたドイツ版も女性編集長です。Juliane Leopoldさんは、ドイツ最大規模の週刊紙「Die ZEIT」のオンライン版「ZEIT ONLINE」にてソーシャルメディアエディターを務めていた人物。ドイツ版の規模は月間300万訪問数を超えています。
フランス:Cecile Dehesdin
フランス版編集長も女性。さらには20代です。ルモンドやポリティコなどのインターン、Slateのフランス版などを経てバズフィードへ。フランス版は現状、およそ月間200万訪問数です。
カナダ:Craig Silverman
2015年4月にカナダ版の編集長になったのがCraig Silvermanさん。コロンビア大学のジャーナリズム研究機関を経て、メディア好きにはおなじみのメディア「Poynter」などにも寄稿しています。『Mafiaboy』『Regret the Error: How Media Mistakes Pollute the Press and Imperil Free Speech』などの著書もあります。
スペイン:Alfredo Murillo
スペイン語版の創刊編集長はAlfredo Murilloさん。Hail! Popというカルチャーサイトの編集をしていた人物です。バズフィードではスペイン語版のローンチをすすめる一方で、南北アメリカ大陸やカリブ海などスペイン語圏に向けてサイトはすでにあります。
このリージョナルディレクターを務めるのは、Conz Pretiさん。1983年生まれの女性です。コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールを終了後、UnivisionやMashableなどのニュースサイトで経験を積みました。
メキシコ:Javier Aceves
2015年3月からメキシコ版の創刊編集長にはJavier Acevesさんが就任しています。コピーライター、編集者、コンテンツディレクター経験をもち、フリーランスとしても長く活動してきました。ヴァイスなどでもコラムを書いているとのことです。
ブラジル:Manuela Barem
ブラジル版は2013年からあり、語学学習プラットフォーム「Duolingo」を活用して運営されてきました。いまでは新聞社「Jornal O Estado de Mato Grosso do Sul」やいくつかのネットメディアで経験を積んだManuela Baremさんが編集長を務めています。そんなブラジル版はアメリカ版とイギリス版に次ぐ規模感だそう。
インド:Rega Jha(editor)
インド版の編集をしているRega Jhaさん。20代半ばの女性編集者として、バズフィード以前にはコンデナストやTime Out New York、The New Yorkなどでインターンを経験するなどうらやましい経歴です。
インドはハフィントンポストやクオーツなども進出しているほかScoopWhoopなど有力なバイラルメディアも出ています。もちろん人口が多いですが、それだけ各社が読者を取りにきている国でもあるのでバズフィードがどのように展開するのかも調べてみたいです。
以上、アメリカ含む10カ国の編集長/編集者を紹介しました。バズフィードのアクセスの半数ほどは米国以外からというデータもあります。引き続き、今後の国際展開(中国やナイジェリアには進出するそうですが)に注目したいです。
メンバーズ、元アトコレのMiner Studio買収――若手起業家がつくるメディアの未来
ソーシャルメディア活用支援やWebサイト運用などを提供するメンバーズが9月29日、株式会社マイナースタジオ(元・株式会社アトコレ)の買収・子会社化を発表しました。買収額は公表されていませんが、複数の関係者によれば数億円規模だそう。
アトコレは「みんなの美術館 アトコレ」の運営から事業をはじめ、ニュース解説サイト「The New Classic」やお出かけ情報サイト「Banq」など複数のWebメディアを5名ほどのチームで運営しています。
マイナースタジオ社の原型となったアトコレはクラウドワークス取締役副社長・成田修造さんやMERY運営のペロリ代表・中川綾太郎さんや河合真吾さんが在籍していたことでも知られています。資金関連では2011年、Samurai Incubate Fundより約450万円の資金調達を実施。その後もともと代表をつとめていた成田さんが退任され、チームが一新して1年半前から本格的に再スタート、今回の売却に至りました。
「メディアよりもサービスが伸びていた」
今回の件に関して、マイナースタジオ代表の石田健さんに少しお話を伺うことができました。月間200〜300万訪問数に到達していたこともあるThe New Classicが評価されたのかと思っていましたが、どうやらBanqやその他オウンドメディア構築・運営/コンテンツマーケティング関連の知見が大きかったようです。
「実はメディア運営よりもサービスのほうが伸びていたんです。コンテンツをつくり、メディアに落とし込み、流通や分析までおこなうサービスを提供しており、メンバーズグループに入ることでいまのチームが活きるのではないかと思いました」
現在いくつかのオウンドメディア運営にかかわっており、その売り上げが伸びていたとのこと。このあたりには、短期間で複数メディアを数百万UUまで成長させてきたノウハウが生きているのでしょう。
仕組みを意識したインバウンドメディアをつくる
メンバーズでは中長期的に訪日外国人向けのインバウンドメディアに注力したいとの考えがあり、アトコレが運営してきたローカルなお出かけ情報メディア「Banq」がその部分を担っていくようです。
同メディアはリニューアルをおこない、他言語展開を視野に入れて成長させる計画だそう。アトコレではここまでに書かれていないメディアも水面下で運営していましたが、今後はBanqに集中させていくとのこと。
「オウンドメディア運営に関するコンテンツ制作や流通で得た資金を新たなインバウンドメディアに投入していくようなイメージを持っています。チームとしてもワンプロダクトを伸ばすよりも、コンテンツの制作や流通の仕組みをどう活かしていくのかに関心がありました。
また、既存のインバウンドメディアの多くは日本のいいところを紹介するところに寄っていて――ぼくもそこに関心はあるのですが――それなりの数の読者を獲得していくには、仕組みを意識したメディアづくりが大切になると考えています」
「複雑なものを複雑なまま伝えたい」
ところで、石田さんは個人として海外メディア動向を伝えるメディア「メディアハック」を運営していたり、The New Classic時代にはいくつかの重要かつ本質を突く(超)長文記事を執筆するなど、書き手としても精力的に活動しています。
個人的にはThe New Classicのコンセプトやアプローチが好きで、海外メディアにおけるVox.comやBusiness Insider、Quartzあたりの影響が見え隠れしています。このあたりのアプローチを咀嚼して実践している日本のメディア運営者は石田さんくらいしか思い浮かびません。そのコンセプトや狙いについては過去のインタビューなどでも話されています。
石田:複雑なものを複雑なまま伝えたい、という意味では、編集の方針はむしろ時代に逆行しているとも思うんです。どんなにニュークラでふざけた画像を出しても、その分で、重めにコミットしている人をちゃかすことはしません。複雑なことを複雑なまま届ける、それがいちばんやりたいことです。
(中略)
石田:「世界に世界を説明しよう」を掲げています。これはフランスの歴史家リュシアン・フェーヴルの言葉です。「世界に世界を説明する」。これはとても難しくて、とてもクールなことだと思っています。
たとえば「戦争が起きました」。では「なぜそれが起きたのか」、これを実証しようと思ったらコストも時間もかかるわけです。今のところ、それは大学が担保しようとしていますが、本来的には、大学だけじゃなくて色んなところが担うものだと思っています。新聞なんかもそのひとつですね。
とはいえ、そうした実証はお金や人材がいないとできません。たとえばある人が「第二次世界大戦においては、メディアの影響が大きかった」と語りたいのなら、しっかりとリサーチデザインをして、仮説を立てて…という作業をする必要があります。しかし、そういうコストは一人のブロガーではまかない切れません。ニュークラはそういう情報を生産できる場になればいいな、と考えています。
(「イケハヤマガジン増刊号 Vol.1:MEDIA-MAKERSムーブメントは起こるのか!? メディア野郎への道標」より)
過去には「インターネット界隈の事を調べるお」にて「数年後『アトコレマフィア』とか呼ばれるかもしれない若手起業家達」というブログ記事も出ていたアトコレ(現・マイナースタジオ)。先述のとおり、コアメンバーは多方面で活躍しています。今回の買収は、若手メディア起業家のひとつの成功として重要な出来事だといえそうです。
3年で約6億PV、世界展開、事象を詳報――メディア新時代を鮮烈に切り拓いた「クオーツ」の功績
アトランティックメディア社が2012年に開始した、新鋭ビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」 が3周年を迎えました。それを報告する記事では、さまざまなデータやこれまでの軌跡が示されていました。
クオーツが生みだした3年間の功績
フルタイムのジャーナリストが70名。3年間で5.8億PV、1.7億訪問数を記録しています。グローバルかつハイステータスな読者を狙ったメディアとしては十分な数字なのかもしれませんが、アフリカやインドへの進出によりさらに伸びる余地は大きいでしょうう。
多くの読者がアップルニュースやフリップボード、スマートニュース、グーグルニューススタンド経由で読んでいるとのこと。だからといって、コアな読者がいないかというとそうではありません。「Quartz Daily Brief」というニュースレターには15万6千人が登録しています(ぼくも購読していますが、半数ほどが開封しているそう)。そしてイベントもアメリカやイギリス、インドなど世界中で開催しています。
今年に入ってからの注目の動きとしては、動画も好調で3500万回再生を超えていること、クオーツが制作したチャートを検索したり、ダウンロードしたり、埋め込んだりできる「Atlas」というデータビジュアライゼーションプラットホームは異次元であること(2014年だけでも4000ほどのチャートが制作されているのだとか)、英語圏メディアらしく「Actuality」というポッドキャストを提供し始めていること……細かく終えていない間にさまざまな取り組みがおこなわれていました。
最後に、2013年〜2014年にかけてクオーツについて取り上げたブログ記事を参考までにいくつか紹介します。クオーツをあまり知らない方にとって、なんとなく概要を把握できるものになっていれば幸いです。
記者に「専門分野」は求められなくなるのか? クオーツが志向する未来のメディア像(2013年11月)
「No more "beats"(「専門分野」はもういらない)」
これはクオーツが掲げるメディア像の一つです。記者といえば、経済、社会、政治など特定の専門性のもと取材を重ね、記事をつくっていくことが求められていました(いまも求められることが多いと思います)。
ストレートニュースではなく特定テーマを追う
しかし、同メディアは「記者に専門分野は求められなくなる」と考え、メディア設計を行っているようです。500語以下のショート記事と800語以上の長めの記事を出していることでも知られていますが、その方式についても独特の編集方針を持っています。
『クオーツ』は「オブセッション」という方式を取っている。常時、重要トピックを1ダースほど設定し、集中的に詳しく伝えている。これは雑誌スタイルとも言える。そしてまた、「クオーツ・カーブ」という編集哲学に基づき、記事を送り出している。
この「オブセッション」とは、一定期間追いかけている特定のテーマのようなもの。現在のテーマは、「The mobile web」「Digital money」「Energy shocks」「Euro crunch」「China’s transition」「The future of finance」「The cloud」「How we buy」「Debt」「Borders」「Space Business」「Abenomics」「US Immigration」となっています。
経済系が多いのはビジネスメディアなのでもちろんですが、意外とデジタル系が多かったり、宇宙ビジネスなどもカバーしていたりと、「オブセッション」の変化を見ていくのも面白いかもしれません。
クオーツ記者はある程度「オールラウンダー的」
さて、冒頭の記者の専門性の話に戻ります。エコノミスト紙を経てクオーツでグローバルニュースエディターを務めるGideon Lichfield氏は次のようなことを言ってます。
決まった専門分野を持つ代わりに、我々は絶え間なく進展する「事象」を集めるニュースルームづくりしています。「金融市場」は専門分野ですが、「金融危機」は事象です。「環境」も専門分野ですが、「気候変動」は事象です。(中略)我々はこれらの事象のことを「オブセッション」と呼んでいます。
クオーツはロイターをはじめとする通信社のコンテンツをアグリゲーションし、速報記事をカバーしています。そのため、この「オブセッション」に力を入れることができているのです。
ニュースを専門分野ではなく、事象で捉え、点ではなく、面でのコンテンツ発信を意識すること。さらに、Gideon Lichfield氏は、ニュースを事象で捉えることは分野を横断的にまたぐこともあるので、クオーツの記者はある程度「オールラウンダー的」にならざるを得ないとも言っています。
分野横断的にニュースを捉えていくこと
記者に専門分野は求められなくなり、ジャンル横断的になっていくのでしょうか。クオーツの掲げる「オブセッション」を含め、これからのメディア/記者像について考える一つのきっかけになればと思います。
専門分野を超え、分野横断的に「オブセッション」としてニュースの捉えるクオーツの志向するメディア像については引き続き目を向けていきたいところです。最後に、参考までにクオーツの特徴をいくつか挙げておきます。ウェブメディアを設計する際のヒントがあるかもしれません。
- ページ型でなくストリーム型
- バナー広告でなくネイティブ広告
- 記事下部でなくパラグラフごとのコメント
- レスポンシブWebデザインの採用(モバイル/タブレットを意識)
- 速報はアグリゲーションでカバーし「オブセッション」に注力
月間読者500万人超えたデジタルメディア「クオーツ」が2014年に見据えること(2014年2月)
18ヵ月で500万人の読者を抱えるビジネスメディア
アトランティックメディアが2012年にモバイル/タブレットファーストを掲げたビジネスメディアとしてスタートしたクオーツ。立ち上げから18ヵ月経ち、1月の月間読者が500万人を抱えるまでになりました(12月にはメルマガの読者が5万人を突破)。
しかしながら、6割の読者がパソコンから読んでいるので、思ったよりモバイル/タブレットファーストの実現には至っていないよう。それでもレスポンシブデザインはきれいですし、タイムライン型のメディアとして、無限スクロールやスクロールで次の記事を読むと勝手にURLが変わる仕組みなども秀逸です。
そんなクオーツのトラフィックの半数がソーシャル経由とのこと。 パソコンからのトラフィックは9〜17時の日中のワークタイムが多いよう。
2014年はデータビジュアライゼーションと米以外の読者獲得
2014年はデータビジュアライゼーションにも力を入れていくようです(現状でも多くの記事にインフォグラフィックやチャートを見かけます)。
同時に、アメリカ以外の読者獲得も目指すのだとか。1月は40%以上がアメリカ以外で、そのうち15%がイギリスからだったとのこと。現在は30名以上の記者を抱えているのですが、昨年9月にイギリスのジャーナリストも雇用し、同国での読者開拓も行っています。
現状は、まだまだパソコンからの流入が多いようですが、今後スマホやタブレットユーザーが増えるにつれて、クオーツの戦略は成熟していくことでしょう。先進的なデジタルメディアとして、その戦略を追うことで参考になりそうです。
米国におけるデジタルメディアの動向とは? クオーツ発行人 ジェイ・ローフ氏のプレゼンを聞いた(2014年10月)
クオーツというメディアの革新性について、海外では多く報道されているものの、日本での認知はほとんどありません。以前、クオーツのパブリッシャー兼プレジデントを務めるジェイ・ローフ氏が来日した際にプレゼンを聞いてきました。米国におけるデジタルメディアの動向と広告の潮流についての発表で参考になりました。いくつか情報をシェアしたいと思います。
「もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう」
WIREDのパブリッシャー、アトランティックのパブリッシャーを経て、アトランティックメディアが2012年に新設したQUARTZのパブリッシャーになったローフ氏。自然とページが変わるデザインやネイティブ広告でも注目される同メディアは、現在、月間550万UUを記録しています。
ローフ氏はさまざまなデータを紹介し、ニュースをとりまく環境変化を伝えました。決まった時間にニュースを見る人は2002年の49%から、2012年には37%に減少する一方、すきま時間に見る人は2002年には49%、2012年には57%に増加しているとのこと。
そして、2006年、Twitterの登場をきっかけにさらに環境は変わりました。当時流行った「“If the news is that important, it'll find me.(もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう)」という言葉も紹介。スマホやソーシャルの普及により、新聞のようなプル型メディアから、プッシュ通知などをはじめとするプッシュ型メディアに大きく変わっているとしました。
(アメリカでは)61%がニュースの閲覧にモバイルやタブレットを使用(41%がモバイル、20%がタブレット)、そしてPCが30%と、構図が逆転しているのです。新聞含め、紙メディアやウェブメディア初期は一面やホームページが機能していたけれど、いまでは60%のトラフィックがソーシャル流入なため、アンバンドル化が進んでいます。また、91%のエグゼクティブがニュースをシェアをしているという興味深いデータの紹介もありました。
500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化
QUARTZは、シェアとエンゲージメントに適応したコンテンツということも意識しているようです。500~800ワードはあまり読まれない/シェアされないという「クオーツカーブ」も紹介しました。
アメリカの新聞の平均的な記事の長さは、紙面の上から下までの一段の記事で、語数にして700語台である(日本語に訳すと2千数百字になる)。だが、『クオーツ』は、500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化している。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
短いものでは、インフォグラフィックや短編動画で記事を構成し、長いものはストーリーテリングやシリーズものの報道といったものになっています。クオーツカーブのように、データをもとに、メディア環境の流れをコンセプトに昇華できるのはすごく魅力的なことだなと思います。
「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」
デザインに関しては「Radically Simple」「Responsive Design」の言葉を挙げていました。バナーやハイパーリンクなどを入れず、コンテンツに集中してもらうことでエンゲージメントを高めるようにしていたり。だからこそ、ネイティブ広告も活きてくるのでしょう。
続いてローフ氏は、ROI(投資利益率)、モバイル、ソーシャルインプリフィケーション、デジタル、エンゲージメント、パブリッシャーなどの要素がネイティブ広告を後押ししたと紹介。「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」といったデータもあるそう。
効果的なネイティブ広告には、質、関係性、目立たないこと(Unobtrusive)、デバイスに最適化すること、透明性などの要素が挙げていました。質に関する実例としてゴールドマン・サックスが提供する「Macroeconomic outlook for 2014」を紹介していました。
プレゼン後の質疑応答セッションでは、本題にあまり関係ないけれど、クオーツのひとつの強みであるデータビジュアライゼーションツール「チャートビルダー」について聞いてみました。
オープンソースとしてGitHub上で公開されており、データジャーナリズムサイト「FiveThirtyEight」のネイト・シルバーをはじめ、著名なジャーナリストも活用しているツールとなっているようです。間接的にチャートを活用した記事づくりを促進しているのが素敵です。
老舗メディアからクオーツのようなメディアが生まれることには希望しか感じません。個人的にはVox.com(ヴォックス)と合わせてクオーツはかなり展開や戦略、実際の動向などがスマートで魅力的に映っています。
コンテンツで儲けるためには――12のビジネスモデルとメディア編集力から考える
すでにメディアに関心のある方は目を通しているかもしれませんが、「メディアの未来」という特集を組んだ『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年7/01号』がおもしろかったです。いまさらながらですが、人選がよかったです。
「コンテンツで儲ける可能性を探る」という副題のもと、編集工学研究所所長の松岡正剛さんやチームラボ社長の猪子寿之さん、電通コンサルティング取締役の森裕治さんらが登場します。一部を取り上げてみます。
「アテンション・エコノミー」に沿ったメディアばかり
最初に登場する松岡さんは、コンテンツビジネスの変化を次のように整理します。これまで、良質なコンテンツ制作→広く流通→顧客満足、という3段階があったけれど、現在では特にプラットフォームなどにおいてはまずは顧客満足(しながら継続的な利用者を集め)、そこにコンテンツを投下し広げていく流れになっていると分析しています。
これはキュレーションメディアなどがイメージしやすいですが、雑誌のように高いお金をかけたコンテンツを最初からつくるのではなく、消費しやすいライトなコンテンツをつくり、ユーザーを集めて規模拡大を図っていくようなことを指しているのでしょう。
ただ、松岡さんは顧客やユーザーよりも確固たるコンテンツが先にあるべきだといいます。いまのメディアやそこに乗っかるコンテンツには偶然性や複雑性、知識や教養がなく、まずは振り向いてもらえるバイラル系が人の目に触れることが多くなっているような状況を、締めの言葉で表しています。
世の中は「アテンション・エコノミー」(関心の経済)と「インテンション・エコノミー」(意思の経済)の二つが絡み合ってできている。しかし、前者のメディアばかりが溢れて、いまのところ後者のメディアが逼塞したままになっている。なんともお寒いことである。(32ページ)
12通りのメディアビジネスモデル
次に登場する森さんは、メディアとコンテンツの機能を見直すことで、メディアの未来像にアプローチしています。ここではコンテンツとは「共有されたがるもの」と定義して話を進めています。以下の過去記事にも通じるところがありそうなので、参考まで。
森さんはメディアのビジネスモデルを図表付きで紹介(本誌を見てもらうとわかりやすいです)。メディアの種類を、メディア一体型(新聞など) 、クロスメディア型(メディアミックスなど)、オープンメディア型(だれでも情報発信できる・つかえる)という3つにまとめ、収益モデルは課金、補完(コンテンツから派生するサービスなど)、広告・データ、互酬(寄付や支援)の4つに分け、全12通りとしています。
このほかメディア編集力についても触れているのも勉強になります。この力に関して3つのポイントが挙げられています。ひとつは生活者の参加者度合い。これはCGMなどがそれにあたります。二つ目は、流通に最適なコンテンツのかたちを考慮するモダリティ、そして最後はいつ・どのように消費してもらうかという消費形態です。
たとえば、本誌でも例として取り上げられているバズフィードは、分散型メディアといえるほどモダリティを考え抜いていることに加え、タイトルをA/Bテストで決めていくなど良くも悪くもユーザーに寄り添った消費形態をとるメディアです。このように、自分のメディアがどのビジネスモデルをとるべきか、どんなメディア編集力が必要なのか、照らし合わせることができるコラムになっています。
グローバルならハイクオリティ、ローカルならロークオリティ?
最後に紹介する猪子さんについては、以前から繰り返し語っているネットの世界では、「グローバル・ハイクオリティ」と「ローカル・ロークオリティ」に二分されていく話をしています。ぼくは地方出身なので、どうしても後者に関心がいってしまうのですが。
「ローカル・ロークオリティ」は、コミュニティ型であることが前提です。(中略)コミュニティという価値によってクオリティやコストが無視される世界が、いますごい勢いで発達している。また、コミュニティにおいてはクオリティが高すぎると逆にダメ。(60ページ)
メディア業界は、ハイクオリティなコンテンツをつくるならグローバルへ、ローカル(「ニッチな分野」「濃いめの同じ価値観」とか言い換えてもよさそう)だけに必要とされるようなコンテンツであればコミュニティに向かうのが自然だとしています。
おそらく、前者は高い技術力や流通、グロースハックなどが、後者は適当なコミュニティマネジメントやイベント運営などが重要になるのかなあと思いました。ただ、ローカルメディアといってもローカルに根ざさず、あえて都会向けに発信する場合もあります。そういう場合はハイクオリティがむしろ必要だったりするので、さらに発展したカテゴライズもできそうです。
というわけで、今号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの内容は、コンテンツにかかわる幅広い層にとって、参考になる寄稿やインタビューが集まっていると感じました。
日本ではなぜWeb専業のジャーナリズムメディアが生まれないのか?
最近、「日本ではなぜWeb専業のジャーナリズムメディアが生まれないのか」と聞かれる機会がありました。難問というか、答えられたらこんなブログはやっていないわけですが、いろいろ考えてしまいました。
ただよくよく考えてみると、海外でもピューリッツァー賞を獲得したことがあるのは、ハフィントンポストやプロパブリカ、InsideClimate News、The Center for Public Integrityあたり。それ以外の有力なオンラインジャーナリズムメディアというと、ポリティコやテキサストリビューン、ファーストルックメディアなどはありますが、意外と少ない印象です。
Webかジャーナリズム、どちらかしか知らないバランスの悪さ
こういうアメリカのメディア状況と見ると、テクノロジー企業とメディア企業の近さと、紙とWebメディア間での人材移動、ジャーナリズムや調査報道への理解などはポイントになるのかなと思います。また、テクノロジーやメディア企業とジャーナリズム業界がお互いに理解して、協働することも重要になりそうです。
ウェブメディアやソーシャルメディア時代の情報発信をわかっていてもジャーナリズム(の意義や価値)を知らない、逆にジャーナリズムをわかっていてもウェブを知らないという状況のバランスの悪さは日本にはあると思います。
たとえば、ハフィントンポストはアリアナ・ハフィントンという政治や経済界に強いパイプをもつアイコンと、バイラルの専門家であるジョナ・ペレッティ、SEOやシステムに力を入れたポール・ベリー、現在は投資家やバズフィード会長としても影響力をもつケネス・レラーなど、新旧の人材がうまく混ざっています。もちろん、ハフィントンポストが存在感を表すことができたのには、保守系のアグリゲーションサイト「ドラッジレポート」の逆が空いていたという市場の関係もあるでしょう。
ジョナ・ペレッティとケネス・レラーが率いるバズフィードでも、編集長はポリティコ出身のベン・スミスがいる一方、パブリッシャーにはグロースを担当してきたDao Nguyenがいるなど、新旧の強みが合わさったチームとなっています。
生活動線に沿ったところで、ジャーナリズムは存在すべき
では、日本ではどうか。やはり紙メディアがまだ強いことや、Webメディアでジャーナリズムをやるとしたら、儲かるモデルがないことは冒頭の問いに対して大きなハードルになっているかもしれません。海外ではハフィントンポストもバズフィードも清濁を併せ呑み、ライトな記事でお金を稼いでから、速報ニュースや調査報道に投資してきました。
日本だとライトな記事で収益化に成功している媒体は多くあると思いますが、そこでは別にジャーナリズムをやろうと思っていなかったり、そういうライトな印象がある媒体にジャーナリストが参加しない(しづらい)ような感じもあります。
ただ、堅いニュースでもWebメディアやSNS上で消費されるようになっています。今春のピューリサーチによる調査ではミレ二アル世代の6割がフェイスブック経由で政治ニュースを得ているという結果も出ています。新聞や雑誌などの紙よりも、WebメディアやSNSのほうが生活動線に沿っているいま、Web専業のジャーナリズムメディアが生まれる必要はやはり感じるところです。
垂直統合型か分野特化型のメディア
とはいえ、実際どうすればいいのか考えてみても、採算度外視でオンラインジャーナリズムをやるのは限界があります(やるならプロパブリカのような財団をバックに抱えるようなかたち?)。
ちゃんとジャーナリズムと収益ともに成立するメディアを目指すのであれば、バズフィードがメディアではなく「プロセス全体」を取ろうとしているように、垂直統合型(開発、制作、販売、流通)のメディアビジネスを展開するか、気候変動だけに振り切ったInsideClimate Newsのように分野特化を攻めるかのどちらかになる気がしています。答えは出ないですが、引き続き、考えていきたいトピックです。
最近、これからのメディアのあり方を考えるために、「ぼくらのメディアはどこにある?」というメディアの編集をはじめました。メディア業界の外にあり、生活に溶け込むメディアをどんどん取り上げていきます。
分散型の報道メディア「reported.ly」がWebサイトを開設した理由
イーベイ創業者が創業した「First Look Media」が2014年末に公開した分散型の報道メディア「reported.ly」。ツイッターやフェイスブック、レディットなどのソーシャルメディアを活用するメディアであり、「グローバル・ニュース・コミュニティ」としての運営が続いていましたが、ここでひとつの変化がありました。
それは、自社サイトを持つようになったことです。
分散型といえば、各プラットフォームに最適なコンテンツを流し、それぞれの利用者がいるところにコンテンツそのものを届けていくような考え方でした。では、reported.lyのサイトを見てみましょう。各ソーシャルメディアのタイムラインが一覧で確認できる「reported.ly now」やその日のニュースダイジェスト、そしてアーカイブがあるというくらいです。
(reported.ly nowでは各ソーシャルメディアでの発信が時系列で閲覧できる)
サイト開設を発表した記事では、当初からサイトを持ちたいと考えていたことを明らかにしています。ほぼソーシャルメディアのみでスタートしましたが、ツイートなどでは瞬時に消費して終わるので、時間をかけてさまざまなトピックを追ったとしてもなかなか読者側にはわかってもらえないことが課題でもあります。
続報を届けたり、ニュースの文脈まで汲み取って伝えていくには、やはりアーカイブも兼ねた自社のサイトが必要になったのでしょう。コンテンツ単体で消費されてしまいがちな分散型メディアならではの課題も徐々に見え始めていて改めてサイトの意義も問い直されそうです。今回のサイトはあくまでベータ版ということなので、今後の活用にも注目していきます。
ノンフィクション・メディアが生き残るために必要なもの:流通への意識や新しい習慣・単位
先日、『ネットと愛国』などの著書で知られ、最近では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞されたジャーナリストの安田浩一さんとお話する機会がありました。ノンフィクション誌『G2』(講談社)が今回の19号目をもって休刊するとのことで、同号に原稿を書いている2人で対談を実施したというものです。
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「取材をしないネットメディアには、匂いや身体性がない」 安田浩一×佐藤慶一対談「ノンフィクション・メディアの意義・課題・希望」【前編】
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「ノンフィクションで理念とビジネスを両立するには手数が必要」 安田浩一×佐藤慶一対談「ノンフィクション・メディアの意義・課題・希望」【後編】
ぼくは本誌では、休刊に合わせて(?)「ノンフィクションを読まない24歳Web編集者がノンフィクション・メディアの未来について考えてみた」という"暴論"を12ページにわたって書きました。このなかでは、第19号の編集人にヒアリングをしたうえで、現状のノンフィクションの課題とこれからのノンフィクションの生き残りについて、コンテンツの製作と流通、そしてメディアの収益化という3点から掘り下げています。
そして対談では、ぼく自身がノンフィクションの書き手の方とお話しするのが初めてだったので、Webメディアとはかなり異なる部分が多く勉強になりました。
「読者目線を続けることで、媒体は信頼性を獲得していくことができるのか」
安田さんがWebメディアについて懸念し、紙媒体のノンフィクションのほうにまだ意義が残っているとした理由は、Webメディアが稼げていないために取材費や原稿料が出せない(だから取材しない記事が多い)のではないかということがメインだったと思います。
加えて、紙媒体ならではの体制(編集+校閲)がWebメディアではなかなか組めていないこともあります。また、読者目線はメディアにとっていいことなのか、ということも論点のひとつとなりました。
安田:たとえば、週刊誌時代の読者アンケートでトップに来ていたのは、決まってショッキングな話題、スキャンダラスな話題、衝撃的なグラビアだったりする。こういった読者の反応を意識し続けてしまった場合、地味な告発型のノンフィクションなどは切り捨てられてしまうという危機感を感じる。果たして、読者目線を続けることで、媒体は信頼性を獲得していくことができるのか。読者を意識しながら、コンテンツのクオリティをどのように維持できるのか、または高めていけるのかを考えざるをえないと思います。
「取材をしないネットメディアには、匂いや身体性がない」 安田浩一×佐藤慶一対談「ノンフィクション・メディアの意義・課題・希望」【前編】
「出版業界エコシステムが崩壊しつつある以上、その中でどう生き延び自分の伝えたいことを広めていくのかという手法はもはや変わらざるをえない」
しかしながら、2008〜2009年にかけての相次ぐノンフィクション誌休刊、そして今回のG2の休刊。現実として、ノンフィクションが売れない、読者に届かないという課題はあるように思いました。対談記事を読んでくださったジャーナリストの佐々木俊尚さんは以下のようなツイートを残しています。
私も同じような分野でかつて仕事をしてきたので安田浩一さんの言ってることにはとても共感できるんだけど、その仕事を支える出版業界エコシステムが崩壊しつつある以上、その中でどう生き延び自分の伝えたいことを広めていくのかという手法はもはや変わらざるをえないと思うんですよね。
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) 2015, 5月 27
このような状況のもと、書き手や編集者はますます流通を意識しなければならなくなるのかもしれません。そこで、ノンフィクションというジャンル全体との接点をもっと増やし、ノンフィクションに触れる習慣を生み出すべきであり、ネットで積極的にコンテンツを展開していくならば新しい単位(文量や書き方など)が必要になってくると思います。
有料サロン活用で原稿料という仕組みから脱却
日頃メディアにかかわっていて思うのは、原稿料という仕組みは古くなっていくのかもしれないということ。これは、ノンフィクション・メディアのひとつの突破口になるのではないかと考えています(といっても想像の域を出ませんが)。
イメージでは、有料サロンが近いです。つまり、原稿を書いていないときにもお金が入ってくる仕組みがきっとノンフィクションには必要になるのだろうと思っています。たとえば、ビッグイシューのサロンは注目の事例のひとつ。
こういうところがノンフィクションの未来に向けたヒントを与えてくれるのでしょう。ノンフィクションライターでサロンを開きたい人がいたら、編集者としてそういう人のサポートをできたらいいなあと思います。
ノンフィクションには実験と実践が求められる
そんなことを考えていたときに、ビジネスジャーナルが芥川賞作家・柳美里さんに対するインタビュー記事を公開していました。安田さんとの対談に続いて、書き手の実情を知ることができました。
「書くことだけで食べている作家は30人ぐらいではないか」「(年収は)多かったときは1億円以上、少ないときは400~500万円」「かつてはノンフィクションであれば執筆前に取材費が出ていましたが、今は自腹です」など赤裸々な発言がみられ、現在のノンフィクションの側面を知るうえで重要だと思います。
長期間の取材を要するコンテンツや企業・事件報道などが生きていくには、どんな媒体や体制が必要なのか。出版社はいま、実験と実践が多々求められてくるのではないでしょうか。今後はこういった媒体の実験的な取り組みにもかかわれるようになりたいと思いました。
バズフィード、2016年大統領選に向け"ファクトチェック"チーム立ち上げへ
バズフィードが2016年大統領選に向けて、政治家の過去の発言や政策のアーカイブを掘り起こし、ファクトチェックをおこなうチームを立ち上げたことをポリティコなどが伝えています。このチームの指揮をとるのは、12万人近くのツイッターフォロワーを抱える、1989年生まれの政治記者Andrew Kaczynski氏。Kaczynskiのもと4名のチームを結成し、うち2人が社員、2人がインターンということです。2016年選挙の候補者に関して、あらゆる情報を探すためにつかう体系化したシステムを持っているとのこと。
Kaczynski氏についてはウィキペディアに詳しいですが、大学生時代から政治家の発言のアーカイブを参照しながら、現在の立場との整合性をチェックするなどしていたそう。特に選挙時には動画やツイートが話題となり、さまざまな媒体からアワードを受賞しています。
バズフィードでは過去の選挙戦についても、編集長のベン・スミス氏を中心に政治ニュースチームで都度報道をおこなっていたり、フェイスブックと共同で候補者に関する印象をデータとして発表しています。今回のチーム結成については、これまでのバズフィードによる政治報道から大きな一歩を踏み出すものになりそうです。バズフィードが政治家や選挙ついて独自の調査部隊を抱える動きは硬派なニュースを正しく伝えるという意味で、重要なことになるでしょう。
さらにバズフィードでは今夏、CEOのジョナ・ペレッティを中心に「BuzzFeed Open Lab For Journalism Technology and the Arts」という研究開発機関を設立します。新技術がジャーナリズムになにをもたらすのか、テクノロジーとアートの交差点を探る動きとして成果にも目を向けていきたいですね(GEなどスポンサーが付いていることも注目です)。2014年8月の大型資金調達のあとに設立した、各プラットフォームへのコンテンツの流し方を考える流通部門にもつながる話なのかなと思いました。
バズフィードについては、先日80ページほどの資料をつくりました。関心ある方はぜひご覧になってみてください。
米ニュースサイト「バズフィード」が将来有望なライターのためのフェローシップ開始
月間訪問数が2億人を超えるアメリカの大手ニュースサイト「バズフィード」が将来有望なライターを育成するためのフェローシップ開始するようです。サイト上で発表しています。「BuzzFeed Emerging Writers Fellowship」と名付けられたフェローシップは、次世代を担うライターの発掘や育成のために設けられました。
4ヵ月のプログラムでは、ライティングや編集スキルについてはもちろん、キャリアに関するメンタリング、金銭的なサポートまであるようです。エッセイライティングやカルチャーに関するルポなどを集中的に学び、ライティングワークショップやメディア業界で働く編集者やライターとのディスカッション、フリーランスとしての食い方なども用意。
選出されたライターはBuzzFeed Newsのシニアエディターとともにニューヨークで働くことになるそうです。金銭面については1万2000ドルを給付予定。フェローシップから生まれた記事はバズフィードでも掲載される予定とのことです。スキルや姿勢を学び、実際にバズフィードという巨大メディアで記事も掲載される、駆け出しのライターなどにとっていい条件な気がします。
フェローシップの合格者は10月に決定し、それから4ヵ月の2016年の1月までフルタイムで働く予定。志願者はアメリカでの労働認可を受けている人でなければないといけないそうです。
今回の募集記事を投稿しているのは、バズフィードでLGBTを立ち上げ、現在はLiterary Editorを務める方。2013年秋には「ブックエディター」という役職も設置していたバズフィードが文学・文芸にもぐっと力を入れていくようです。Electric Literatureのインタビューによれば、2016年3月には文芸カテゴリーを設けるとのこと。
今回のフェローシップは考えていることのはじまりにすぎず、文学・文芸のムーブメントを同メディアにもってきたい、という発言もあるため、楽しみな動きになりそうです。21世紀の文芸誌のあり方を見つけることを目標に据えながら、まずは短いフィクションや詩、エッセイなどを届けていくことを目指します。フィクションもノンフィクションも読み物がバズフィードで息を吹き返すとしたら、出版業界にも大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。
ところでバズフィードは昨年10月、ジャーナリズムの名門であるコロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールが共同で調査報道のフェローシップを開始しています。こちらはメディア機関にマイノリティの人材が少ないことを問題意識として置いていたようですが、今回のフェローシップと合わせてメディア業界の課題にチャレンジしていることは評価できるのではないでしょうか。
またハフィントンポストも同様に、「米ハフポストがクラウドファンディング実施ーー『ファーガソンの暴動』の継続的報道に向け」という投稿で紹介した通り、クラウドファンディングを通じたライター育成をおこなったことがありました。
Webメディアは紙媒体と違い、基礎を学ぶ機会があまりなかったり、原稿料が安かったり、じっくり時間をかけた原稿がなかなか出せないこともあります。新聞や出版社などが力を落としている海外において、「ライター育成」というのは大きな課題のひとつでしょう。また、あまり収益にはつながらないけれどエンターテイメントとしてはニーズがありそうな文芸コンテンツの拡充を新興メディアが進めていくというのも重要なポイントだと思いました。
ぼく自身がWebメディアしかやったことがなく、編集やライティングをじっくり学んだことがないため、国内外のWebメディアがどのように実力のあるライターを育てていくのかはとても気になるところです。
米ニュースサイト「バズフィード」、オバマ大統領インタビュー実施へ
(photo credit: Obama speaking via photopin)
米ニュースサイト「バズフィード」のベン・スミス編集長が2月10日、ホワイトハウスにてオバマ大統領にインタビューを予定していると、バズフィードがプレスリリースを出しています。サイト上でインタビューが公開されることに加え、バズフィードの動画部門「BuzzFeed Motion Pictures」が制作する動画でも大統領が登場予定とのこと。
バズフィードは2012年1月に政治メディア「ポリティコ」からスミス編集長を迎えて以来政治ニュースの報道に注力し、大統領選を追えるまでになりましたが、大統領に直接インタビューをおこなうのは初めて。インタビューに先立ち、メールやフェイスブック上でも質問を募っています。
ネコの写真まとめなどのバイラル実験からはじまり、社会的なニュースやビジネストピックをカバーし始め、いまでは200名ものジャーナリストを雇い、オリジナルの比重を高めながら、存在感を大きくしていったバズフィードが大統領をインタビューできるまでになったことがなにを意味するのか。
オバマ大統領は過去にRedditでAMAセッション(バラク・オバマだけど質問ある?)を開くなど、伝統的でない新しい対話のフォーラムを摸索し、実施してきました。他方、バズフィードはISIL(いわゆるイスラム国)の問題やウクライナ情勢など国際ニュースから国内のファーガソン暴動などさまざまなトピックを若者にリーチする形でカバーしてきました。今回のインタビューが若者と政治の新しい接点となることにも注目したいです。
バズフィードが大統領にインタビューということも話題ですが、実はニュース解説メディア「ヴォックス」は1月23日にインタビューをおこなっており、最近、記事と動画がアップされました(ヴォックスもオバマ氏へのインタビューは初)。
編集長のエズラ・クラインやエグゼクティブ・エディターのマシュー・イグレシアスが国内情勢や外交についてインタビューをおこなっています。記事はワンカラムで左右の余白を注釈や詳細説明に活用していることも理解につながりますが、動画についてもグラフィックやアニメーションをふんだんに用いていてそのクオリティに驚きました。動画はすべてこちらから視聴できます。バズフィードの大統領インタビューがアップされたら、合わせてチェックしたいですね。
約4万人が有料購読するオランダ新興メディア「De Correspondent」が英訳開始へ
4万人近くの有料購読者によって独自のジャーナリズムを展開するオランダ新興メディア「De Correspondent(コレスポンデント)」が新展開を見せました。英訳をはじめるというのです。
コレスポンデントは立ち上げにあたり、8日間で100万ユーロを集めたことや、デザイン事務所とコラボした洗練されたウェブデザインでも話題になり、2013年9月にスタートしたメディア。年間購読料は60ユーロ(8,000円)という設定ながらも、多くの読者を集めています。
2014年3月時点では、29000個のコメント、 記事は180万回閲覧といった規模感です。また、毎日5本程度更新、うち1本がフィーチャー記事というスロージャーナリズムを実践しています。
これまではオランダ語のみでの展開でしたが、まもなく2週間に1本のストーリーが英訳されていくとのこと。じっくり取材した記事や深い掘り下げの記事などが、英語圏にどのように受け止められるのかという反応や有料購読者も増えるのか楽しみです。
We'll soon start translating our best @decorrespondent stories to EN and publish one every 2 weeks. Subscribe here: http://t.co/yNg6jSB9Tt
— Ernst-Jan Pfauth (@ejpfauth) 2015, 2月 3
最近、コレスポンデントのブログが更新されており、「Links are broken. These three alternatives have improved our readers’ reading experience.」というエントリーでリンクの工夫について紹介していました。
3つ紹介されているのですが、どれもリンクを踏んでも新しいウィンドウで開くことをしないタイプ。たとえば「Info card」というものでは、クリックすると詳細がその場で開く仕組みで、人名であったり簡単な解説を要する事柄に使えそうです。
リンクの工夫を見ただけでも読者のことをよく考えているメディアであることはわかります。その他にも多くの工夫がなされていて、小林恭子さんの「記者と読者の関係を変える、オランダの『コレスポンデント』」という記事にもくわしいです。
コレスポンデントのようなスローな記事更新、読者参加、そしてコミュニティがサポートするメディアのかたちは、少しずつ増えてくるような気がします。
ヴァイス・ニュースがはじめる「VR(仮想現実)」を活用したジャーナリズム
「世界35ヵ国に展開するVice Media:2016年に売り上げ10億ドル&IPOも?」という記事で紹介したことのある米ヴァイス・メディアが「VR(仮想現実)」を活用したジャーナリズムをはじめます。
昨夏に起きてしまった白人警官が黒人少年を射殺したマイク・ブラウン事件に関して白人警官が不起訴となったことを受け、昨年11月末あたりから反対運動が盛り上がっています。
今回のヴァイスのもつニュースサイト「ヴァイス・ニュース」では、約6万人が参加したと言われるニューヨークでの運動をVRコンテンツとして発表。デジタルアーティストと映像作家、そしてヴァイスのクリエイティブディレクターとヴァイス・ニュースで制作したとのことです。
「VICE News VR: Millions March」という作品名で、VRSEというアプリで閲覧できます。ただ、ヴァイスは映像にかなり強みをもつメディアのため、動画でも良いのかなと思う部分はあると感じます。
また、ヴァイス・ニュースは世界中でなかなか拾われないトピックを継続的にインパクトのあるかたちで報じることもありますが、どのようなトピックが相性が良いのかはひたすら試行錯誤していくしかないのだと思います。
映像の次のストーリーテリングを目指すヴァイス。VRコンテンツの活用シーンは限られるものの、ジャーナリズムや報道にどのような効果的な使い方があるのか。摸索しがいがありそうです。
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ジャーナリズムのiTunesを目指す「Blendle」がもうすぐ20万ユーザー到達ーー北欧にも展開
ニューヨーク・タイムズやドイツ最大の新聞社、アクセル・シュプリンガーが投資していることでも知られるオランダ発のメディアサービス「Blendle(ブレンドル)」。現在、19.5万ユーザーであること、収益化のために北欧への海外展開を予定しているとjournalism.co.ukが伝えています。
ブレンドルは2014年4月に生まれた「ジャーナリズムのiTunes化」を目指すサービス。27歳のジャーナリスト2名が創業、政府からの助成金と自分たちで集めた資金40万ユーロ(5,000万円)でスタートしました。
サービスについては、加入後2.50ユーロ(350円)分まで無料であり、記事は1本0.1ユーロ〜0.8ユーロ(10〜100円)あたりがメインの価格帯。理由を明記さえすれば返金可能という特徴もあります。記事価格の約70%が出版社側に行き、ブレンドルは30%を受け取るというモデルです。
また、友人やキュレーター(著名人ら)が買った記事がわかることも特徴の一つ。ソーシャルのつながりをうまく購買意欲にむすびつけています。オランダでは意外とうまくいっている記事単体で購入できるプラットフォームですが、海外ではどうなるのか注目ですね。北欧のメディア事情なども気になります。
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