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ワシントンポストの人気コラムニストが「Vox Media」に移籍ーー新ニュースサイト立ち上げへ

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ワシントンポストの人気コラムニストEzra Klein(エズラ・クライン)が退社し、デジタルメディアを手がける「Vox Media」に移籍したことが発表されました。

同社で新しいニュースサイト立ち上げるとのことですが、彼のこれまで、Vox Mediaとは、そしてこれから立ち上げるメディアについて整理してみたいと思います。

Ezra Klein(エズラ・クライン)とは何者なのか?

クライン氏は現在、29歳。カリフォルニアの生まれ育ちで、父親は数学教授、母親はアーティストという家庭でした。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校に入学。その後、ロサンゼルス校に転入し、2005年に卒業(学位はポリティカルサイエンス)。UCLA時代には、「Daily Bruin」というカリフォルニア紙にライターの応募をしたものの、落ちてしまった経験があるとのこと。2011年に、ニューヨークタイムズの経済政策レポーター(economic policy reporter)のAnnie Lowrey(アニー・ローリー)氏と結婚しています。

そんな彼ですが、大学卒業後は「メリカン・プロスペクト」で編集者として活動。その後、2009年5月にワシントンポストに移籍しました。それと平行して、ブルームバーグMSNBCでコラムニストとして活躍。この若さで個人のコラムニスト/ブロガーとして個が立ってたっており、貴重な存在だと思います。

そんな彼はワシントンポストでは政策ブログ「Wonkblog」を立ち上げ、同紙の中で重要なメディアとなるまで押し上げました。その後、2013年秋には、チャートや画像を扱うバイラルメディア「KnowMore」を立ち上げ、トップ5に入るほどまでに成長させました。

Wonkblogでは政策に関するライティング能力はもちろんのこと、他の政策ブロガーなどに対する書きっぷりも人気の理由だったのだとか。特に選挙時には、ヘルスケアや予算の問題は活発な議論が交わされる重要なメディアの一つとなっていました。

2010年には、The Week magazineが選ぶ今年のブロガーにノミネート。 2011年にはワシントンポスト紙で最も読まれたブログとなりました。また同年、GQ誌が選ぶワシントンで最も影響力のある50人に選出されるほどになっり、タイム誌が選ぶベストフィナンシャルブログ25選としてもノミネートされたのです。2013年には、「Online News Association's award」を受賞し、ここ近年ではその論評がかなり評価されていることが伺えます。

多数の受賞歴もあり、人気の書き手だった彼が、ワシントンポスト紙を去ることはやはり大きなニュースなのです。加えて、旧メディア(新聞)からデジタルメディアの最前線を進んでいるとも言える「Vox Media」に参画したことも時代の流れでしょうか。

ちなみにワシントンポストでは、さっそく穴を埋めるように、「National Journal」 編集主幹のAdam Kushnerを新しいオピニオン分析メディアの編集者として引き入れたり、新しい政策メディアの開設も予定しているのだとか。今春以降スタートしていくそうです。

次に、クライン氏が移籍する「Vox Media」について少し見ていきましょう。

デジタルメディアカンパニー「Vox Media」とは?

Vox Mediaは、2003年にできたデジタルメディアカンパニーです。高いクリエイティブを誇るサイトを続々と立ち上げており、多数の地域での展開を行っています。

スポーツメディア「SB Nation」やゲームメディア「Polygon」、不動産&地域メディアCurbed」、食をテーマにしたメディア「Eater」、ショッピングをテーマにしたメディア「Racked」、そしてテックメディア「The Verge」などのメディアを運営しています。The Vergeは、2011年にワシントンポスト元コラムニストのJoshua Topolskyによって立ち上げられたりと、多くの優秀なジャーナリストを率いています。

現在、Vox Mediaにはライターやクリエイティブ職を中心に、400名を超える人が働いているそう。上記のサイトを合わせると、7290万人ほどの読者を抱えています(過去12カ月の成長率はBuzzFeedやAtlantic Media、Gawkerなどを上回り1位)。その企業価値は2012年時点で、1.4億ドル(約140億円)ほどになっている注目のメディアカンパニーなのです。

動画にも力を入れており、SB NationのYoutubeチャンネルは5万人近い登録者と2000万回再生、The Vergeにいたっては、約30万人、6000万回再生ほどを記録。2013年秋には3400万ドルの資金調達を行い、さらに動画ビジネスに注力する旨も明らかにされています。

では、クライン氏がワシントンポストを去ってまでつくるメディアとはどのようなものになるのでしょうか。

Vox Mediaでどんなメディアをつくるのか?

新しくできる予定のメディアは「Wonkblog」のように政策のみというよりも、もう少し視野を広げたものを目指しているとのこと。今年の春ローンチされる予定で、クライン氏の得意分野の政策に加え、スポーツやカルチャーなども積極的に取り上げるつもりだそう。

この新しいニュースサイトの立ち上げは、現在「Project X」として進められています。新しいニュースが必ずしもニュースの理解度を上げるわけでもないので、「コンテクスト(文脈)」を重視したメディアづくりをしていくようです。

このプロジェクトには、クライン氏の他にも、KnowMoreチームだったMelissa Bell(メリッサ・ベル)とDylan Matthews(ダイラン・マシューズ)、さらにはSlate誌のブログ「Moneybox」で人気を博したMatt Yglesias(マット・イグレシアス)なども一緒にVox Mediaに移ることが決まっています。

また、追加で求人も行っており、ハッカーやコーダー、デザイナー、動画プロデューサーなどを集める予定。クリエイティブを強みとした発信、さらにはデータの可視化などを積極的に行っていくことでしょう。新しいニュースサイトになりそうで楽しみです。 

最後に、話はそれますが、近年、注目のブロガーやジャーナリストの大手メディアからの独立が増えています。例えば、The Daily Beastで活躍したブロガーAndrew Sullivan(アンドリュー・サリバン)氏は昨年「Dish」を独立させ、課金メディアとして順調に成長しています。

また、ニューヨークタイムズの人気統計家で大統領選の予測をばっちりと当てたことでも知られるNate Silver(ネイト・シルバー)は「FiveThirtyEight.com」を独立させ、ESPNのサポートのもと、運営しています。

その他、ウォールストリートジャーナルでAllthingsDを立ち上げたWalt Mossberg(ウォルト・モスバーグ)とKara Swisher(カラ・スウィシャー)は同紙を去り、新しいテックメディア「Re/code」を、NBCの出資のもとで立ち上げています。

引き続き、「Project X」の動向を気にしつつ、海外大手メディアからの独立&新メディア立ち上げの流れにも目を向けて行きたいです。

 

【参考】