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海外バイラルメディア・トッププレイヤー解説

以前、イケダハヤト氏のメルマガ「イケハヤマガジン」にて、「乱立する国内バイラルメディアをまとめてみたーー35のメディア紹介」という記事を書きました。

今回は、海外の主要プレイヤーを7つを紹介します。

 

1. Upworthy

2013年、一躍脚光を浴びたウェブメディアが「Upworthy(アップワーシー)」でした。

2012年3月の設立以来、動画のキュレーションを行い、最大で月間9000万人以上の読者を獲得するほどになりました。50名以上のキュレーターでコンテンツを制作しているので、1人当たり月間200万人をサイトに呼び込んでいる計算です。

マネタイズは、スポンサードポストを採用。ゲイツ財団の枠を設けて、世界の健康に関するトピックを発信するなど、バイラルメディアとしてのお金の稼ぎ方も注目です。

そんなアップワーシーで一番読まれるコンテンツはなんだと思いますか?

公式ブログでインフォグラフィックが紹介されており、2013年に多く観られたトピックを振り返っています。 トップに来るのは、ゲイやレズビアンに関する動画で、収入格差や性平等など「社会問題」がよく読まれることが分かっています。

例えば、フォトショップなどの過度な利用事例から美について考える動画は440万シェア、がんに関する動画は390万シェアとなっています。

なんと上位100記事で約4億PVとのこと。これは1本あたり平均300〜400万PVを記録したことを示していて、シェアに関しては1本あたり42万回以上なのです。また、昨年投稿したコンテンツのうち、139本の記事が100万PVを超えています。

しかしながら、SEOが弱くフェイスブックアルゴリズムにも左右されるため、直近では月間訪問数は約5000万人ほどに落ち込んでいます。今後どのような施策を打っていくのかが見所です。

http://www.upworthy.com/

 

2. BuzzFeed

続いて紹介するのは、2006年にハフィントンポスト共同創業Jonah Peretti(ジョナ・ペレッティ)氏らが立ち上げた「BuzzFeed(バズフィード)」。現在、1.3億人ほどの月間読者がいます。

ハフィントンポストのようにうまくグローバル展開を進めているバズフィード。2013年10月にフランス、スペイン、ブラジル(ポルトガル語)の各国版を公開し、翻訳プラットフォームも活用しながら、非英語圏へのさらなる展開が注目されています。英語圏もイギリス、オーストラリアと順次攻めているのです。

まとめ記事やクイズ記事がトラフィックを多く稼いでおり、2014年1月はトップ10記事のうち9本がクイズだったことも分かっています。このようにライトなコンテンツに目がいきがちですが、ピューリッツァー賞受賞記者を率いて調査報道を行ったり、長文記事にも注力したりとそのジャーナリズム手法にも期待されるところです。

2012年にPOLITICOで活躍していたBen Smith(ベン・スミス)氏を編集長に迎え、政治、ビジネス、調査報道、長文ジャーナリズムの分野にも積極的にコンテンツ展開が行われるようになりました。2013年10月末には、調査報道で知られる非営利メディア「プロパブリカ」においてピューリッツァー賞受賞した記者Mark Schoofs(マーク・スクーフ)氏を調査部門に迎えられ、調査部門を率いることになりました。

マネタイズに関しても昨年600〜700本ほどのスポンサードコンテンツを制作し、6000万ドルの収益を上げています(来年は1.2億ドルの見通し)。動画も公式のYoutubeチャンネルを持ち、ネットワークの合計が9億回再生を突破。動画広告も展開しています。多くの人に読まれるコンテンツを出しながら、メディアとしてしっかりお金を稼ぐ、素晴らしいメディアだと思います。

http://www.buzzfeed.com/

 

3. Distractify

2013年10月、弱冠20歳が立ち上げたばかりのウェブメディアが「Distractify(ディストラクティファイ)」です。

1ヵ月後、月間読者が2100万人を記録し、海外メディアでは話題となりました。コンテンツなどもバズフィードのようなリスト記事が多く、ソーシャル上で広がりを見せています。なんと流入の9割がフェイスブックからとのこと。

昨年フェイスブックが良質なコンテンツ/ニュースを重視するアルゴリズムに変更したことが、短期的に驚異的な数字を獲得した大きな要因となっているようですこのメディアを立ち上げたQuinn Huは、Youtubeクリエイターとして活躍後、今に至ります。

3人からチームはスタートし、現在は11名体制です。今後の課題は、ネイティブ広告獲得を含めたマネタイズになっていきそうです。若く、少数でも、読まれるメディアを立ち上げることができると証明する好事例ではないでしょうか。

http://www.distractify2.com/

 

4. ViralNova

フェイスブックページ(https://www.facebook.com/ViralNova)が120万いいね!を超えるのが、「ViralNova(バイラルノバ)」です。

オハイオ在住のウェブデザイナー&SEOコンサルタントが1人で運営しているのですが、2013年5月のスタート以来、月間600万人の読者を抱えています。ソーシャルメディア上での存在感が出ているようです。

コンテンツに関しては、まとめ記事やおもしろ系記事が多く見られ、基本的にはポジティブやクリエイティブ、感情に訴えるようなものをそろえています。他の新興メディアとの差別化は難しいですが、フェイスブックページのいいね!が一つの強みとも言えます。

http://www.viralnova.com/

 

5. KnowMore

アマゾンCEOのジェフ・ベゾスによって買収されたことでも話題となったワシントンポスト。ネットの普及によって、新聞は売れなくなり、この6年間を見ても新聞部門は44%もの営業利益の減少という現状なのです。

2013年10月に立ち上がったのが「Know More」というメディアでした。ワシントンポストの政策ブログ「Wonkblog」の新たなスピンオフメディアとしてはじまりました。

チャートやグラフ、写真のキュレーションをしており、詳しく知りたいときは「Know More」ボタンで外部サイトに行き、別に知りたくない場合は「No More」ボタンで記事を閉じることができます。

知識探求、そして情報過多ではなくシンプルな1枚のコンテンツによるスローウェブ体験の楽しさを感じてもらうことも狙いの一つ。そしてツイートボタンとシェアボタンのみの設置でソーシャル上へのシェアを促すような設計になっています。

「Know More」はワシントンポストのブログの中でもトップレベルのアクセスを稼ぎ、大手メディアによるバイラル要素を取り入れた実験としても良い事例と言えるのではないでしょうか(ただし、マネタイズは行えていないようです)。

2名体制で運営していたこのメディアですが、責任者だったEzra Klein(エズラ・クライン)氏を含めたメンバーが、新興メディアカンパニー「Vox Media(ヴォックスメディア)」に移籍。今後の動向が気になるところです。

http://knowmore.washingtonpost.com/

 

6. Independent Journal Review

Independent Journal Reviewもなかなか影響力を持ち始めているメディアです。

政治や政策を主なトピックとして扱うバイラルメディアで、現在月間読者が2000万人ほど。政治版バイラルメディアといってもよいこのメディアですが、10人未満で運営されているのだとか。

100万人のメール購読者もいるようで、政治というトピックの注目度が伺えますね。日本でも既存にないような新しい政治メディアは誕生してほしい思います。

http://www.ijreview.com

 

7. 9GAG

9GAGは画像やGIFなどをメインに据えたメディアです。規模は、月間7300万訪問数、12億PV。

2012年にはYコンビネーターのアクセラレータープログラムにも参加し、280万ドルを調達した。グーグルアドセンスとバナーでマネタイズを行っているようです。

平均滞在時間が14分超えという驚異的な数字も持っているので、引き続き目が離せない新興メディアです。国内ですと、月間870万PVを記録したCuRAZYが似ているかもしれませんね。

http://9gag.com

 

以上、ざっくりと押さえておきたい、海外の主要なバイラル系のメディア紹介でした。基本的には、動画や画像のキュレーションで、トラフィックを集めています。

しかしながら、バズフィードのように、メディアとしての資金繰りをしっかりして、政治ニュースや調査報道にも進出している事例もあります。

何を目的にトラフィックを集めるのか。そのあたりを突き詰めたメディアが増えて欲しいと感じています。 

 

メルマガでは、今回の記事以外にも、「2015年、99%のバイラルメディアが消滅する3つの理由」「『whats』はどのようにして生まれたか?」 などのコラムを読むことができます。ぜひご覧になってみてください。