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ニュースの新しい遊び方・使い方とは? BBCがストーリー実験のプラットフォーム「Taster」公開

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(「BBC Taster」トップページより)

 

BBCが最近、「Taster(テイスター)」というプラットフォームを立ち上げました。「味見する人/味きき役」を意味する名前の通り、実験やコラボレーション、新しいプロジェクトの感触を見るような場として活用するものです。

テクノロジーを活用することで、ストーリーをどのように伝えられるのか。オンライン、ラジオ、テレビなどBBC社内からさまざまなアイデアを探し、横断的なコラボレーションの実現を目指すようです。たしかに種類の違う媒体の人材やアイデアが交わることで、新しい伝え方の可能性は出てくるのかもしれません。

この新表現の実験基地とも言えるようなテイスターのページを見ると、すでに20個近くのアイデアが掲載され、試してみることができます(イギリスのみでしか利用できない場合もあります)。

たとえば、「Body Language」は、ボディーランゲージを用いて詩を伝えるもの。「Kneejerk」は、最新の話題をGIFVine、ツイートなどのかたちでジョークに変えるというもの。こちらはすでにいくつか作品がアップされています。

BBC Big Voice Hack 」は、音声認識で利用者がなにか尋ねるとニュースを教えてくれるサービスで、新しいニュースとの出会いを演出できそうです。サイト上では、「ハンズフリーBBC」と表現しています。

さらには、「BBC Weather Bot」というツイッターBotもアイデアのひとつ。場所と時間をBotに向けてツイートすると天気予報を伝えてくれるというもの。また、「Your Story」はフェイスブックアカウントと連携することで、自分の成長と合ったタイムラインでその当時のニュースをテキストや写真、動画などで照らし合わせてくれます。

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たとえば、ぼくは1990年生まれなのですが、トップにはネルソンマンデラの写真が表示されました。27年間を刑務所で過ごしたあと、1990年に釈放された出来事を知らせてくれます。スクロールしていくと、生まれたときから最近にいたるまで、世界中のニュースと関連づけられていました。イギリスの出来事と多く結びつけられてはいましたが、ニュースとの新しい出会い方、関心をもってもらう方法としては興味深いと思いました。

引き続き、テイスターにはニュースや話題のトピックを身近にしたり、目を向けてもらうための多くの実験的なアイデアが集まるのでしょう。試してみた後に評価することもできます。評価の高いものが実装されたり継続的なブラッシュアップの対象になることに期待したいです。

いまのところアップされているアイデアはどれもサービス的でした。ニュースというものを一度解体してみることで、ニュースの新しい遊び方/使い方/出会い方を演出することにつながり、さらには自分ごとにするためのアプローチが生まれていくのかもしれません。

BBCのアーカイブプロジェクト「BBC Genome」ーーテレビ・ラジオ・雑誌を整理してリスト化

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ローカルやモバイルに向かう動きを紹介したことがあるBBCについて、「BBC Genome」という取り組みを取り上げます。

これは一言で言えば、過去のテレビやラジオ放送などのアーカイブをリストで並べたもの。1923年〜2009年までのものについて情報を確認できます。

イギリスの週刊TVガイド誌「Radio Times」については、表紙カバーもそろっています。この雑誌については4469号分がアーカイブされているとのこと。

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このプロジェクトでは、テレビやラジオ、雑誌などが整理、リスト化されており、番組や日付などによって、検索することが可能です。

海外では、メディアをサービスとして捉えるという考え方も徐々に強まっていますが、アーカイブなどはまさにユーザーが使うことのできるものとして機能するのかもしれません。

ウェブ上での情報流通の速さを考えると、テレビやラジオ、雑誌などのアーカイブはスローな情報の部類なので、アーカイブとしての価値がありそうです。自分が生きていなかった時代のコンテンツや媒体の雰囲気をのぞけるのはいいなと思います。

メディアとアーカイブの取り組みについては、以下の記事もぜひ参照ください。 

メディアによるメッセージアプリ活用が加速する? BBC、LINE活用をスタート

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BBCメッセンジャーアプリ「LINE(ライン)」のアカウントを開設しました。 このようなアプリでニュースメディアは価値を生み出せるのかを見るべく、短い動画ニュースなどを配信したり実験的に利用している段階。

BBCは過去にインドにおいて「WeChat」と「WhatsApp」、ナイジェリアにおいて「BBM」を活用するなど、メッセージやチャットアプリの活用を摸索しています。

このようにアプリ内においてどのようにコンテンツを配信していくのか、というのはウェブ以降のメディア戦略として重要な視点となってきそうです。

先日、「BBCは『ローカル』『モバイル』に向かうーー『BBC Pop Up』とは?」という記事を書きましたが、そこでもソーシャルメディアやモバイルなどの活用には触れました。普段の暮らしに溶け込むLINEのようなアプリの活用はこの先の目指すところなのでしょう。

BBCの実験的な取り組みと言えばソーシャルメディア上の話題のニュースを拾う「#BBCTrending」や注目のストーリーをインスタグラムの15秒動画で発信する「BBCShorts」もあり6.3万人のフォロワーを抱えています。

現在は動画ニュースなどで様子を見ているようですが、速報ニュースをはじめメッセージやチャットアプリ内における価値の発揮の仕方はいくつかありそうです。 

動画ニュースサイトの幕開けとなるかーーハフィントンポスト共同創業者らが立ち上げたメディア「NOWTHIS NEWS(現:NowThis)」とは」で紹介したNowThisはスナップチャットを活用していたこともありました。若いユーザーにリーチしていくためにメッセージングアプリを活用するのはますます必要になってくる戦略になるのでしょうか。

LINEといえば、すでに4億ユーザーを突破し、年内に5億ユーザーを超えると見られています。現在は、企業ブランドの活用が進んでいますが、メディアやジャーナリズム領域での活用にも注目していきたいです。

 

【参照】 

BBC News launches account on instant messenger app Line | Media news

BBCは「ローカル」「モバイル」に向かうーー「BBC Pop Up」とは?

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イギリスの公共放送局BBC。どんどんローカルに、そしてモバイルを志向するようになっています。 

モバイルという意味では、BBCは最もツイートされるウェブメディアということも分かっているのです。月間に340万ツイートほどを記録しています。

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(出典:Newswhip

最近の取り組みでは、「BBC Popup」というモバイル向けの報道があります。まだ実験的なものですが、支局を置くのではなく、一時的なオフィスを開設し、その地域の報道を行っていくというもの。これから6ヵ月でアメリカ6つの町で実験していくとのこと。

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最初はコロラド州のボルダーの報道からスタート。これまで世界の主要都市のニュースを多くカバーしてきたBBCがローカルにも力を入れていくことは注目です。

この傾向について、AOLが失敗した「パッチ」というサイトも引き合いに出されています。

各ローカルサイトにはライター1人、広告営業1人を配置し、年間予算10万ドルで回す、というモデルで、最盛期に全米900サイト、1400人のスタッフを抱えた。

結果的に3億ドル(AOLは200億ドル以上と説明しているようだが)をつぎ込んだが、売り上げは一向に上向かず、今夏には350人以上を解雇、数百という単位でサイトを閉鎖していった。

AOLの「地域サイト」失敗から何が学べるのか | 新聞紙学的

BBCの実験的な取り組みと言えばソーシャルメディア上の話題のニュースを拾う「#BBCTrending」や注目のストーリーをインスタグラムの15秒動画で発信する「BBCShorts」もあり6.3万人のフォロワーを抱えています。

BBCのような大きなメディアが、モバイルやローカルに力を入れたり、実験的な取り組みを行っているのは印象的です。モバイルについては以下の記事も参考にしてみてください。

BBCニュース、2022年までに5億人の読者獲得を目指す?

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最近、ニューヨークタイムズ紙のイノベーションレポートが話題となっており、海外メディアを把握するのにぴったりです。 

Guardianの記事によれば、BBCもレポートを出したとのこと。その中では、BBCはほかの新興メディア(Vice MediaやBuzzFeed)よりも「特徴や個性」が足りていないと分析しています。

そのレポートの中では、2022年までに5億人の読者獲得を視野にいれ、デジタル戦略に注力してく、といったことも書かれているようです。

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(出典:newswhip

ちなみに、BBCツイッターでもっとも記事がツイートされている媒体です。しかしながら、それがトラフィックにつながっているかというと別問題。

上のグラフで9位のバズフィードは最高の月間トラフィックが1.6億PV、一方のBBCが1.5億と、及んでいない状況です。

2022年までに、スマホソーシャルメディア時代に適応したモバイルファーストを進めていくとのことなので、今後の具体的な施策実行が期待されます。

 

 

ソーシャルメディア時代の情報発信、ジャーナリズムにおいては、大手メディアが新興メディアから学ぶことは多くありそうです。もちろん逆もありますが。