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モバイル・ソーシャルに振り切る英新聞社「Trinity Mirror」の戦略

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伝統メディアも踏み出す、バイラルメディア立ち上げ」という記事でも紹介した、英新聞社「Trinity Mirror(以下、ミラー)」。モバイル・ソーシャルに焦点を当てた複数のメディアを運営しています。

4つの実験的なメディアで読者&売上も増えた

一番最初に手がけたのは、2013年5月に立ち上げた「Us Vs Th3m」というサイト。ユーモアやエンタメ色の強いコンテンツを展開し、若者読者に訴求することを目的としています。すでに300万人以上の読者が集まり、ネイティブ広告でマネタイズをおこなっているとのこと。

2つ目は、バイラルジャーナリズムの実験をおこなうメディア「ampp3d」。データやインフォグラフィックなどを用い、モバイルやソーシャルでも目につきやすいコンテンツを発信しています。こちらは2013年12月につくられたもので、ページを極力なくし、スクロールで読めるウェブデザインを採用。

そして、スポーツに特化したサイト「Mirror Row Zed」もあります。リスト記事などでモバイル・ソーシャル時代のコンテンツづくり、情報の届け方を摸索。また、新聞『The Sunday People』のデジタル展開も「thepeople.co.uk」というサイト上でおこなっています。

昨年5月から今年8月までの15ヵ月にわたる4つの実験的なサイトを運営してきたミラー。この半年のデジタルの売上は47.5%増の1490万ユーロ(約2510万ドル)となり、平均の月間ユニークユーザー数についても、91%増の6130万人を記録しています。

モバイル・ソーシャル・若者読者の獲得が新聞社の課題

若年層へのリーチ、モバイル読者へのリーチというミラーが抱えていた課題を解消するアプローチとして、実験的なサイトを打ち出してきましたが、新聞社だからこそこのようなことをやる意義が増しているのかもしれません。新聞のパッケージや、いわゆる「一面」も機能する機会は減っているでしょう(特に若者に対して)。

価値観や視点の多様さや、パーソナライゼーションが広がってきたいま、世論や共通の認識や常識が形成しづらくなっているような気がします。そのため、新聞の機能や意義が漸減しているかなと。

このような状況下では、新聞がその機能を果たしていくには、流通(読者)を確保することがひとつの答えになると思います。特に若年層であり、スマホユーザーでもあり、ソーシャルメディアに触れているような読者を獲得するには、キュレーションやニュースアプリ、まとめ記事(リスト記事)、クイズなどもヒントになるのかもしれません。

先日、日本新聞協会が発行する雑誌『新聞研究』8月号に「ニュース体験を考慮した発信を──今後の取り組みが戦略の『常識』をつくる」というコラムを寄稿させていただく機会がありました。そこでも少し、新聞社のモバイル対応について書きました。

ミラーでは、ソーシャル・モバイルに最適化するために、バイラル系の手法をとっていますが、多くの海外の新聞社はアプリでソーシャル・モバイル経由の読者を獲得しようとしています。またの機会にアプリなどについても取り上げたいと思います。

 

Trinity Mirror sees digital experimentation pay off | Digiday