「激変する音楽業界」と「新しいヒットの方程式」を探る本『ヒットの崩壊』
編集を担当した『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)が11月15日に発売されます(新書版240ページ)。Kindle版も昨日から予約がはじまりました。
著者は音楽ジャーナリストの柴那典さん。「激変する音楽業界」と「新しいヒットの方程式」をテーマに半年以上かけて取材と執筆、ようやく完成しました。
どんな本なのか?
激変する音楽業界、「国民的ヒット曲」はもう生まれないのか?
- 宇多田ヒカルの登場はJ-POPをどう変えたのか?
- 小室哲哉はどのように「ヒット」を生み出してきたのか?
- いきものがかり・水野良樹が語る「ヒットの本質」とは?
- オリコンは「AKB商法」をどう受け止めているのか?
- なぜ「超大型音楽番組」が急増したのか?
- 「スポティファイ」日本上陸は何を変えるのか?
- なぜBABYMETALは世界を熱狂させたのか?
- SMAP解散発表で広がった購買運動の意味とは?
「ヒット」という得体の知れない現象から、エンタメとカルチャー「激動の時代」の一大潮流を解き明かす。
テレビが変わる、ライブが変わる、ビジネスが変わる。
業界を一変させた新しい「ヒットの方程式」とは…?
誰に取材したのか?
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小室哲哉さん(音楽プロデューサー)
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垂石克哉さん(オリコン株式会社副社長/編集主幹)
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礒崎誠二さん(ビルボード・ジャパン)
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鈴木卓弥さん、高木貴さん(株式会社エクシング)
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浜崎綾さん(フジテレビ『FNS歌謡祭』総合演出)
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牧村憲一さん(音楽プロデューサー)
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鈴木竜馬さん(ワーナーミュージック・ジャパン執行役員/unBORDEレーベルヘッド)
【目次】
第一章 ヒットなき時代の音楽の行方
1 アーティストもアイドルも「現役」を続ける時代
- 「音楽不況」は本当か?
- CDは売れなくともアーティストは生き残る
- 「ブームはいつか終わるもの」だった90年代
- 「遅咲きバンドマン」が武道館へ
- 終わらなかった「アイドル戦国時代」
- 音源よりもライブで稼ぐ時代
- 失われた「ヒットの方程式」
- 10年代の前提条件
2 みんなが知っている「ヒット曲」はもういらない?
- 小室哲哉はこうしてヒットを生み出した
- タイアップとカラオケがもたらしたもの
- 「刷り込み」によってヒットが生まれた
- 宇多田ヒカルの登場と20世紀の大掃除
- AKB48とSNSの原理
- 動員の時代
- いきものがかり・水野良樹が語るJ-POPの変化
- 音楽は社会に影響を与えているか
- バラバラになった時代を超えるために
- 「共通体験」がキーを握る
第二章 ヒットチャートに何が起こったか
1 ランキングから流行が消えた
- 異様な10年代の年間チャート
- オリコンチャートからは見えない「本当の流行歌」
- 「音楽は特典に勝てない」
- オリコンはなぜ権威となり得たか
- 「人間の対決」が注目を集める
- ヒットチャートがハッキングされた
- そもそもCDを買う意味とは
- オリコンの未来像
2 ヒットチャートに説得力を取り戻す
- ビルボードが「複合チャート」にこだわる理由
- 「ヒット」と「売れる」は違う
- ランキング1位の曲を思い出せるか
- 懐メロの空白
- カラオケから見える10年代の流行歌
- 定番化するカラオケ人気曲
- 「J-POPスタンダード」の登場
- ヒット曲が映し出す「分断」
第三章 変わるテレビと音楽の関係
1 フェス化する音楽番組
- 東日本大震災が変えたテレビと音楽の歴史
- 各局で超大型音楽番組が拡大中
- フェス文化を取り入れて進化を遂げた
- 「入場規制」が人気のバロメーター
- スマホでフェスは好相性
- 制作者の意識はどう変わったか
- 「メディアの王様」ではなくなった
- 「音楽のお祭り」を作る
2 テレビは新たなスターを生み出せるか
- 狙いは「バズる」こと
- 人気を測る尺度が複数になった
- テレビの役割は「紹介」になった
- 『ASAYAN』以降の空白
- 世界的なスターは今もテレビから生まれている
第四章 ライブ市場は拡大を続ける
- ライブビジネスが音楽産業の中心になった
- 「聴く」から「参加する」へ
- 「みんなで踊る」がブームになった時代
- 時間と空間を共有する
- 前代未聞の「事件」がもたらしたもの
- アミューズメント・パーク化したフェス
- スペクタクル化する大規模ワンマンライブ
- ピンク・フロイドとユーミンがライブを「総合芸術」に変えた
- ライブの魅力は「五感すべて」の体験
- メディアアーティストがライブの未来を作る
第五章 J-POPの可能性――輸入から輸出へ
1 純国産ポップスの登場
- 洋楽コンプレックスがなくなった
- J-POPの起源にあった「敗北の意識」
- ニッポンの音楽の「内」と「外」
- 演歌も「舶来文化」から生まれた
- 『風街ろまん』が日本のロックの起点になった
- はっぴいえんどのイノベーション
- アメリカへの憧れと日本の原風景
- 洋楽に憧れない世代の登場
- J-POPが「オリジン」になった
- なぜカバーブームが起こったのか
- ブームの仕掛け人は誰か
- 大瀧詠一の「分母分子論」
2 新たな「日本音楽」の世界進出
- なぜBABYMETALは世界を熱狂させたのか
- 「カレーうどん」としての発想
- 「ミクスチャー」から生まれた発明
- 「過圧縮ポップ」の誕生
- 「パンク」としてのきゃりーぱみゅぱみゅ
- 原宿の元気玉
- 中田ヤスタカが作る次の「東京」
第六章 音楽の未来、ヒットの未来
- 過渡期の続く音楽業界
- 所有からアクセスへ
- 拡大するグローバル音楽産業
- 世界の潮流に乗り遅れた日本の音楽業界
- 変化を厭い「ガラパゴス化」していた
- この先に何が訪れるのか
- 音楽を“売らない”新世代のスター
- アデルの記録的成功
- 「ニッチの時代」は来なかった
- ロングテールとモンスターヘッド
- サブカルチャーとしての日本音楽
- 小室哲哉の見出す「音楽の未来」
- unBORDEの挑戦
- 健全な「ミドルボディ」を作る
- 水野良樹が語る「ヒットの本質」
- 「歌うこと」が一番強い
- 音楽シーンの未来
というわけで、『ヒットの崩壊』をよろしくお願いいたします!
本書内では、個人的にずっと関心を寄せている、インターネットやソーシャルメディア普及後の世界的な課題である「フィルターバブル」にも触れています。
ヒットという得体の知れないものに向かい合ったルポルタージュなので、コンテンツを生み出す側、楽しむ側どちらにも発見がある読み物になったと思っています。