海外ウェブメディアの現在地 〜新興メディアの視点と大手メディアの実験〜
僕の追いかけているテーマに新興メディアの視点と大手メディアの実験があります。以前以下のような記事を書いたことがありますが、
注目の新興メディア12選
まず紹介するのが、新興メディアの視点。いま、知っておきたい視点を持つ12のメディアを紹介します(バイラルが多めです)。
- BuzzFeed
- Upworthy
- Distractify
- ViralNova
- FaithIt
- NowThis News
- Newsy
- Policymic
- OZY
- The Verge
- Re/code
- First Look Media
1. BuzzFeed
「月間読者8500万人を超えるサイト「バズフィード」に見る、これからのウェブメディアに重要な7つのポイント」という記事でも紹介したバイラルサイト「BuzzFeed(バズフィード)」。
グローバル展開を進めているバズフィードは、10月にフランス、スペイン、ブラジル(ポルトガル語)の各国版を公開し、翻訳プラットフォームも活用しながら、非英語圏へのさらなる展開が注目されています。
ただのバイラルメディアではなく、ピューリッツァー賞受賞記者を率いて調査報道を行ったり、長文記事にも注力したりとそのジャーナリズム手法にも期待されるところ。さらに、マネタイズに関しても昨年600〜700本ほどのスポンサードコンテンツを制作し、6000万ドルの収益を上げています(来年は1.2億ドルの見通し)。
2. Upworthy
昨年一番注目を浴びたウェブメディアというと、「Upworthy」かもしれません。
2012年3月の設立以来、右肩上がりで成長し、現在では約9000万人ほどの月間読者を獲得しています。50名以上のキュレーターでコンテンツを制作しているので、1人当たり月間200万人をサイトに呼び込んでいる計算になりますね。
マネタイズに関しても、ゲイツ財団とのスポンサードコンテンツを展開し、世界の健康に関するトピックを発信してます。今年もさらに注目していきたいです。
3. Distractify
2013年10月に20歳が立ち上げ、1ヵ月後に月間ユニークユーザー数が2100万人を記録したことでも話題となったウェブメディア「Distractify」。
その後、デザインも洗練されていき、現在1.3億人ほどの月間読者を抱える「BuzzFeed(バズフィード)」を追いかけるメディアとしてかなり注目しています。記事コンテンツは、バズフィードでもおなじみの動物まとめなど、リスト型の記事が多くを占めています。
先行するバイラルメディアの流れに乗って立ち上がりましたが、3300万ページビュー、流入の9割がFacebookからとなっています。メディアを立ち上げた20歳のQuinn Huは、Youtubeクリエイターとして活躍後、同メディアををつくりました。
チームは3人からスタートし、現在は編集者やクリエイティブ周りの人材も加わり、7名体制で運営しているようです。今後力を入れていくネイティブ広告や、かねてから言っているオリジナルの記事発信についても楽しみです。2014年、どれだけ成長し、大手メディアを脅かす存在になるのでしょうか。
4. Viralnova
2013年5月頃に始まったバイラルメディア「ViralNova(バイラルノバ)」は、運営者が分からない謎のメディアですが、ソーシャルメディア上での存在感が出ています。
「人々がシェアしてくれるようなストーリーを投稿する」というミッションを掲げ、まとめ記事やおもしろ系記事を武器に、650万訪問数、3000万ページビューを記録しています。
Facebookページのいいね!数は90万を超え、さらなる成長が期待されるメディアです。
5. FaithIt
クリスチャンをターゲットにした「FaithIt」も注目のバイラルメディアです。
以下は直近1カ月くらいのトラフィックですが、月間2000万人近い訪問数、3000万PVほどとなっています。モバイルからの流入も多いですね。
Upworthyのコピーメディアが2014年にどの程度影響力を増して、どのようにマネタイズ戦略を練っていくのかは注目すべき点だと思います。
6. NOWTHIS NEWS
ハフィントンポストを共同創業し、バズフィードの会長を務めるケン・レーラーがつくった動画ニュースサイト「NOWTHIS NEWS(ナウディス・ニュース)」。
2012年秋に立ち上がったこのサイトは、40名ほどの編集チームで毎日20〜25本の動画ニュースを配信しています。スマホ時代、ソーシャル時代のニュースを目指し、Vine(ヴァイン)、Instagram(インスタグラム)などを活用した細かいニュースコンテンツも任意となっています。
2014年は、インスタグラムやヴァインを活用したニュース発信が盛んになるような気がしていますね。
7. NEYSY
こちらも動画ニュースサイト「NEWSY(ニュージー)」です。
国際、政治、ビジネス、テック、エンタメ、科学、医療、スポーツなど実に幅広いトピックに関する1〜2分のサイズの動画ニュースを毎日発信しています。ニュージーは2008年に立ち上がり、ニューヨークタイムズやハフィントンポスト、CNN、ABCニュースなど幅広いメディアを参照し、それらのソースをもとに動画ニュースを制作しているのです。
海外における動画ニュースサイトが勢いがあるので、日本でもコストをかけて動画ニュースをつくるメディアが生まれると面白いなと思います。
8. Policymic
2011年に立ち上がった「Policymic」。次世代向け、若者向けのメディアとして成長しており、現在、約1000万訪問数あたりとなっています。
ハーバード大学とスタンフォード大学出身者が立ち上げたウェブメディアとしても注目を集めていました。政治トピックを中心にアートやエンターテイメント系のコンテンツを交えて発信しており、デザインのリッチさも相まって若い人に受けるようなメディアとなっています。
若い世代の議論の場としても機能させるために、独自のコメントシステムを導入しています。サイトでは「Mics」という仮想通貨を用います。最初は0Micsしかなく、コメントも300語以内に限られていますが、議論に対して有意義なコメントをすると、通貨がもらえたり、より長いコメントができるようになるという仕組みです。
また、2013年3月にはユーザー行動についてのアナリストも採用しており、その時の400万UUから5月には700万UUまで成長させ、いまでは上記のように1000万ほどまで育っています。
「政治×◯◯」というメディアでは、Facebook共同創業者のクリスヒュージが買収し、編集長を務める「The New Republic」における「政治×カルチャー」に続くものとしても注目です。政治単体を扱うメディアよりは、若者が惹かれるようなカテゴリーとかけあわせた政治メディアの必要性はあるかもしれません。
9. OZY
出資者にスティーブ・ジョブズ夫人のローレン・パウエルがいることでも注目を集めている新世代のウェブメディアが「OZY」です。
マッキンゼーを経て、MSNBCのアンカーを務めていたカルロス・ワトソン氏が立ち上げたこのメディアは、1981~2000年頃に生まれた人を指す「ミレニアル世代(Millennials)」をターゲットに、情報を発信。
2013年9月にローンチしたばかりですが、1日10本ほどの質の高い記事(時にかなり長文)が更新されています。彼は2009年に「The Stimulist」というニュースサイトを立ち上げた経験もありますので(同年運営終了)、OZYのメディアづくりを楽しみにしたいです。
これまでに540万ドルほどの資金調達をしており、40名ほどのチームで運営しています。昨今のファストなニュース作成とは差別化するため、「Thoughtful(思慮に富んだ/思想の豊かな)」な記事作成を心がけているとのこと。
個人的にデザインや記事のテイストが好きなので、注目していきたいです。
10. The Verge
新興メディアカンパニーのVox Mediaが2011年11月に立ち上げたテックメディア「The Verge」。リッチなウェブデザインが特徴的です。
ガジェットサイト「Engadget」編集者だったJosh Topolskyを編集長に迎えてスタートしたメディア。長文記事(LONGFORM)や動画コンテンツについてもかなり力を入れているので、これまでのテックメディアよりも色んな方向への挑戦をしているメディアという印象が強いです。
昨年の2年目を振り返った大々的なページもありますので、のぞいてみると代表的な発信内容が分かります。The Verge以外にも、ウェブメディア好きな方は、「Vox Media」の運営するサイトはどれもチェックすると参考になることが多いと思います。
11. Re/code
ウォールストリートジャーナル傘下のテックメディア「AllThingsD」を支えていた、ウォルト・モスバーグ氏とカラ・スウィシャー氏が今年立ち上げた、新テックメディア「Re/code」。
ウォールストリートジャーナルでは「AllThingsD」をリニューアルし、「WSJD」となっています。Re/codeでは、テックニュースやレビューに加え、AllThingsDで行っていたようなカンファレンスを「The Code Conference」として行っていくようです。
また、AllThingsD時代からのブロガー/ライターも新メディアに参画しているので、2014年注目のテックメディアとしてぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
12. First Look Media
やはりはずせないのが、イーベイ創業者ピエール・オミダイア氏が立ち上げているメディア「First Look Media」です。CIA元職員エドワード・スノーデン氏の事件でも知られている英国ガーディアン紙の元コラムニスト、グレン・グリーンワールド氏が参画し、その他にも著名なジャーナリストが参画を発表しています。
ドキュメンタリー映画制作者ローラ・ポイトラス氏、調査報道記者ジェレミー・スケイヒル氏、ローリングストーン誌編集者エリック・ベイツ氏、ニューヨーク大学教授ジェイ・ローゼン氏、ハフィントンポストのワシントン特派員だったダン・フルームキン氏、The Nation誌編集者リリアーナ・セグラ氏、ジャーナリストRyan Devereaux氏、ガーディアン紙やアルジャジーラのライタームルタザ・フセイン氏、ブルックリン在住ライターのアンドリュー・ジャレル・ジョーンズ氏、非営利組織「電子フロンティア財団」で科学技術者だったミカー・リー氏など、続々とメンバーが増えています。
「First Look Media」は、政治、スポーツ、エンタメ、ライフスタイル、アート、カルチャー、ビジネス、テクノロジーなどの幅広いトピックをカバーするとともに、調査報道にかなり注力していくようです。
立ち上げるサイトは非営利(NPO)として運用し、一方で"メディアテクノロジー"を基軸とした会社も創業する予定とのことで、営利と非営利のメディア会社として経営される予定です。おそらく今年リリースされることになると思うので、目が離せないウェブメディアになります。
海外における新興メディアの特徴や傾向
今回紹介した新興メディアの大きな要素を出してみるとおおよそ以下のようになります。
- ソーシャル&バイラル
- 暇つぶし
- コンテンツキュレーション
- 調査報道(もしくは長文記事)
- 政治×◯◯(カルチャーやアート、エンタメ)
- 動画ニュース(テキストからのシフト?)
- 大手メディア出身者による少数精鋭チーム
- 富豪たちによる参入
「ソーシャル&バイラル」は前半で取り上げたようなBuzzFeedやUpworthy、「暇つぶし」はDistractifyやViralNova、「コンテンツキュレーション」もバイラル系が当てはまりますね。「調査報道」はFirst Look MediaやThe Vergeなど。「政治×◯◯」はPolicyMicやOZYなどですね。
「動画ニュース」はNowThis NewsやNEWSYの流れがあります。「大手メディア出身者による少数精鋭チーム」はRe/Code、「富豪たちによる参入」はFirst Look Mediaや新興メディアではありませんが、アマゾンCEOのジェフベゾスが買収したワシントンポストなども注目ですね。
大手メディアの実験12事例
続いて紹介するのが、大手メディアの実験について。以下、12の事例を取り上げています。
- Washington Post : Knowmore
- Atlantic Media : Quartz
- The Guardian : GuardianWitness
- The Guardian : #guardiancoffee
- The Guardian : Long Good Read
- The New York Times : TimesMinite
- BBC : BBC Worldwide Labs
- CNN : Scenes From the Field
- CNN : CNNBuzzFeed
- The Mirror : Us Vs Th3m
- The Mirror : Ampp3d
- Condé Nast : COLLEGE OF FASHION & DESIGN
1. Washington Post : Knowmore
ワシントンポスト紙は、1990年代以降のネット普及によって、新聞は売れなくなり、この6年間を見ても新聞部門は44%もの営業利益の減少という現状。さらには、オンライン版も今年のデータだけでも7%減少となっています。
そんな状況で、2013年10月7日に新しいキュレーションメディア「Know More」を立ち上げました。ワシントンポストの政策ブログ「Wonkblog」のスピンオフメディアとしてはじまったのです。
知識や好奇心の入り口となるようなメディアとなっていて、チャートやグラフ、写真に少しのテキストを加えたものがコンテンツとなっています。運営はWonkblog編集のEzra Klein(エズラ・クライン)氏とライターのDylan Matthews(ディラン・マシューズ)氏の2名体制です。
基本的に外部の媒体からキュレーションしてきたもので、詳しく知りたいときは「Know More」ボタンで外部サイトに行き、別に知りたくない場合は「No More」ボタンで記事を閉じることができます。シンプルな1枚のコンテンツで、ツイートボタンとシェアボタンのみの設置でソーシャル上へのシェアを促すような設計になっています。
11月にはライターのマシューズ氏が、ワシントンポスト発行人からの「Publisher’s Award」を受賞。「Know More」はワシントンポストのブログの中でもトップレベルのアクセスを稼いているそうです。
しかし、クライン氏やマシューズ氏がワシントンポストを去り、デジタルメディアを手がける「Vox Media」に移籍し、新メディアを立ち上げることが発表されました。これからどのようになっていくのかは気になるところです。
2. Atlantic Media : Quartz
Atlantic Mediaが2012年に打ち出した新しいビジネスメディアが「Quartz(クオーツ)」です。
ストリーム(タイムライン)型を採用している点や、ネイティブ広告でマネタイズを行っている点、パラグラフごとにコメントができる点など特徴的な部分が多くあります。また、速報はアグリゲーションでカバーし、特集記事に注力している魅力的なメディアです。
『クオーツ』は「オブセッション」という方式を取っている。常時、重要トピックを1ダースほど設定し、集中的に詳しく伝えている。これは雑誌スタイルとも言える。そしてまた、「クオーツ・カーブ」という編集哲学に基づき、記事を送り出している。
アメリカの新聞の平均的な記事の長さは、紙面の上から下までの一段の記事で、語数にして700語台である(日本語に訳すと2千数百字になる)。だが、『クオーツ』は、500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化している。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
以前、記者に「専門分野」は求められなくなるのか? 「Quartz」が志向する未来のメディア像という記事でメディアの掲げる思想の一つを取り上げましたが、メディア設計やメディア体験について参考になることの多いメディアです 。
3. The Guardian : GuardianWitness
ガーディアン紙が2013年春にオープンジャーナリズムのプラットフォームとしてリリースしたのが「GuardianWitness」です。読者を含め、一般市民からの情報提供を受け、それをニュースにするというもの。
ガーディアン側のテーマに沿って、利用者が画像や動画などを投稿することで、市民ジャーナリズムを摸索しようとしていました。やはりリアルタイム性をもったニュースソースや多様な視点などが得られる点でも素晴らしい仕組みでした。
しかしながら、現在はおそらくサービス提供が終わっているのが残念です。国内でも、「8bitnews」などは非常に近いミッションを掲げているように思います。
4. The Guardian : #guardiancoffee
#guardiancoffee from MohawkHQ on Vimeo.
2013年5月にガーディアン紙が手がけたのは、ロンドンにカフェ「#guardiancoffee」をつくるということでした。ジャーナリストや編集者、写真家などが集まり、仕事や打ち合わせなどを行うスペースとして活用されているそうです。
かつてのコーヒーハウスではないですが、「メディア×場(づくり)」は今後増えていくかもしれませんね。日本でも、本の街神保町のワーキングラウンジ・イベントラウンジEDITORYなどは先進的だと思います。
Guardian Coffee - Nude Espresso - London, United Kingdom
5. The Guardian : Long Good Read
こちらもガーディアン紙の取り組み。個人向けの(電子)出版サービスを提供している「Newspaper Club」とコラボし、自動のニュース収集でつくる無料新聞「The Long Good Read」を発行したのです。
これは、発行1週間前までにガーディアンに掲載されているインタビューなどを含めた長めの記事を中心に、自動でニュースを収集。その中から、特定のアルゴリズムに基づいてレイアウトも決定し、小規模でプリントされるというものです。
第1号は2013年11月4日に発行されました。実際に上で紹介したカフェでは、毎週月曜日に24ページほどの無料タブロイド版として手に入れることができるとのこと。
この取り組みの背景には、毎日数えきれないニュースが生まれている中で、長文記事(ロングフォーム)どうしてもが過ぎ去っていく状況がありました。そのコンテンツを再利用するというシンプルなものです。
過ぎ去っていくニュースの中でも、紙の新聞でも手にとって読んでもらいたい、そのようなコンテンツを「The Long Good Read」では提供しているようです。
自社のコンテンツを自動で収集し、プリント、配布まですることは、将来的なアグリゲーションの可能性を考える上でも重要な取り組みだと思います
6. The New York Times : TimesMinite
2013年秋、ニューヨークタイムズ(以下、NYT)が1分動画ニュース「The New York Times Minute」をスタートしました。1日のニュースをまとめて1分で観ることができるというもので、3本に絞られてた重要なトピックを知ることができます。
流れる時間は平日の朝6時、昼12時、そして夜6時。NYTの編集者の方も動画が急激に伸びていることや動画が報道において重要なこと、さらにはユーザーがすぐニュースを把握したいというニーズもしっかり認識しているようです。
デジタルメディアとして今後さらに増えているスマホやタブレットユーザーに対するコンテンツとしても1分であればありかもしれません。スタート時のスポンサーには、マイクロソフト社がつき、バナー広告と動画広告を展開しています。
The New York Times News Minute - NYTimes.com
7. BBC : BBC Worldwide Labs
2013年秋にBBC Worldwideがスタートした「BBC Worldwide Labs」。テック系系スタートアップ企業に対して事業支援するプログラムです。BBC Worldwide社内外のリソースやネットワークを活用し、事業支援をするというもの。
オフィスを無償で利用できたり、月に1度メンターからアドバイスをもらえたりと、大手メディアのスタートアップ支援という興味深い形がうまれています。
BBC Worldwide LABS | DIGITAL MEDIA START-UP ACCELERATOR
8. CNN : Scenes From the Field
CNNは、世界中の取材班やジャーナリストがInstagramに投稿した画像を掲載するプラットフォーム「Scenes From the Field」を立ち上げました。CNNのニュースで取り上げないような現地の風景などを利用者が見ることができ、違った形での情報発信・現象理解を狙っています。
将来的には、画像だけでなく、動画もキュレーションしていくとのこと。CNN以外でもBBC Newsも今年に入ってInstagramを積極的に利用し始めています。大手メディアのVineやInstagramはより盛んになっていくことでしょう。
Scenes from the field - CNN.com
9. CNN : CNNBuzzFeed
CNNでは2013年春から、月間読者1.3億人以上を抱えるBuzzFeed(バズフィード)とタッグを組み、YouTubeチャンネル「CNNBuzzFeed」を開設しています。そこでは、毎週1本のペースでコンテンツをアップされています。
登録者は3万人を超え、約600万回再生を突破。1分ほどのニュースサマリーから、30分を超えるようなインタビューまで、多様なコンテンツを実験しています。これは旧メディアと新メディアの融合として注目ですが、BuzzFeedはオリジナルのチャンネルも持っているのです。ネットワークの合計は7億回再生を超えるほどです。
10. Trinity Mirror : Us Vs Th3m
100年以上の歴史を持つ「Trinity Mirror」が、2013年5月に立ち上げた実験的なメディアが「Us Vs Th3m」でした。若い読者層(18〜30歳)を取り込むため、ユーモアやエンタメ色の強いコンテンツを展開しています。
「Us Vs Th3m」は、BBCやガーディアンにいたMartin Belam(マーティン・ベラム)氏やMSN Internationalの編集者だったTom Phillips(トム・フィリップス)氏、そして「B3ta」というユーモアサイトをつくったRobert Manuel(ロバート・マニュエル)氏らによって立ち上げられました。
モバイルやタブレットで読んでもらうことを想定しており、コンテンツなどはBuzzFeedなどを参考にしているとのこと。SEOは意識せず、ビジュアル重視、ストリーム型、そして実用最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)などをコンセプトの中心に据えています。
2013年10月には300万人以上の読者が集まるメディアに育っているのだとか。バナーではなく、ネイティブ広告がマネタイズの手法となっていくようです。また、Tumblrを使っているところも実験的なポイントかもしれません。
11. Trinity Mirror : Ampp3d
こちらもTrinity Mirrorがリリースしたメディア「ampp3d」です。バイラルジャーナリズムの実験としてつくられたメディアで、データやインフォグラフィックなどを用いた情報発信を行っています。
12月にできたばかりですが、着想から2カ月ほどでできたそう。キレのいいタイトルや、感情的なコンテンツもあり、シェアを多く狙っているようです。
データジャーナリズムの実験、そして実践の場として機能しそうなメディアでとても注目しています。
12. Condé Nast : COLLEGE OF FASHION & DESIGN
WiredやGQ、VOGUEなどの雑誌を発行していることでも知られるコンデナスト社。2013年春には、「コンデナスト・カレッジ・オブ・ファッション&デザイン」という学校をロンドンでスタートしました。
特にファッション分野で多様で専門的な知識を持っている同社がファッション教育に参入していくことは驚くことではないかもしれません。1期生は45ヵ国の学生から応募があり、最終的に23ヵ国から入学する生徒が集まりました。
修了生には「Vogue Fashion Certificate」という修了証明書が発行されるので、今後さらなる注目が集まっていくことでしょう。メディアのマネタイズ手段としての「スクール」は増えていくと思います。
The Condé Nast College - London's Newest Fashion College
大手ウェブメディアの実験から何が見えるのか?
以上、海外における大手メディアの12の実験的事例を見てきました。今回取り上げた実験の要素に関しては、おおよそ以下のあたりにまとめることができそうです。
- バイラルメディア
- ストリーム型
- オープンジャーナリズム
- メディアコミュニティ
- 短い動画ニュース
- 自動ニュース収集
- メディアスタートアップ支援
- 新興メディアとのコラボ
- データジャーナリズム
- スクール
12の事例だけでも、海外の大手ウェブメディアが手探る未来が少し見えてくるような気がします。もちろん上記の要素は大手メディアだけでなく、新興メディアなどこれから立ち上げるメディアにとっても重要な視点となることでしょう。
以上、大手メディアの実験と新興メディアの勃興についてお伝えしました。今後のメディアづくりの参考になればと思います。