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プラットフォームによる新しい指標づくりが重要ーー「Medium創業者エヴァン・ウィリアムズの7つの教訓」を読んで

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 WIRED.jpに掲載されていた「Mediumをつくった男、エヴァン・ウィリアムズの7つの教訓」という記事が非常におもしろかったです。月間MAU2500万人を超えるというこのプラットフォームでは「書き手と読み手のための最高のツールをつくること」を重視しているそう。

ここで挙げられている7つの教訓は、一つひとつ考えさせられるものでした。

  1. アクセス解析は、最も知らなければいけないことを教えてくれない
  2. 人々が互いに話しかけるのを助けるのは、思ったより難しい
  3. しかし、人々が互いに礼儀正しくするのを助けるのは、思ったより簡単だ
  4. オンラインでの礼儀正しい会話を生むためのカギは、ソーシャルツールを適切なものにすることだ
  5. プラティッシャー(platform+publisher)
  6. 人々はより少ない読者に向けて発表するときに、より多くを書く
  7. 書き言葉は、最も影響力のあるメディア形式だ

プラティッシャー「Medium」が重視する指標

アクセス解析は、最も知らなければいけないことを教えてくれない」「プラティッシャー」「人々はより少ない読者に向けて発表するときに、より多くを書く」の3つを取り上げてみます。

まずは、「アクセス解析は、最も知らなければいけないことを教えてくれない」ということ。Mediumでは、「TTR」(Total Time Reading)という指標を用いて、ページの閲覧時間を重視しています。

このようにページビュー以外の指標を掲げ、プラットフォームの世界観とセットで打ち出していくのは、いちメディアが滞在時間を重視します、ということよりだいぶインパクトのあることでしょう。そのため、メディアが新しい指標を設けていくことはもちろん、プラットフォーム側がルールを書き換えていく動きにも注目していきたいですね。

次に、パブリッシャーとプラットフォームと掛け合わせた造語プラティッシャー」について。この考え方は、腑に落ちる部分もあるのですが、独立したパブリッシャーや独立したプラットフォームと比較すると意外と成功事例は少ないように思います。海外ではフォーブスが大量のブロガー活用をしたり、ヤフーがジャンル特化型のメディアをつくったり、さまざま動きがあります。実際、Mediumでも、いくつかのメディアを立ち上げています。

おそらく短期的にはプラットフォームがパブリッシャーに寄っていくのが目立つと思うのですが、逆のほうがインパクトがあるのではないかと考えています。はっきりと言語化はできていませんが、以前書いた記事にも通じるところがありそうです。

満足と期待に対する課金、そのバランス

人々はより少ない読者に向けて発表するときに、より多くを書く」というのは、コミュニティとも結びつく発想です。ページビューを稼いで広告で稼ぐ、よりも小さく密な読者に向けてじわじわを広げていくようなモデル。

最大公約数というよりは、最小公倍数から攻めていく。ローカルやニッチ、専門性・・・ネット上の情報の切り貼りで完結しない、一次情報を発信するメディアはこのような考えが多くなっていくのではないでしょうか。特に課金においては、満足に対する課金、期待に対する課金、そのバランスが重要になるのではないかと思います。

エヴァン・ウィリアムズの7つの教訓は、メディアにかかわる立場(ライター/編集者、メディア/プラットフォーム、コンテンツ/広告(営業))や、メディアのかたち(広告型/課金型など)によって強く共感したり、ピンとこなかったりするのだと思います。「書き言葉は、最も影響力のあるメディア形式だ」と言えるのはとても強いです。