伝統メディアも踏み出す、バイラルメディア立ち上げ
海外では、伝統メディアもソーシャルからの流入を目指して、バイラルメディアを立ち上げる事例も出てきています。今回は3つの事例の紹介です。
ワシントンポスト:KnowMore
ワシントンポストが昨年10月にスタートした「Know More」というメディアがあります。大手/伝統メディアによるバイラル/キュレーションの取り組みにおいて、早い方だったと思います。
手がけたのは、ウォンクブログという政策ブログで執筆していたコラムニストのエズラ・クライン氏とライターのディラン・マシューズ氏の2名。コンテンツは、外部の媒体からキュレーションし、詳細が気になる場合は「Know More」ボタン、知りたくない場合は「No More」ボタンで記事を閉じるという仕組み。
さまざまなトピックの知識や情報の入り口となるようなサイトです。なお、エズラ・クライン、ディラン・マシューズの両氏は現在、ヴォックスメディアにて、ニュース解説メディア「ヴォックス」を立ち上げ、運営しています。
ミラー:Us Vs Them
100年以上の歴史を持つ英トリニティ・ミラーが立ち上げたのは、「Us Vs Th3m」という実験的なサイト(2013年5月設立)。若い読者層をターゲットに据え、ユーモアやエンタメ色の強いコンテンツを展開しています。
BBCやガーディアンにいたマーティン・ベラム氏やMSN Internationalの編集者だったトム・フィリップス氏、そして「B3ta」というユーモアサイトをつくったロバート・マニュエル氏らによって立ち上げられました。Tumblrを使っているところも特徴的。
モバイルやタブレットを意識し、ビジュアル重視、ストリーム型なメディアです。すでに300万人以上の読者が集まるなど実験の域を抜けるようなものとなっています。
インディペンデント:i100
英インディペンドが立ち上げたのが、「i100」というサイト。今月スタートしたばかり。
スマホにも適応した、クオーツ型のタイムラインの形式をとっています(右カラムには100本の記事がリストとなっており、右側にはストリームでコンテンツが掲載されているという形)。インディペンデントのもつ「i Newspaper」からインタラクティブやチャートなどウェブで活用できるコンテンツを再パッケージ/記事化するというもの。
また、「Upvote」ボタンもついていて、読者による投票が、100本の記事のランキングを左右します。伝統メディアが、デバイスや関心が全く違う読者層(若年層)にアプローチする手段としてこのようなサイトを別ブランドとして立ち上げるのはアリだと思いました。
今回の3つのほか、1998年設立のジ・オニオン(社会風刺メディア)もClickHoleというサイトを立ち上げたりしています。BuzzFeedやUpworthyなどを中心としたバイラルメディアの基礎知識については、スライドを参照ください。
英フィナンシャル・タイムズの中間報告書から分かる3つのコト
2014年も半分以上が過ぎ、さまざまな中間レポートが出されています。今回は、メディアコングロマリットのピアソン社のレポートから、ファイナンシャル・タイムズに関することをいくつか紹介したいと思います。
1. 購読者は成長(デジタルは順調)
まずは部数。前年比で13%成長で、紙とデジタルの合計購読数は67.7万人とのこと(中央銀行などの法人購読数は29万)。デジタルは33%成長と順調で、45.5万購読数を突破しています。
2. アプリ戦略でモバイル読者が半数に
著者をフォローしたりコメントできるニュースアプリ「FT Weekend app」をはじめ、アプリ戦略も進んでおり、現在ではデジタル読者の半数はモバイルとなっているそうです。このため、モバイル広告は前年比9%増となっています。
3. 多くのビジネススクールが活用
また教材としてのフィナンシャル・タイムズという側面もあります。「FT Newslines」などの学校での導入数は300を超えているとのこと。世界のビジネススクールトップ50校のうち3分の2で活用されているのだとか。
以上、3つのことをさくっと紹介しました。ピアソン全体での純利益はこの半年で2.2億ユーロ(3.8億ドル)で、昨年より800万ユーロ減。売上も6.5%減で、20億ユーロとのこと(売上の6割は北米から)です。時間のあるときに目を通しておきたい中間報告だと思いますので、興味のある方はぜひ。