メディアの輪郭

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コンテンツやコミュニケーションの決定権が受け手にある時代、それでもメディアで人を動かしていくためには?

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(Photo by Aleks Dorohovich/Creative Commons Zero

「盲目的なメディア横断×リーチ拡大志向は誤り」

ブルーカレント・ジャパン代表の本田哲也氏と、LINE株式会社 上級執行役員の田端信太郎氏による共著広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』という本を読みました。1000人、1万人、10万人、100万人、1000万人、1億人、10億人それぞれの動かし方について書かれており、考え方など参考になることが多いです。

本書冒頭のほうでは「盲目的なメディア横断×リーチ拡大志向は誤りだ」とあり、マスメディアの接触時間が減り、インターネットのそれが増加している現状が指摘されています。そういった環境下では、予算を多く持たない小さな事業者や個人にもチャンスが広がるということです。

また、コンテンツの接触について、決定権(編集権と編成権)が消費者サイドに移っている、という田端氏の指摘も重要です。ドラマを録画で見たり、ニュース記事をニュースアプリで見たり、といったことは増えているかと思います。リーチについてのゴルフの例えも秀逸でした。

  • 必要なリーチの規模=ティーからカップまでの距離
  • ターゲティング精度は高いがスケールの小さいメディア(例・検索連動広告)=パター
  • リーチを稼げるが、精度は悪いメディア(例・テレビCM)=ドライバー

人を動かすには「心技体」が重要

規模別の動かし方については、特に100万人以上のものが興味深かったです(普段そんな機会がないので)。100万人ではネスカフェアンバサダー制度など魅力的なラベリングを発明し、かつ、承認欲求を満たすこと。1000万人では皇居ランなど、メディアを介さない目撃体験や、すでにあるものを再定義することで多くの人を巻き込むとしています。

さらに1億人では人が動く複数の要素が必要となり、新たな習慣を生み出すことなどがポイントとされ、ハロウィンなどが事例として挙げられていました。10億人となるとあまりイメージができませんが、LINEを例にコミュニケーションなど本能に訴えかけることやユニヴァーサルな欲求にも応えることが必要になるとのことでした。

それぞれの規模での人の動かし方を簡単に紹介しましたが、実際のところなかなか人を動かせない時代です。本田氏は「(これまでのように)広告やメディア(だけ)で(たくさんの)人を動かそうとするのはもうあきらめなさい」と書籍タイトルを補足し、心技体が重要としています。

  • 心=人の気持ち、感情、本音(インサイト
  • 技=メディアやコンテンツの戦略と戦術
  • 体=体験、体感

特に、リーチしたい規模に対してどのようなメディアが最適なのかを配置した「技のゴルフクラブ」という図(213ページに掲載)は必見もの。各メディアをコントロール/アンコントロールという軸で見ることもできるので重宝しそうです。

広告やメディアであきらめないほうがいい4つのこと

また、広告やメディアに関して「あきらめないほうがいいこと」も心に残っています。「人の本音(生活者のインサイト)を探求する」「ありのままを見せ、ある程度の判断を世の中に託す」「広告やメディアが本当の力を発揮する、最適な組み合わせを見出す」「世に溢れる情報の中に、あなたの商品やサービスの良さにつながるものがあると信じる」の4点。

常に自分が選択しようとすることを信じながらも、適度に自己否定しつつ、読者(消費者)に決定権があることを認識し、最適解を探していきたいです。

あとがきには「価値のないモノは増幅されない時代」という言葉も見られました。先日、「コピーできないウェブコンテンツづくりに必要な考え方とは? 『WIRED』創刊編集長ケヴィン・ケリーの視点」という記事で紹介したコピーできない価値(即時性、個人化、解釈、信憑性、アクセスしやすいこと、具体化、後援、見つけやすいこと)と合わせてチェックしていただけたらと思います。

  

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