読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

メディアの輪郭

更新するだけ健康になれる気がしています

プラットフォーム優位の時代、コンテンツ側はどう考えればよいのか?

メディア 編集 プラットフォーム コンテンツ

川上量生さんが書かれた『鈴木さんにも分かるネットの未来』(岩波新書)を読みました。この本はネットとはなにか、その真の姿や未来について書かれたもの。特に印象的だったのは、コンテンツ側がいかにプラットフォーム側と付き合っていくのかという点です(ほかにもテレビの未来やビットコイン人工知能などについても述べられています)。

ネットのムーブメントも”まだ”テレビが起こす

まず前提として、ネット時代には紙媒体と違い、制作から流通までのすべてのプロセスを持つことができなくなりました。端的に、流通部分におけるネットやプラットフォームの影響力が大きくなってきたからです。

ネットで従来のマスメディアのビジネスが危機を迎えている根本的な理由は、独占していた情報の流通経路がネット企業に奪われ、情報の発信者としては個人とすら競争しなければいけないという完全自由競争のなかに放り込まれたからです(47ページ)

それでもSNSなどのプラットフォームやネットメディアは、プロモーション媒体としてまだマスメディアに負けているようです。本書では「Facebook発のヒット商品とかブームとかが生まれにくい、プロモーション媒体になりにくい」とも書かれており、いまだにマスメディアが重要だとしています。

ネットメディアにおいても口コミを喚起するための正当な宣伝手法はマスメディアを使うことなのです。そしてネットには、まだテレビほどの巨大な影響力のあるマスメディア的なものは存在していないのです。これが、いまだにネットのムーブメントを起こすのにもテレビがもっとも重要なメディアである理由ですし、また、テレビをまったく見ないような若い世代に対してはなかなか有効なプロモーション方法が存在しない理由です(62ページ)

コンテンツの価格は「依存度」で決まる

また、ネットコンテンツ無料論にも触れられています。川上さんは「複製費用が無料だからではなく、ネット利用者間においてコンテンツが無料になるのはいいことだという素朴な価値観が存在する」と指摘しています。では、どのようにネット上におけるコンテンツの価値や値段は規定されるのか。

納得度が高かった文章のひとつに、「コンテンツの価格は人間が持つそのコンテンツへの依存度で決まる」というものがありました。つまり、フリーミアムモデルであれば、無料コンテンツで顧客との接点を増やし、徐々に生活での依存度を高めたところで課金してもらう。ソーシャルゲームニコニコ動画、クックパッドなどを考えてみても、「依存度」との表現は腑に落ちました。

そこでこのエントリーで紹介したい、コンテンツとプラットフォームの関係について入っていきます。本書ではプラットフォームの役割を「形のないデジタルの世界でコンテンツをどのようにつくっていったらいいのか、その仕組み(フォーマット)を提供する」と表現し、具体的な役割として、ビジネスモデルの提供、ユーザベースの提供、プロモーション手段の提供、コンテンツの枠組み(フォーマット)の定義、コンテンツの品質の管理の5つを挙げています。

ネット時代、手離れの悪い地道な客商売が大切

現在の(ウェブ)コンテンツを考えるうえでは、アップルやアマゾン、グーグル、フェイスブックなどのプラットフォームの優位性について考えなければいけません。要するに、コンテンツ側がプラットフォーム側に搾取されないためには、どのような考えや戦略を持っておけばよいのか。

コンテンツをつくらないというのは、プラットフォームにとっては楽をする戦略であるともいえます。また、プラットフォームが並立している場合にはプラットフォーム間の競争のためにコンテンツが販促手段として犠牲にされがちな構造が先のようにあるわけです。ですからぼくは、コンテンツはつくらないと宣言するプラットフォームがフェアであるとも責任ある態度だとも思いません。任天堂ソニー・コンピュータエンタテインメントのように自らもコンテンツをつくり、コンテンツから利益をあげる家庭用ゲーム機のようなプラットフォームが、実はコンテンツが儲かる仕組みが維持されて、コンテンツのクリエイターにとって幸せな環境ではないかと思うのです(110ページ)

川上さんはプラットフォーム提供者がコンテンツもつくるモデルがクリエイターにとってよいのではないかと述べています。さらには「ネット時代のクリエイターだったり出版社だったりは、コンテンツ自体を独立したプラットフォームとして設計しなければいけない」「顧客接点の死守が重要なポイント」という言葉もあります。

プラットフォームが決めるレベニューシェアの比率や広告料金、そして規約などの変更。これらの主導権を握られていては、収益をあげることがむずかしい状況です。どのようにしてプラットフォームの協力を得ずにメディアを運営し、コンテンツをつくり広げていくのか。要するに、コンテンツ側がプラットフォームに依存せず、顧客に関するデータなどの情報を持つことが重要になるのです。

ネット版のファンクラブをつくって会員限定のサービスをすればいい、という提案もされています。「大量複製して大量販売するだけのコンテンツ側にとって夢のような黄金時代は終わって、ネット時代には昔のように手離れの悪い地道な客商売が大切になるのです」。まさに読者のコミュニティや読者とのコミュニケーションを意識したメディア設計がますます必要になってくるのではないでしょうか。コンテンツという言葉が連発してしまいましたが、『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』(NHK出版新書)もたくさんの発見がある本でした。