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Webコンテンツの収益化には「多対多の関係性」が求められる? コンテンツではなく場に課金するという考え方

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先日、有料会員制のオンラインサロン・プラットフォーム「Synapse(シナプス)」を展開する田村健太郎さんにお話を伺いました。シナプスのサロンはフェイスブックグループでの主宰者や参加者とのコミュニケーションを体験できるというもの。月額1000円程度のものから1万円を超えるものまでさまざまなサロンが存在します。

コンテンツ単体での課金よりコアなファンに多く払ってもらうモデル

取材・執筆するなかで興味深いキーワードが出てきましたのでいくつか紹介。たとえば以下のような言葉が印象に残っています。

  • 体験型コンテンツ消費と、場にお金を支払うという感覚がカギ
  • 単価を上げ、少数のファンからお金をもらう仕組みのほうがうまく回るのではないか
  • ユーザーの熱量を最大化するためにちゃんとアクティブな仕組みをつくることがいちばん大切
  • 広く支持されるコンテンツと、熱心なファンが求めるものは必ずしも一致しない
  • 一対多から多対多の関係性に移行しているサロンはうまくいっている
  • 主宰者はコンテンツづくりに集中、シナプスがマネタイズの最適化を図る

「体験型コンテンツ消費」というのはコンテンツだけを楽しむというよりは、コンテンツを軸としたコミュニケーションを消費すること。サロンであれば、投稿とコメントでコミュニケーションでき、その人だけでなく参加者も含めた場にお金を支払う感覚が強いこともあるようです。

「単価を上げ、少数のファンからお金をもらう仕組みのほうがうまく回るのではないか」というのは、田村さんが過去にマンガや電子書籍関連サービスを手がけているなかで感じたこと。先ほどの話とつながりますが、コンテンツ単体での課金はむずかしく、コアなファンに多く払ってもらうモデルのほうがよいと考えオンラインサロンのプラットフォームを運営しています。

これはサロンのみならず、ほかのプラットフォームでも見られること。たとえば、音楽ユニット「UQiYO」がnoteを活用して4つの有料プランを用意していることがCINRAのインタビューで掲載されていました。ライブの撮影や録音ができるメニューがとても魅力的ですし、地方のファンに向けたプランもあることがいいですね。

月額500円で動画やブログやYuqiさん作の漫画などがウェブ上で見られる「コト」、月額2,000円でライブの撮影や録音ができたり楽屋の秘蔵映像が見れたりしてライブをより楽しめるサービスが含まれている「ナマ」、同じく月額2,000円でポストカードやスペシャルギフトが郵送で届く「モノ」、そして月額10,000円の「ササエ」という4つのプランに分かれている

UQiYOと加藤貞顕に学ぶ、ネット時代の作り手とファンの繋がり方 - 音楽インタビュー : CINRA.NET

コミュニケーション消費において、一対多から多対多の関係性への移行が重要になる

田村さんにインタビューするなかで、「一対多から多対多の関係性に移行しているサロンはうまくいっている」ということがとても興味深く、これからのオンラインでの小さなコミュニケーションを収益につなげるヒントになると思いました。これまで紙メディアであれば一方方向の情報発信でした。ウェブでもインフルエンサーなどのあり方を見ると分かりますが、一対多の関係が強いです。

しかし、たとえば美容師の方のサロンでは参加者がカットの画像を投稿してフィードバックし合うようなこともあると聞いて、多対多がポイントであることがよくわかりました。場にお金を払うこととも関連しますが、サロンの主宰者を目的に入ることはもちろんですが、そこにどんな人が集まり、どんなコミュニケーションが生まれる場になるのか。そういったことが重要なのでしょう。 

多対多の意味するところは、参加者がそのコミュニティ内で発信者にも受信者にもなり、コミュニケーションを楽しむことができることなのかもしれません。一対多の場合は、どうしても主宰者の投稿が多くなり、予想を超えたり、多様な体験を継続的に提供することはよほど工夫しないとむずかしいのではないかと思いました。

今年中にサロン数を500まで増やすとのことなので、地方コンテンツやニッチな領域含めどこまでこの仕組みの裾野が広がっていくのか。メディア関係者は追いかけるべき、プラットフォーム(とその背景哲学)であると思います。