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周辺に本質や醍醐味があるーーサッカー選手が出ないサッカーマガジン『OFF THE BALL』

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サッカー選手が出ないサッカーマガジンOFF THE BALL』を買いました。 

クラウドファンディングサービスのCAMPFIREで創刊資金を集めていたこともあり、気になっていました。紙雑誌は1500円という価格設定ですが、ウェブ(OFF THE BALL issue:00)では無料で読むことができます。

 

タイトルになっているOFF THE BALL(オフザボール)とは、選手がボールを保持していない局面を指すサッカー用語です。1試合90分の試合のうち、1人の選手がボールに触るのはわずか2分ほどなので、彼らは試合中のほとんどをオフザボールの状態で過ごすことになります。サッカーの見所は、ドリブルやパス、シュートにありますが、試合を通してみればそれはごくわずかな時間に過ぎず、実際にはボールのないところで繰り広げられている駆け引きに勝負がかかっていることが分かります。

それはサッカーそのものにおいても同じです。

サッカーにとって試合や選手が主役であることに疑いの余地はありません。しかし、サッカーというひとつの文化において、それはごくわずかな部分に過ぎません。実際にはサッカーに関するファッション、音楽、食、アート、文学など、スポーツとしてのサッカー以外の要素こそ、サッカーがサッカーであるために欠かせないものなのです。

「OFF THE BALL」は「サッカー選手のでないサッカーマガジン」をコンセプトにしたサッカーカルチャーマガジンです。この雑誌では、スポーツとしてのサッカーの部分にはあえて焦点を当てず、サッカーの周辺を中心に扱います。なぜなら、私たちはサッカーの醍醐味は「OFF THE BALL」にあると信じているからです。

サッカー選手の出ないサッカーマガジン「OFF THE BALL」創刊プロジェクト - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

10月22日には、代官山 蔦屋書店にて刊行記念トークイベントがあったのでお話を聞きにいきました。

編集長は高校生のときにアートマガジン『LIKTEN』を手がけ、現在は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)やクリエイティブ・エージェンシーWieden + Kennedy Tokyoに籍を置く小田明志氏、副編集長は同じくWieden + Kennedy TokyoにてExecutive Creative Directorを務める長谷川踏太氏です。

雑誌のもともとのきっかけは小田氏がサッカーが好きなことと、大学で元FC東京社長の村林裕教授のスポーツゼミで学んでいるなかでの課題を考えていて生まれたとのこと。

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海外では「The Green Soccer Journal」というビジュアルに力を入れたり、クリエイターなどともコラボレーションしているインディペンデントなサッカーマガジンがあり、これも遠からずきっかけのひとつになっているとか。

ただ表紙がサッカー選手のこともあり、小田氏はサッカー選手を表紙にしたくなく(サッカーにあまり関心のない人にも手にとってもらいたいという理由)、実際、今回の表紙はイラストレーターの永井博氏がスタジアムのある東京の夜景をイメージしたイラストになっています。

「サッカー選手が出ない」というのもこの雑誌の特徴ですが、アジア圏におけるサッカーの盛り上がりを受け手のバイリンガル表記、あまり見ないような大きなサイズ(リュックに入らないくらい)、ウェブで無料発信していることなどもユニークです。

OFF THE BALL以外のネーミング案も共有され、ZONE PRESS(ゾーンプレス)やMAN Ⅱ MAN(マンツーマン)、VELVET PASS(ベルベット・パス)、PANENKA(パネンカ)などがあったとのこと。

今回やっていないけれど挙がっていた企画案には、スタジアム建築やフーリガンファッション特集、監督のネクタイ、選手と似ている人シリーズなどがあり、サッカーを違った視点から楽しむことができるものができそうです。

こうして生まれた『OFF THE BALL』。個人的に印象的だったのは、フードブロガーの平野紗季子氏によるスタジアムグルメガイドと、TJ(テキストジョッキー)の鵜川カナ氏によるサッカー用語が消えたサッカー小説です。前者はスタジアムに行ったことがなかったので純粋においしそうと思ったのと、後者はハッとしました。

また、雑誌のみならず、BEAMSとのコラボレーションで制作した永井博氏によるカバーアートTシャツやロゴが入ったトートバッグ、マフラーなどのグッズもあります。どれもサッカー観戦に持っていけるものということもあり、雑誌以外での文脈づくりもいいなあと思いました。