メディアの輪郭

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「メディアの輪郭」のつくりかた——リサーチをはじめた理由とこれまでを振り返る

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(Photo by Aleks Dorohovich/Creative Commons Zero

メディアの輪郭」というブログを開始してもう1年半ほどになるようです。はてなブログの管理画面を見ていたら、ブログ作成日が2013年10月22日。これまでに300本近くの投稿をしてきたとのこと。開始は同年11月12日。初日に以下にある3本を投稿していることから、どこか力が入っている気がします。せっかくなので、自分の整理も兼ねて1年半をざっくり振り返ってみます。

「メディアの輪郭」をはじめた3つの理由

もともとの経歴は2012年はNPO法人グリーンズが運営するgreenz.jpというメディアでライターインターン、企業のコンテンツマーケティングを手がけるメディア企業で編集アルバイトを経験し、就活もせずどうしようかと思っていたときに、Wantedlyで求人を見つけた「現代ビジネス」で2013年6月からエディターをしているという流れです。

非営利/営利メディアのどちらも経験したことで、いろいろ考えたのがブログの開始時期に重なっているのかもしれません。大学は英語学科を出ているんですがなぜか編集の仕事をしているのには、いくつかの理由があり、それもブログをはじめたことにつながっています。

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(タイ最大の難民キャンプであるメーラキャンプで撮った写真

ひとつは新潟県佐渡島が出身であり、地方と都市の情報ギャップを感じたこと。ふたつは大学でミャンマーの難民研究をしていてタイとミャンマーの国境にある難民キャンプに行ったときに、先進国と途上国の情報ギャップを感じたこと。最後に大学後半でNPO/NGOの活動にも参加するなかで、社会課題に取り組む人は多いものの、課題やソリューションなどが思いのほか伝わってないと思ったこと。これらがメディアにかかわることになった主な理由です。

地方、途上国、NPO・・・どれも情報発信が遅れていたり、編集するものはあるものの編集する人がいなかったり。そんなことをひしひしと感じていました。まわりは就職で英語教師やホテル、航空・外資系企業などが多かったように思いますが、それでも編集を選んだのには情報発信におけるビハインドの実感が大きかったのでしょう。

ビハインドが大きいからこそ、メディアの最先端を知らないといけないのではないか。徹底的にリサーチをしてくわしくなって、そのなかで地方、途上国、NPOの情報発信で生かせることがなにかあるのではないか。そんな思いで開始し、いまもその思いの延長線上にいます。

メディアの輪郭をやっていると、ものすごいメディア好き(関心対象がメディアそのもの)な人と出会うことも多々ありますが、そのたびに自分は関心対象がメディアではなく、メディアというツールを使ってなにを実現するのかという方向に関心があるのだと再認識しています。メディアにあまり関心がなく勉強の意味合いが強いからこそ、リサーチを続けられているのです。

当初のテーマは「新興メディアの視点」と「大手メディアの実験」

「メディアの輪郭」というネーミングは、ただ自分がメディアについて本質的なことは書けないということや、そもそも意見や議論とかの発信が苦手なこともあり事例や取り組みを淡々と紹介するスタイルで長い目で多くの投稿を見ていったときに読者の方にとってなにか気付きがあればといった冗長でアバウトな由来です。

あと「メディアの本質」とかにしてしまうと、毎回ちゃんと書かないといけなくなる気がして、力を抜いていつでも書けていつでも辞めることができるように輪郭という言葉を選びました。独自ドメインをとっていないことやブログ専用のSNSアカウントをつくっていないことも上記の理由からです。ニッチなので無理せずじわじわと広がればいいなあと思っています。

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ブログをはじめるにあたり、次に決めたことは「なにを書くか」ということ。メディアの輪郭の場合、「新興メディアの視点」と「大手メディアの実験」という2つのテーマを掲げました(いまでは書評や取材後記のような使い方もしています)。新興メディアはたとえばバズフィード、大手メディアはニューヨーク・タイムズというと分かりやすいでしょうか。新興か大手かどちらかに絞ればもっとエッジが利いていたかもしれませんが、あくまで輪郭であり勉強であるので、まんべんなく取り扱う必要がありました。

新興メディアはテクノロジーを活用したり、SNSで流通を獲得したり、大手メディアにはできないメディアのあり方や未来を見つめていて、逆に大手メディアは資金や人員がいるからこそできるトライもあり、それぞれを見ることはいまでも非常に興味をそそるものです。

書くことを決めたあとは、いろいろと調べました。国内ではどんな人が海外メディアについて情報発信しているのか、海外ではどんなメディアや人がメディアについて情報発信しているのか。この2つについてざっくり調べた気がします。

前者は「海外メディアについて知りたい時に必ず読むブログ7選」という投稿で紹介。後者はツイッターのリスト(MEDIA INFOと 海外メディアが気になるときにサクッと見るリスト)とグーグルアラートで追うようにしています。グーグルアラートは50個ほど登録していて、主なものだと「BuzzFeed」「Vice Media」「Future of Media」「Audience Development」「Journalism startup」「Investigative Journalism」「Long Form」など。最近だと「Decentralized Web」とかも気になって登録しました。

グーグルアラートで1年間バズフィードの情報を追っていたこともあり、1万字を超えてしまった「収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト『バズフィード』の2014年を振り返る」という記事を時系列順で書くこともできたりしました。また、ブログで情報収集・発信を続けるにつれて、ブログやメディアでも紹介いただくようになりました。

転載、イベント登壇、寄稿、連載について

外部転載がはじまったのは、2013年11月12日にブログをはじめて2週間後の11月27日。BLOGOSにて「ニッチな穴を狙え! ジャーナリスト、ネットニュース編集者らが語った『新しいネットメディアの可能性』」という記事がはじめてでした。BLOGOSがきっかけでいろんな人に知ってもらうことができました。その後、ハフィントンポスト日本版All About News DigFashionsnap.comなどに転載されています。今後もできるだけ外部配信は増やしていけたらと思っています。

また、メディア関連のイベントで登壇する機会もたまにいただくようになりました。国内外のバイラルメディアを初期の頃から追っていたこともあり、2014年夏ごろには「キュレーションメディアサミット」「バイラルメディア祭り」といったイベントに登壇。

これまでスライドを3つ公開しているのですが、以下のものは7万回閲覧されています。3つ合計では11万閲覧ほど。イベントとは別に友人・知人からメディア相談を受けたときに、気分でオリジナルのスライドを用意してカフェで話したりすることもあったりするので、情報をまとめるのは好きなのかもしれません。引き続き勉強も兼ねてスライドはつくっていきたいなあと思います。

メディアの輪郭をはじめてから、現代ビジネスでも編集の傍ら「デジタル・エディターズ・ノート」という連載をもたせていただいています。国内外のメディア動向を追っていて、海外はこのブログよりも長めに書き、国内においてはあまり取り上げられていないけれど自分が注目している人やメディアをじっくり紹介することを意識しています。国内はいくつか例を挙げると以下のあたり。

ブログの話に戻ると、転載以外にも寄稿なども増えました。紙媒体では、『新聞研究』 『事業構想』、ネットメディアではTechCrunch JapanやJapan In Depthなど。そのほか、個人や企業のメディア関する相談が増え、週に数回ほどヒアリングを受けたりアドバイスをする機会があります。多様なメディアの状況を聞くことで視野が広がるのでとても楽しいです。そういえば、朝日新聞の記事でコメントが掲載されたこともありました。

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地道に続けていると、読んでくださる方は増えるみたいで、「Feedly Subscribers Checker 2」で購読者を見てみたところ、1400人以上の方がFeedlyで購読しているようでした。ニッチなトピックにかかわらず、この数字はとても嬉しいです。引き続き、仕事以外の時間で地道にリサーチを続けていきたいと思います。

続けられた理由は先述の地方、途上国、NPOという3つの軸での情報発信に向けてということや、自分が気になったものをそのときの気分の文量でしか書いていないこと、意外と海外メディアを追っている人が少なくてもったいない気がすること、紙/Web/スマホなどメディアのあり方が大きく変わろうとしていること・・・などいろいろありそうです。グリーンズのインターンを卒業するときに共同編集長の鈴木菜央さんからもらった「どこでもいいから(情熱的な)ニッチナンバーワンになれ」という言葉も影響しているのかもしれません。

改めて振り返ってみると、ブログ開設してからは情報源の確保と執筆くらいしかしていないですね。海外メディア事情については上の世代の方々に解説や持論を発信している人はいるため、基本的に自分の意見は伝えず情報を提供するスタンスをとっています。そういう意味ではこのブログは楽なのかもしれません。今年は本もなんとか読めているので紹介したり、もっと内容のある決定的な記事も書いたりしたいです。