これまで閉じていた「ものづくりの内側」を体験! 毎年1万人が来場する「工場の祭典」はメディア化する場所の好例
新潟県燕三条地域で10月に開催される「工場の祭典」。金属加工の産地として知られる同地域でものづくりが体験できるというまちぐるみのイベントです。ちょっと前になりますが、7月にEDITORY神保町でおこなわれた新潟県三条市 國定勇人市長の話を聞き、とても興味をもちました。
工場開放で意識した2つのこと
「外から人が来たくなる街の魅力の見つけ方、育て方、PRの方法」と題した講演は、まず神保町(本)と三条(金物)のどちらも有名な地域資源があるなどの共通点が語られました。
しかし、三条を訪れた國定さんは、ものづくりのまちにもかかわらず、その匂いを感じなかったといいます。工場が住宅街にあることや、郊外への移転者の多さも、その状態をつくっていた要因になっていたのだとか。
そこで、ものづくりというアイデンティティを再認識してもらい、誇りに思い、人を呼び込もうと考えた市長。一般に開かれていない工場を開放して見せてみるのはどうかと考えたそうです。そんな工場の祭典ではいくつか意識したことがあったようです。
67の工場を解放する上で意識したことの一つとして、期間中はどこでもいつでも体験できることです。時間の制約を付けないことで人を多く受け入れました。二つ目は、工場の目印として、鉄の赤らんだ色と真っ暗な場をイメージしてピンクとグレーピンクのテープを斜めに貼ることで安価にアイコン化を図りました。
これだけ豊かな社会ゆえに人それぞれの価値観があるので、ニッチでディープなファンを大切にすることが、万人受けを目指すより、スピーディに、質のある結果が得られます。結果、オランダ、イタリアからも注目を集め、見に来る人の賞賛の声によりミラノサローネや伊勢、蔦屋への出店に繋がりました。
1万人が来場、半数は県外から
神保町であれば、書店が多く、エンドユーザーが訪れますが、三条では製造者(職人)が多く、エンドユーザーが来る機会や場がありませんでした。そんなエンドユーザーが来場できる工場の祭典。初年度は59の工場が参加し、予約なしで工場見学ができるように設計しました。
しかし、はじめて来た人にとっては住宅街に溶け込んだ工場がどこか、特に祭典に参加している工場の場所はわかりません。そこで、まち全体で来場者を歓迎する意味も込め、グレーとピンクのしましまを目印にしたそうです。写真で見ましたが、まちぐるみで統一しているのが素敵でした。
これらのさまざまな工夫もあり、1年目と2年目どちらも1万人以上が来場、県外からの来場者が5割程度となっていることもすばらしいです(単純計算で1つの工場を150人近くが訪問)。3回目となる今年(10月1〜4日)は、62もの工場が参加するそうです。
新メディア「ぼくらのメディアはどこにある?」を立ち上げてからよく考えるようになった「メディア化する場所」。今回取り上げた工場の祭典はその好例であると感じています。地元・新潟でこんないい取り組みがあることを知れてよかったです。ぜひプロモーション動画もご覧ください。
Tsubame-Sanjo Factory Festival / 燕三条 工場の祭典 from 工場の祭典 - KoubaFes on Vimeo.