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バズフィード編集長が語る、未来のジャーナリズムのポイント5つ

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バズフィード編集長のベン・スミス氏がプレイボーイ誌に「Is Social Media the End of Journalism?」という記事を寄稿しています。彼の語るジャーナリズムに関する5つのポイントをざっくりと踏まえつつ、国内外のウェブメディアについて色々考えていきたいと思います。

バズフィードや今年注目のメディアなどについては以下も参照ください。

政治メディア「Politico」からバズフィード編集長に抜擢されたベン・スミス氏は、"ジャーナリズムはインターネットによってすでに破壊された"と言います。2008年の大統領選にはブログやツイッターが活用され、非常に盛り上がりを見せました。

ツイッターのシンプルさ、コミュニケーションの取りやすさがコンテンツの広がりを見せるため、ブログよりも有用なツールとなった転換期とも言えるかもしれません。その後フェイスブックも流行し、ソーシャルウェブの流れが強くなってきました。

そんなソーシャルウェブを体現するウェブメディアとして登場したのが「バズフィード」なのです。リスト記事やGIF、動画、長文記事などウェブメディアならではの発信を続ける同メディア(やソーシャルメディア)がジャーナリズムを救うとスミス氏は主張します。以下に5つの理由を紹介します。

ソーシャルウェブ時代のジャーナリズム5つのポイント

1. 流通はものすごく安い

新聞などのオールドメディアが若者からすると読みづらいこともあり、オンラインのツールを利用するようになっています。そのため、現在では約1.3億人のアメリカ人がフェイスブックを利用し、ストーリーを共有するようになっています。

このようなソーシャルウェブのコンテンツ流通は、誰でも利用できて、誰でも書くことができ、素晴らしいことをすれば(書けば)シェアされる。その意味で、テレビや新聞等に比べて、コンテンツ流通が安くなっているのです。

2. シェアがキーワードに勝る

これは、シェアがSEOの存在を超えるということです。最近は様々なバイラルメディアも増えています。国内でも以下のものを含め40以上のバイラルメディアが登場しています。

そのほとんどが動画や写真とシェアボタンという設計で、テキストがほとんどないというもの。グーグルのような検索エンジンに引っかかりづらい一方で、コンテンツをソーシャル上で広げることでトラフィックを稼いでいくというわけです。

一方で、「バイラルメディア「Upworthy」のシェア数が急減中ーーランキング圏外へ」という記事でも紹介したように、バイラルメディアのアクセス数の上限はかなり激しいようです。

3. 長文ジャーナリズムの復権

2012年、バズフィードの最も人気のあったコンテンツは11,000ワードの長文でした(内容はロムニーの父親の再評価についての記事)。このような長文記事の人気は、Longform.orgLongreadsNarrativelyといったプレイヤーが続々と出てきています。

バズフィードも「LONGFORM」カテゴリーを設け、長文記事、さらには調査報道に乗り出しています。米テックメディア「PandoDaily」も調査報道に注力することを発表し、新興メディアによる調査報道への参入が相次いでいます。

ウェブ時代時代に長文ジャーナリズムが復権するという文脈はまた別の機会に紹介したいです。

4. ジャーナリズムという職業も(再び)脚光を浴びる

このように長文記事を出すこともできるウェブメディアが出てきたこともあり、ジャーナリストという職業を進む人も増えているのだとか。ジョージア大学の調査では、昨年よりも多くの(66%の)ジャーナリズム専攻の大学院生がフルタイムの仕事に就けているようです。

バズフィードやポリティコ、ビジネスインサイダーなどの新興メディアが多くのジャーナリスト/記者を求めていることもこの理由の一つとなっているとのこと。海外ではジャーナリズムスクールが具体的にどのような役割を果たせているのかなどは気になるところです。

5. 新しいビジネスモデルの出現

SEO重視のジャーナリズムはバナー広告と相性が良いモデルでした。しかしながら、ソーシャルウェブ時代にバナーなどの広告に慣れてきた読者には見てもらえなくなってきています。

そこで登場するのが、スポンサードコンテンツ(ネイティブ広告)の存在です。海外メディアのスポンサードコンテンツの制作体制については「スポンサードコンテンツ」を支える広告制作チームとは/海外ウェブメディア4事例という記事も参照いただけたらと思います。

また、「2014年、ウェブメディアはさらに盛り上がる! 注目の海外メディア4選」という記事でも少し触れた課金メディアもジャーナリズムを支えるビジネスモデルになり得ます。

その他、NPOメディアとして寄付モデルで運営をしています。Pro Publicaなどはピューリッツァー賞を獲得するほど重要な調査報道を行うことができています。

新興メディアの勃興と大手メディアの実験に注目

以上、バズフィード編集長が語る、未来のジャーナリズムのポイント5つでした。日本と違う部分もありますが一つの参考にはなりそうです。

ソーシャルウェブ時代のコンテンツの広がりはいいものを広げる一方で、悪い(デマなど)ことを広げる側面もあるので、このあたりは心得ておきたいですね。

個人的には上記のような流れに沿っている部分もありますが、新興メディアの勃興と大手メディアの実験的な取り組みについて追っていきたいと思います。

 

【参考】