3年で約6億PV、世界展開、事象を詳報――メディア新時代を鮮烈に切り拓いた「クオーツ」の功績

アトランティックメディア社が2012年に開始した、新鋭ビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」 が3周年を迎えました。それを報告する記事では、さまざまなデータやこれまでの軌跡が示されていました。
クオーツが生みだした3年間の功績
フルタイムのジャーナリストが70名。3年間で5.8億PV、1.7億訪問数を記録しています。グローバルかつハイステータスな読者を狙ったメディアとしては十分な数字なのかもしれませんが、アフリカやインドへの進出によりさらに伸びる余地は大きいでしょうう。
多くの読者がアップルニュースやフリップボード、スマートニュース、グーグルニューススタンド経由で読んでいるとのこと。だからといって、コアな読者がいないかというとそうではありません。「Quartz Daily Brief」というニュースレターには15万6千人が登録しています(ぼくも購読していますが、半数ほどが開封しているそう)。そしてイベントもアメリカやイギリス、インドなど世界中で開催しています。
今年に入ってからの注目の動きとしては、動画も好調で3500万回再生を超えていること、クオーツが制作したチャートを検索したり、ダウンロードしたり、埋め込んだりできる「Atlas」というデータビジュアライゼーションプラットホームは異次元であること(2014年だけでも4000ほどのチャートが制作されているのだとか)、英語圏メディアらしく「Actuality」というポッドキャストを提供し始めていること……細かく終えていない間にさまざまな取り組みがおこなわれていました。
最後に、2013年〜2014年にかけてクオーツについて取り上げたブログ記事を参考までにいくつか紹介します。クオーツをあまり知らない方にとって、なんとなく概要を把握できるものになっていれば幸いです。
記者に「専門分野」は求められなくなるのか? クオーツが志向する未来のメディア像(2013年11月)
「No more "beats"(「専門分野」はもういらない)」
これはクオーツが掲げるメディア像の一つです。記者といえば、経済、社会、政治など特定の専門性のもと取材を重ね、記事をつくっていくことが求められていました(いまも求められることが多いと思います)。
ストレートニュースではなく特定テーマを追う
しかし、同メディアは「記者に専門分野は求められなくなる」と考え、メディア設計を行っているようです。500語以下のショート記事と800語以上の長めの記事を出していることでも知られていますが、その方式についても独特の編集方針を持っています。

『クオーツ』は「オブセッション」という方式を取っている。常時、重要トピックを1ダースほど設定し、集中的に詳しく伝えている。これは雑誌スタイルとも言える。そしてまた、「クオーツ・カーブ」という編集哲学に基づき、記事を送り出している。
この「オブセッション」とは、一定期間追いかけている特定のテーマのようなもの。現在のテーマは、「The mobile web」「Digital money」「Energy shocks」「Euro crunch」「China’s transition」「The future of finance」「The cloud」「How we buy」「Debt」「Borders」「Space Business」「Abenomics」「US Immigration」となっています。
経済系が多いのはビジネスメディアなのでもちろんですが、意外とデジタル系が多かったり、宇宙ビジネスなどもカバーしていたりと、「オブセッション」の変化を見ていくのも面白いかもしれません。

クオーツ記者はある程度「オールラウンダー的」
さて、冒頭の記者の専門性の話に戻ります。エコノミスト紙を経てクオーツでグローバルニュースエディターを務めるGideon Lichfield氏は次のようなことを言ってます。
決まった専門分野を持つ代わりに、我々は絶え間なく進展する「事象」を集めるニュースルームづくりしています。「金融市場」は専門分野ですが、「金融危機」は事象です。「環境」も専門分野ですが、「気候変動」は事象です。(中略)我々はこれらの事象のことを「オブセッション」と呼んでいます。
クオーツはロイターをはじめとする通信社のコンテンツをアグリゲーションし、速報記事をカバーしています。そのため、この「オブセッション」に力を入れることができているのです。
ニュースを専門分野ではなく、事象で捉え、点ではなく、面でのコンテンツ発信を意識すること。さらに、Gideon Lichfield氏は、ニュースを事象で捉えることは分野を横断的にまたぐこともあるので、クオーツの記者はある程度「オールラウンダー的」にならざるを得ないとも言っています。
分野横断的にニュースを捉えていくこと
記者に専門分野は求められなくなり、ジャンル横断的になっていくのでしょうか。クオーツの掲げる「オブセッション」を含め、これからのメディア/記者像について考える一つのきっかけになればと思います。
専門分野を超え、分野横断的に「オブセッション」としてニュースの捉えるクオーツの志向するメディア像については引き続き目を向けていきたいところです。最後に、参考までにクオーツの特徴をいくつか挙げておきます。ウェブメディアを設計する際のヒントがあるかもしれません。
- ページ型でなくストリーム型
- バナー広告でなくネイティブ広告
- 記事下部でなくパラグラフごとのコメント
- レスポンシブWebデザインの採用(モバイル/タブレットを意識)
- 速報はアグリゲーションでカバーし「オブセッション」に注力
月間読者500万人超えたデジタルメディア「クオーツ」が2014年に見据えること(2014年2月)
18ヵ月で500万人の読者を抱えるビジネスメディア
アトランティックメディアが2012年にモバイル/タブレットファーストを掲げたビジネスメディアとしてスタートしたクオーツ。立ち上げから18ヵ月経ち、1月の月間読者が500万人を抱えるまでになりました(12月にはメルマガの読者が5万人を突破)。
しかしながら、6割の読者がパソコンから読んでいるので、思ったよりモバイル/タブレットファーストの実現には至っていないよう。それでもレスポンシブデザインはきれいですし、タイムライン型のメディアとして、無限スクロールやスクロールで次の記事を読むと勝手にURLが変わる仕組みなども秀逸です。
そんなクオーツのトラフィックの半数がソーシャル経由とのこと。 パソコンからのトラフィックは9〜17時の日中のワークタイムが多いよう。
2014年はデータビジュアライゼーションと米以外の読者獲得
2014年はデータビジュアライゼーションにも力を入れていくようです(現状でも多くの記事にインフォグラフィックやチャートを見かけます)。
同時に、アメリカ以外の読者獲得も目指すのだとか。1月は40%以上がアメリカ以外で、そのうち15%がイギリスからだったとのこと。現在は30名以上の記者を抱えているのですが、昨年9月にイギリスのジャーナリストも雇用し、同国での読者開拓も行っています。
現状は、まだまだパソコンからの流入が多いようですが、今後スマホやタブレットユーザーが増えるにつれて、クオーツの戦略は成熟していくことでしょう。先進的なデジタルメディアとして、その戦略を追うことで参考になりそうです。
米国におけるデジタルメディアの動向とは? クオーツ発行人 ジェイ・ローフ氏のプレゼンを聞いた(2014年10月)
クオーツというメディアの革新性について、海外では多く報道されているものの、日本での認知はほとんどありません。以前、クオーツのパブリッシャー兼プレジデントを務めるジェイ・ローフ氏が来日した際にプレゼンを聞いてきました。米国におけるデジタルメディアの動向と広告の潮流についての発表で参考になりました。いくつか情報をシェアしたいと思います。
「もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう」
WIREDのパブリッシャー、アトランティックのパブリッシャーを経て、アトランティックメディアが2012年に新設したQUARTZのパブリッシャーになったローフ氏。自然とページが変わるデザインやネイティブ広告でも注目される同メディアは、現在、月間550万UUを記録しています。
ローフ氏はさまざまなデータを紹介し、ニュースをとりまく環境変化を伝えました。決まった時間にニュースを見る人は2002年の49%から、2012年には37%に減少する一方、すきま時間に見る人は2002年には49%、2012年には57%に増加しているとのこと。
そして、2006年、Twitterの登場をきっかけにさらに環境は変わりました。当時流行った「“If the news is that important, it'll find me.(もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう)」という言葉も紹介。スマホやソーシャルの普及により、新聞のようなプル型メディアから、プッシュ通知などをはじめとするプッシュ型メディアに大きく変わっているとしました。
(アメリカでは)61%がニュースの閲覧にモバイルやタブレットを使用(41%がモバイル、20%がタブレット)、そしてPCが30%と、構図が逆転しているのです。新聞含め、紙メディアやウェブメディア初期は一面やホームページが機能していたけれど、いまでは60%のトラフィックがソーシャル流入なため、アンバンドル化が進んでいます。また、91%のエグゼクティブがニュースをシェアをしているという興味深いデータの紹介もありました。
500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化
QUARTZは、シェアとエンゲージメントに適応したコンテンツということも意識しているようです。500~800ワードはあまり読まれない/シェアされないという「クオーツカーブ」も紹介しました。
アメリカの新聞の平均的な記事の長さは、紙面の上から下までの一段の記事で、語数にして700語台である(日本語に訳すと2千数百字になる)。だが、『クオーツ』は、500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化している。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
短いものでは、インフォグラフィックや短編動画で記事を構成し、長いものはストーリーテリングやシリーズものの報道といったものになっています。クオーツカーブのように、データをもとに、メディア環境の流れをコンセプトに昇華できるのはすごく魅力的なことだなと思います。
「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」
デザインに関しては「Radically Simple」「Responsive Design」の言葉を挙げていました。バナーやハイパーリンクなどを入れず、コンテンツに集中してもらうことでエンゲージメントを高めるようにしていたり。だからこそ、ネイティブ広告も活きてくるのでしょう。
続いてローフ氏は、ROI(投資利益率)、モバイル、ソーシャルインプリフィケーション、デジタル、エンゲージメント、パブリッシャーなどの要素がネイティブ広告を後押ししたと紹介。「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」といったデータもあるそう。
効果的なネイティブ広告には、質、関係性、目立たないこと(Unobtrusive)、デバイスに最適化すること、透明性などの要素が挙げていました。質に関する実例としてゴールドマン・サックスが提供する「Macroeconomic outlook for 2014」を紹介していました。
プレゼン後の質疑応答セッションでは、本題にあまり関係ないけれど、クオーツのひとつの強みであるデータビジュアライゼーションツール「チャートビルダー」について聞いてみました。
オープンソースとしてGitHub上で公開されており、データジャーナリズムサイト「FiveThirtyEight」のネイト・シルバーをはじめ、著名なジャーナリストも活用しているツールとなっているようです。間接的にチャートを活用した記事づくりを促進しているのが素敵です。
老舗メディアからクオーツのようなメディアが生まれることには希望しか感じません。個人的にはVox.com(ヴォックス)と合わせてクオーツはかなり展開や戦略、実際の動向などがスマートで魅力的に映っています。
新鋭ビジネスメディア「Quartz」、アフリカ版開設へ

アトランティックメディア傘下のビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」がアフリカ進出を発表しました。オープンは6月で、ゼネラル・エレクトリック(GE)社がスポンサーとのこと。
エディターは、フィナンシャル・タイムズでライター、ロイターで特派員などの経験を持つYinka Adegoke氏。クオーツは2014年夏にインド版も運営していますが、今回のアフリカ展開からも、グローバルな市場を狙っているのではないかと思います。
特にアフリカではモバイル人口が急増しており、世界銀行によれば、2011年時点で6.5億人のモバイル人口がいるとの調査結果を出しています。2000年には1600万人ほどだったので、11年で40倍に激増しているのです。
公式ブログでは、地域のコンテンツとターゲットが定まったネイティブ広告を展開、と書かれています。全読者のうち40%がアメリカ国外からのアクセスだというクオーツ。現状アフリカからのアクセスは月間10万ほど。
しかし、インド版という前例はいまは月間130万人の読者を集めている(8ヵ月で500%成長)ことから、アフリカでの成長も期待されます。ツイッターアカウントも開設されているので、情報を追いつつ、オープンを待ちたいです。
【関連記事】
米国におけるデジタルメディアの動向とは? QUARTZ発行人 ジェイ・ローフ氏のプレゼンを聞いた

「QUARTZ(クオーツ)」という新興ビジネスメディアがあります。そのメディアの革新性について、海外では多く報道されているものの、日本での認知はほとんどありません。
メディアの輪郭では、注目するメディアのひとつとして、その特徴や細かい動向についてなど、これまで何度も取り上げてきました。
- 記者に「専門分野」は求められなくなるのか? 「Quartz」が志向する未来のメディア像
-
NarrativelyやBusiness Insiderの編集者を迎え、勢いを増す新興メディア「Quartz(クオーツ)」
先日、クオーツのパブリッシャー兼プレジデントを務めるジェイ・ローフ氏が来日しており、そのプレゼンを聞いてきました。米国におけるデジタルメディアの動向と広告の潮流についての発表で参考になりました。いくつか情報をシェアしたいと思います。
「もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう」
WIREDのパブリッシャー、アトランティックのパブリッシャーを経て、アトランティックメディアが2012年に新設したQUARTZのパブリッシャーになったローフ氏。自然とページが変わるデザインやネイティブ広告でも注目される同メディアは、現在、月間550万UUを記録しています。
ローフ氏はさまざまなデータを紹介し、ニュースをとりまく環境変化を伝えました。決まった時間にニュースを見る人は2002年の49%から、2012年には37%に減少する一方、すきま時間に見る人は2002年には49%、2012年には57%に増加しているとのこと。
そして、2006年、Twitterの登場をきっかけにさらに環境は変わりました。当時流行った「“If the news is that important, it'll find me.(もしそのニュースが重要なら、ニュースのほうが私を見つけるだろう)」という言葉も紹介。スマホやソーシャルの普及により、新聞のようなプル型メディアから、プッシュ通知などをはじめとするプッシュ型メディアに大きく変わっているとしました。
(アメリカでは)61%がニュースの閲覧にモバイルやタブレットを使用(41%がモバイル、20%がタブレット)、そしてPCが30%と、構図が逆転しているのです。新聞含め、紙メディアやウェブメディア初期は一面やホームページが機能していたけれど、いまでは60%のトラフィックがソーシャル流入なため、アンバンドル化が進んでいます。また、91%のエグゼクティブがニュースをシェアをしているという興味深いデータの紹介もありました。
500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化
QUARTZは、シェアとエンゲージメントに適応したコンテンツということも意識しているようです。500~800ワードはあまり読まれない/シェアされないという「クオーツカーブ」も紹介しました。

アメリカの新聞の平均的な記事の長さは、紙面の上から下までの一段の記事で、語数にして700語台である(日本語に訳すと2千数百字になる)。だが、『クオーツ』は、500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化している。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
短いものでは、インフォグラフィックや短編動画で記事を構成し、長いものはストーリーテリングやシリーズものの報道といったものになっています。クオーツカーブのように、データをもとに、メディア環境の流れをコンセプトに昇華できるのはすごく魅力的なことだなと思います。
「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」
デザインに関しては「Radically Simple」「Responsive Design」の言葉を挙げていました。バナーやハイパーリンクなどを入れず、コンテンツに集中してもらうことでエンゲージメントを高めるようにしていたり。だからこそ、ネイティブ広告も活きてくるのでしょう。
続いてローフ氏は、ROI(投資利益率)、モバイル、ソーシャルインプリフィケーション、デジタル、エンゲージメント、パブリッシャーなどの要素がネイティブ広告を後押ししたと紹介。「53%の消費者が、バナー広告よりもネイティブ広告を見ている」といったデータもあるそう。
効果的なネイティブ広告には、質、関係性、目立たないこと(Unobtrusive)、デバイスに最適化すること、透明性などの要素が挙げていました。質に関する実例としてゴールドマン・サックスが提供する「Macroeconomic outlook for 2014」を紹介していました。
プレゼン後の質疑応答セッションでは、本題にあまり関係ないけれど、クオーツのひとつの強みであるデータビジュアライゼーションツール「チャートビルダー」について聞いてみました。データジャーナリズムサイト「FiveThirtyEight」のネイト・シルバーをはじめ、著名なジャーナリストも活用しているようです。
チャートビルダーのおもしろいのは、Github上にソースがアップされ、オープンな活用を進めていること。日本だと誰か活用されているメディアやジャーナリストはいるのでしょうか。
会が終わったあとにも3つほど聞いてみました。
「バズフィードをはじめ、バイラルやキュレーションメディアについてどのように捉えていますか?」
「いまのところ英語圏を攻めていますが、スペイン語やフランス語、ポルトガル語などへの展開は考えているんですか?」
「現在、月間550万UUとのことで、グローバルエリートの読者獲得に成功していると思います。ここからのグロースがなかなか難しいと思いますが、どうなのでしょうか?」
公式での見解ではないので、ここでは回答の紹介を控えますが、これからのグロース戦略に関する考えは興味深かったです。
最後に、クオーツのネイティブ広告は体験としてまさに「ネイティブ」を体現するものであり、日本のトップブランドが海外向け広告の出稿先として、クオーツを選択する機会は増えていくのではないでしょうか。立ち上げ時は35名だったクオーツは今年には90名で運営する体制になるとのこと。今後の拡大にも注目です。
NarrativelyやBusiness Insiderの編集者を迎え、勢いを増す新興メディア「Quartz(クオーツ)」

今年に入り、メディア自体の評価はもちろんのこと、ニュースレターやソフトウェアでも様々なアワードを受賞しており注目されている新興メディア「Quartz(クオーツ)」。
今年に入って、人材も多く獲得しています。2012年にスタートしたメディアですが、現在は40名近くの記者や編集者らが世界中のビジネストピックをカバーしています。
公式ブログによれば、今月も2名が新しく参画しているようです。
1人目はテックエディターとして入る、Dan Frommer氏。Forbsでテクノロジー分野の担当記者を経験し、その後、Business Insiderの立ち上げや編集に関わり、自分でも「SplatF」というテックニュースサイトを運営していました。
クオーツがこれからますますテクノロジー分野に注力していくことが伺えます。
2人目は、Annalisa Merelli氏。NarrativelyやUN Global Pulseなどで編集者を務め、今回クオーツのアイデアチームでレポーターを担当するようです。
クオーツに関わるスタッフはBusiness InsiderやAOL、Wall Street Journal、TIME、GOOD Magazine、Conde Nast、Washington Post、AP通信、HuffingtonPost、WWDなど、紙・ウェブ、そして大手・新興メディア問わず、様々な人材が集まっています。
「NowThis News編集長、CNNへ移籍 人材流動性のある海外メディア」という記事でも書いたように人材の流動についてはこれからも見ていきたいです。
新興ビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」、2014年はアワード受賞連発

これまで様々な切り口で紹介してきた英アトランティックメディアが運営する新興ビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」。
- 記者に「専門分野」は求められなくなるのか? 「Quartz」が志向する未来のメディア像
- 月間読者500万人超えたデジタルメディア「Quartz(クオーツ)」が2014年に見据えること
- Quartz、「テレビの未来」をテーマにした新サイト「Glass」をリリース
ビジネスメディアとして2012年に立ち上がり、500万人を超える読者をかかえ、2014年6月にはインド版もできるという、勢いのあるメディアです。
2014年はすでに9つのメディア関連の賞を受賞しているとのこと。公式ブログの記事によれば、同メディアが開発したビジュアル作成に活用できる 「チャートビルダー」がデジタル関連メディア「Digiday」の出版技術を受賞(このツールは大手、新興メディアも利用している)。
また、広告イノベーション関連の賞をもらったり、Webby Awards(ウェビー賞:Web デザインの素晴らしさ、創造力、 有用性と機能性の優秀性を評価する有名な国際的な賞)ではニュースレター「Quartz Daily Brief」やQuartz自体が評価されたり、受賞カテゴリーは多岐にわたります。
メディアの設計、記事の質、ニュースレター、ネイティブ広告、そしてオープンソースソフトウェア、様々な視点で評価され、メディアの可能性を提示している新興メディアとして、これからもクオーツには注目していきたいです。
Quartz、「テレビの未来」をテーマにした新サイト「Glass」をリリース

「月間読者500万人超えたデジタルメディア『Quartz』が2014年に見据えること」「新興ビジネスメディア『Quartz』、広告売上がこの1年で426%増加」などの記事でたびたびお伝えしてきたデジタルメディア「Quartz(クオーツ)」。
このたび、新サイト「Glass」をリリースしたようです。扱うテーマは「テレビの未来」。メディアというよりは、関連リンクをシンプルに置いたサイトとなっています。
担当編集者はQuartzでシニアエディターを務めるZach Seward(ザック・スワード)氏。
Introducing http://t.co/BNqd2D6OP7 — Quartz's obsession with the future of TV. If you are similarly obsessed, Glass is for you.
— Zach Seward (@zseward) 2014, 5月 12
テレビやネット動画について、Fargoというツールをつかってメモしているのです。
少数でのキュレーションとコメントなどがコンテンツとなっています。「記者に『専門分野』は求められなくなるのか? 『Quartz』が志向する未来のメディア像」という記事でも紹介した特定テーマを追うクオーツのメディアスタイル。
そのテーマから、今回は「テレビの未来」を別サイトにして特化してみる試みなのでしょうか。引き続き、見ていきたいです。
新興ビジネスメディア「Quartz」、広告売上がこの1年で426%増加

メディアの輪郭でも数回紹介したことのあるアトランティックメディアが運営する新興ビジネスメディア「Quartz(クオーツ)」。
なんと2014年第一四半期における広告売上が前年よりも426%増加したことが分かりました。
ページビュー合戦での広告は読者のためにも、広告主のためにもなっていない、とクオーツの発行人を務めるJay Lauf(ジェイ・ローフ)氏は言います。
そんななか、クオーツの広告といえば、バナーではなく、記事と記事の間に挟まっているようなネイティブ広告です。
前述の期間での広告数も320%増加し、80%以上の広告主が繰り返し広告を出稿しているようです。 クオーツの広告には、一流企業やブランドが多く出稿していますし、ネイティブ広告の事例としては注目すべきメディアとなるでしょう。
ジェイ・ローフ氏の広告に関する考察は頭に入れておく必要があると感じます。ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
月間読者500万人超えたデジタルメディア「Quartz(クオーツ)」が2014年に見据えること

以前に、記者に「専門分野」は求められなくなるのか? 「Quartz」が志向する未来のメディア像、ウェブメディアの未来を探るーータイム紙が選ぶ「2013年のベストウェブサイト」から4つを紹介という記事でも触れた先進的なデジタルメディア「Quartz(クオーツ)」。
18ヵ月で500万人の読者を抱えるビジネスメディア
このメディアは、アトランティックメディアが2012年にモバイル/タブレットファーストを掲げたビジネスメディアとしてスタートしたものですが、立ち上げから18ヵ月経ち、1月の月間読者が500万人を抱えるまでになりました(12月にはメルマガの読者が5万人を突破)。
しかしながら、6割の読者がパソコンから読んでいるので、思ったよりモバイル/タブレットファーストの実現には至っていないよう。それでもレスポンシブデザインはきれいですし、タイムライン型のメディアとして、無限スクロールやスクロールで次の記事を読むと勝手にURLが変わる仕組みなども秀逸です。
そんなクオーツのトラフィックの半数がソーシャル経由とのこと。 パソコンからのトラフィックは9〜17時の日中のワークタイムが多いよう。
短長の記事を織り交ぜて特定のトピックを追う
特徴は、500ワード以下、もしくは800ワード以上という、短い記事とより長い記事をうまく混ぜて特定のトピックを追っていること。記事はすべて無料で読むことができ、スクロールすると時々ネイティブ広告が入り込んでおり、そこでマネタイズを図っています。
『クオーツ』は「オブセッション」という方式を取っている。常時、重要トピックを1ダースほど設定し、集中的に詳しく伝えている。これは雑誌スタイルとも言える。そしてまた、「クオーツ・カーブ」という編集哲学に基づき、記事を送り出している。
アメリカの新聞の平均的な記事の長さは、紙面の上から下までの一段の記事で、語数にして700語台である(日本語に訳すと2千数百字になる)。だが、『クオーツ』は、500語よりも短い記事と、800語よりも長い記事に特化している。
この哲学に行き着いたのは、トラフィックを分析したところ、デジタルでよく読まれるのは短い記事か長い記事のどちらかだという分析結果を得たからでもあり、700語台の記事は無駄が多いと考えるからでもある。
広告売り上げの額は分かりませんが、2013年の第1四半期から400%成長を遂げているとのこと。
2014年はデータビジュアライゼーションと米以外の読者獲得
2014年はデータビジュアライゼーションにも力を入れていくようです(現状でも多くの記事にインフォグラフィックやチャートを見かけます)。
同時に、アメリカ以外の読者獲得も目指すのだとか。1月は40%以上がアメリカ以外で、そのうち15%がイギリスからだったとのこと。現在は30名以上の記者を抱えているのですが、昨年9月にイギリスのジャーナリストも雇用し、同国での読者開拓も行っています。
現状は、まだまだパソコンからの流入が多いようですが、今後スマホやタブレットユーザーが増えるにつれて、クオーツの戦略は成熟していくことでしょう。先進的なデジタルメディアとして、その戦略を追うことで参考になることは多いと思います。
【参考】
記者に「専門分野」は求められなくなるのか? 「Quartz」が志向する未来のメディア像

「No more "beats"(「専門分野」はもういらない)」
これは、Atlantic Media社のデジタルメディア「Quartz(クオーツ)」が掲げるメディア像の一つです。
記者と言えば、経済、社会、政治など特定の専門性のもと取材を重ね、記事をつくっていくことが求められていました(いまも求められることが多いと思います)。
ストレートニュースではなく特定テーマを追う
しかし、同メディアは「記者に専門分野は求められなくなる」と考え、メディア設計を行っているようです。500語以下のショート記事と800語以上の長めの記事を出していることでも知られていますが、その方式についても独特の編集方針を持っています。
『クオーツ』は「オブセッション」という方式を取っている。常時、重要トピックを1ダースほど設定し、集中的に詳しく伝えている。これは雑誌スタイルとも言える。そしてまた、「クオーツ・カーブ」という編集哲学に基づき、記事を送り出している。
アメリカで躍進中のビジネスニュースサイト『クオーツ(QUARTZ)』 その編集方針と経営戦略を聞いた | New York Sophisticated | 現代ビジネス [講談社]
この「オブセッション」とは、一定期間追いかけている特定のテーマのようなもの。現在のテーマは、「The mobile web」「Digital money」「Energy shocks」「Euro crunch」「China’s transition」「The future of finance」「The cloud」「How we buy」「Debt」「Borders」「Space Business」「Abenomics」「US Immigration」となっています。
経済系が多いのはビジネスメディアなのでもちろんですが、意外とデジタル系が多かったり、宇宙ビジネスなどもカバーしていたりと、「オブセッション」の変化を見ていくのも面白いかもしれません。

クオーツ記者はある程度「オールラウンダー的」
さて、冒頭の記者の専門性の話に戻ります。エコノミスト紙を経てクオーツでグローバルニュースエディターを務めるGideon Lichfield氏は次のようなことを言ってます。
決まった専門分野を持つ代わりに、我々は絶え間なく進展する「事象」を集めるニュースルームづくりしています。
「金融市場」は専門分野ですが、「金融危機」は事象です。「環境」も専門分野ですが、「気候変動」は事象です。(中略)我々はこれらの事象のことを「オブセッション」と呼んでいます。
クオーツはロイターをはじめとする通信社のコンテンツをアグリゲーションし、速報記事をカバーしています。そのため、この「オブセッション」に力を入れることができているのです。
ニュースを専門分野ではなく、事象で捉え、点ではなく、面でのコンテンツ発信を意識すること。さらに、Gideon Lichfield氏は、ニュースを事象で捉えることは分野を横断的にまたぐこともあるので、クオーツの記者はある程度「オールラウンダー的」にならざるを得ないとも言っています。
分野横断的にニュースを捉えていくこと
記者に専門分野は求められなくなり、ジャンル横断的になっていくのでしょうか。クオーツの掲げる「オブセッション」を含め、これからのメディア/記者像について考える一つのきっかけになればと思います。
専門分野を超え、分野横断的に「オブセッション」としてニュースの捉えるクオーツの志向するメディア像については引き続き目を向けていきたいところです。
最後に、参考までにクオーツの特徴をいくつか挙げておきます。ウェブメディアを設計する際のヒントがあるかもしれません。
- ページ型でなくストリーム型
- バナー広告でなくネイティブ広告
- 記事下部でなくパラグラフごとのコメント
- レスポンシブWebデザインの採用(モバイル/タブレットを意識)
- 速報はアグリゲーションでカバーし「オブセッション」に注力
【参考記事】
- 5 things journalists should know about Quartz, Atlantic Media’s business news startup
- ON ELEPHANTS, OBSESSIONS AND WICKED PROBLEMS: A NEW PHENOMENOLOGY OF NEWS
http://newsthing.net/2012/09/16/quartz-obsessions-phenomenology-of-news/