メディアの輪郭

更新するだけ健康になれる気がしています

「これからのメディアはプロセスや共同体、生きる空間でもある」 佐々木俊尚さんとバズフィードが捉える未来のメディア像

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「LIFE MAKERS」トップページより)

メディアは単なる「情報を流す存在」ではなくなっている

先週末、佐々木俊尚さんの有料サロン「LIFE MAKERS」のオープニングプレイベントでスマートニュースでメディアコミュニケーションディレクターを務める松浦茂樹さんと佐々木さんのトークを聞いてきました(このブログ「メディアの輪郭」は賛同メディアとして参加しています)。

佐々木さんがイベント冒頭で「メディアはもはや媒体ではなく、プロセスであり、共同体であり、生きる空間・・・」と現在(そしてこれから)のメディアを表現していたのに共感しました。この言葉について取り上げてみます。

サロンのページではメディアについて以下のように書かれています。佐々木さんはメディアとライフスタイルと時代精神が結びついているものとして捉えていることはさすがです。

メディアは単なる「情報を流す存在」ではなく、私たちのコミュニケーションやコミュニティをすべて包み込んで、ひとつの大きな空間を作りあげようとしています。すなわち私たちが生きているこの世界そのものの写し絵になろうとしてきています。それが現在進行形のメディアイノベーションの本質なのです。

佐々木俊尚PRESENTS【LIFE MAKERS】

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「バズフィードはただのサイトではなく、流通までのプロセス全体」

「メディアはもはや媒体ではなく、プロセスであり、共同体であり、生きる空間・・・」という言葉を聞いて、思い浮かべたメディアは、バズフィードでした。なぜかというと、CEOのジョナ・ペレッティ氏が「バズフィードはただのサイトではなく、流通までのプロセス全体」という言葉を残しているからです。

「コンテンツがどこで生きるべきかについて、固定観念はもっておらず、アプリなのかウェブなのか、モバイルなのか、読者にとってなにがベストなのかをいちばん気にかけている」

「ただのサイトというよりは、ウェブやモバイル、アプリのうえでニュースや話題なもの、暮らしなどのコンテンツを流通させるプロセス全体」

「バズフィードはただのサイトではなく、流通までのプロセス全体」——創業者が語る - メディアの輪郭

月間訪問数が2億を超えるバズフィードは、脱中心・分散型メディアの例として挙げられることがあります。分散型メディアとは、これまでのメディアを束ねてポータル化する動きや自社サイトでコンテンツを見てもらうのではなく、各プラットフォーム上に最適化されたコンテンツを流すようなメディアのあり方です。

バズフィードであれば、フェイスブックやピンタレスト、ツイッターYouTube、最近では各種メッセンジャーアプリなどに合わせたコンテンツ開発・流通を考え抜いています(「BuzzFeed Distributed」という部門まである)。今回のイベントでは、自社サイトをなくした、短い動画ニュースメディア「NowThis」の名前も出ていました。

分散型については、テッククランチの「BuzzFeed CEO曰く『リンクのシェアは時代遅れ。コンテンツを流せばチャンスが広がる』」という記事もかなり示唆に富む内容なので、ぜひチェックしてみてください。

ここでは記事(article)といった言葉ではなく、「コンテンツ」という言葉を使っているのがまさにバズフィードの強みだと感じました。記事をはじめ、テキスト、写真、GIF、映像、スライド・・・さまざまなコンテンツを揃え、流通経路に合わせて最適化できる体制があるのはすごいです。シェアするときのモチベーションに着目している点などとてもおもしろいのではないでしょうか。

コンテンツをシェアする際に付される文言を、BuzzFeedでは「Share Statement」(試訳:共有見出し)と呼んでいるそうだ。記事などをシェアする際に、自分で付加する文章のことだ。Peretti曰く、「Share Statement」は記事のもともとの見出しなどよりも重視すべきものだとのこと。この「Share Statement」の分析により、利用者が「なぜ」(なにを、ではなく)コンテンツをシェアしたのかを理解することができるからだ

BuzzFeed CEO曰く「リンクのシェアは時代遅れ。コンテンツを流せばチャンスが広がる」 | TechCrunch Japan

メディアはいま、生活に溶け込もうとしている

佐々木さんはTABI LABOというモバイル×ソーシャルに特化したメディアの共同編集長を務めていることもあり、海外における最先端のメディアのトレンドを正確に噛み砕いているのでしょう。佐々木さんの場合はシェアリングエコノミーの文脈をはじめ、メディアのあり方がライフスタイル空間そのものといった印象をもち、この点が特徴的でした。

最後に、いまメディアは生活に溶け込もうとしている、そうでないと、メディアとしての役割や機能を果たすことがむずかしくなっているのではないかと思いました。たとえば新聞なんかは、パッケージの価値や編集の技術などは評価すべきですが、あれほど大きなサイズの紙束を広げて、めくって読まなければいけないメディアなので、手のひらでの情報消費が盛んな時代にはどんどん厳しくなっていくのでしょう。

いち編集者として、コンテンツづくりに目を向けることは変わらずですが、受け手が情報を閲覧する環境への意識や、暮らしへの自然な溶け込み方を考えないといけないなあと改めて思いました。

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Yahoo!ニュースはどのように記事の価値を判断するのか? ソーシャル&スマホ普及がもたらす「ニュースの変容」

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ヤフートップには1日100本のニュースを掲出

先日、スクーにて「何が『ニュース』なのか Yahoo!ニュースに学ぶ価値判断と『見出し力』」という授業が開講されていました。登場したのはヤフーのニュース編集部リーダーの伊藤儀雄さん。編集部の体制やトピックス編集方針・判断基準のみならず、ニュースとはなにか、といったことを改めて考えるきっかけになる授業でした。

Yahoo!ニュースのトップは1日約100本の記事が掲載されるそうです。300以上の提携メディアから毎日4000本以上のニュースが届くなかで、人が読めるものは限られているため、記事の重要性と本数のバランスがとれているのが現状100本程度とのこと。

1996年7月にスタートし、いまでは月間約100億PV超え、スマホからのトラフィックが半数。2014年のブラジルW杯がきっかけで、スマホ経由が伸びていったのは興味深いことです。東京、北九州、大阪、八戸の4ヵ所体制・4交代制(24時間シフト)の編集部は約25名で構成されているそう。トップの編成は30分に1回(1〜3本)ほど変更され、約2時間でトップ記事8本がすべて変わるといったやり方。

見出しの閲覧だけで、政治知識の学習に効果

やはりエンタメとスポーツがよく読まれるそうですが、硬派なニュースも掲載しているYahoo!ニュース。ヤフーと国立情報学研究所による共同調査によれば、見出しを閲覧するだけでも、政治知識の学習に効果的という結果が出ています。

  • Yahoo! JAPANのトップページに掲載される「Yahoo!ニュース」のトピックス見出しを閲覧するだけで、個別の見出しをクリックして記事自体を読まなくても、政治に関する知識の学習効果が認められました。これは、「Yahoo!ニュース」が政治に関する知識を社会に広く伝達するという重要な役割を担っていることを示しています。
  • Yahoo!ニュース」の閲覧は、政治的関心の高い層と低い層の、政治に関する知識差の縮小に効果があります。特に、政治に関心の低い層が政治的リーダーのパーソナリティについて学習する場として機能しました。
  • これらの結果は、ニュースをタイムリーに整理・選定し、バランス良く掲載することで新たな価値を生んできた「Yahoo!ニュース」とその特性、および編集姿勢がもたらした結果であるといえます。

「Yahoo!ニュース」は政治に関する知識の学習に効果的
~ トピックス見出しの閲覧が有権者の知識差の縮小に貢献 ~

編集方針は、公共の利害にかかわる重要な出来事である「公共性」と世の中の多くの人が知りたいと思っている事象「社会的関心」の2つのバランスを重要とし、7つの観点からニュースの価値を判断しているとのことでした。

7つとは、1. 速報性/時事性/今日性、2. 真実性/信頼性、3. 新奇性、4. 公益性、5. 認知度、6. 表現力、7. 品位。どんなニュースが価値があるんだろう、と思ったときに、こういったポイントで考えてみるのは有用だと感じました(もちろん価値あるニュースだからといってすべてのポイントが含まれるというわけではないです)。

ニュースを変える「ソーシャルとスマホ

また、伊藤さんはニュースの変容について「ソーシャル&スマホ化」という点を挙げ、発信者、受信者、環境という3つに対して変化が起きていると説明していました。

  • 発信者の変容:担い手の爆発的増加、ニュースの種類や質が多様化
  • 受信者の変容:メディア接触回数の増加、情報ニーズの多様化
  • 環境の変容:情報消費のサイクルが加速、確度や質の高い情報が流通拡散

新聞雑誌テレビなどマスメディア全盛の時代に比べて、現在のスマートフォンソーシャルメディアが普及する時代においては、友人からの通知などのほうがニュースといったことも言えそうです。そういう意味では、メディアの役割のひとつであるアジェンダセッティング(議題設定)をどのように機能させていくのかは大きな課題になるなと思いました。

Yahoo!ニュースによる授業はこれ以外にもあるようですので、メディアにかかわる方はチェックされるとよいかもしれません。伊藤さんが書かれている「ソーシャル時代の『ニュース』と格闘する」というコラムも合わせて読むとさらなる理解につながるのではないかと思います。

Yahoo!ニュースによるNewsHack術(全5回) - schoo WEB-campus(スクー)

男性ライフスタイルメディア「Thrillist」創業メンバーがパパ向けメディア「Fatherly」開始

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今週、Thrillistの創業メンバー2名が新しいメディアを立ち上げたというニュースが多くの海外にメディアによって報じられていました。Thrillistについては以前その成り立ちや収益化について書いたことがあります。

立ち上がった「Fatherly」という洗練されたデザインのサイトは、名前の通りパパ向けであり、Thrillistのようにメディアとコマースの融合を目指しているようです。

Thrillistではもっと若く、独身男性向けであるため、年上をターゲットにしているように見えます。最近、200万ドルを調達しているのですが、レーラーベンチャーズがやはり入っていました。代表のケン・レーラーはハフィントンポスト会長から現在はバズフィード会長、マネジング・ディレクターでありケン氏の息子のベン・レーラーはThrillistの代表なので当然の流れなのかもしれません。

サイトの工夫としては、子どもの年齢や自分の年齢がタグとして設置されていること。その年齢ならではのコンテンツをすぐ見つけることができそうです。日本ではキュレーションメディアなどで女性ファッションやママ向けメディアというのはありますが、なかなかパパ向けとなると少なそうです。日本でもこういった流れが来るのか注目していきましょう。

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またThrillistについてDigidayで紹介されていたのおまけ的に取り上げます。メディアであり、コマースサイトでもあるThrillistが注力するブランドコンテンツ。「The CoLab」という研究部門に16名のチームが集まり、ブランドや競合などの調査・研究をおこなっているとのことです。

調査からはいろんなことが分かり、1記事に30個のブランド名を入れることが購買意向を最大にさせるといった編集面のデータはおもしろそうです。編集、デザイン、広告などでデータドリブンの意思決定をするためのラボというかリサーチ機関があるのはうらやましいなあと思います。

新しいマスの発見か、濃い信者コミュニティか? これからのメディアが生き残るための2つの方向性

これからのメディアのあり方、生き残り方。スマートフォン時代にメディアが成立していたさまざま前提が変容しているなか、お金まわりを含めた(Web)メディアの持続可能性のようなことを最近考えたり、いろんな人と話すことが増えたような気がします。

先月、下北沢の本屋B&Bで若手編集者のトークイベントではバズフィードのような各プラットフォームへの最適化をしてネイティブ広告で収益を上げるメディアかコミュニティが支えるメディアであったり、有料サロンのようなものが有効なのではないか、といったことも話したりしました。

つい先日「佐藤詳悟×佐渡島庸平×古川健介×宇野常寛×【司会】高宮慎一 『クリエイティブの生存条件』」というヒカリエでのイベントを聴きにいったのですが、ここでは宇野さんが「これからのコンテンツはディズニーと地下アイドルに分かれていく」「カルトな固定客の共同体をいかに開くかのゲームをやるか、文化を趣味で消費する人を増やすしかない」と語っていました。

以下、メモの一部を記してみます。

インターネット時代、何に対してお金を払っているのか

インターネット時代、特にスマートフォンが普及してすきま時間にさまざまなエンターテイメントが消費されるようになり、コンテンツ自体へのマネタイズがむずかしくなってきました。一方、音楽業界ではCDよりもライブやフェスなどが好調で、体験にお金を払うようにはなっているのではないか、という視点もよく話題になっています。

佐渡島さんは「インターネット時代には何に対してお金を払っているのか」という問いを立てました。アマゾンのマーケットプレイスを例にとれば、価格ではなく便利さであったり。「『満足』というものに支払っているのではないか。ユーザーの実感値に応じてそれぞれが最大を払うということです」。

佐藤さんは「ネットでは課金のポイントがずれている。金払いが悪くなった部分、よくなった部分もあるのでは」と言っていました。「ソーシャルゲームが急成長して、ガムの売上が下がった」というエピソードから、スキマ時間の奪い合いには限界があるため、娯楽時間よりは、もっと生活に密着なところでの戦いが必要になるとの意見でした。

例に挙げられたのは「自己実現」。古川さんは海外でユーザー課金に成功しているメディアは自己実現を学ぶことができるようなサイトがあり、国内ではスクーがそういうポジションにあたると紹介しました。コンテンツ消費について佐渡島さんは(このメディアやコンテンツでなければいけないと)こだわりのある人は5%くらいで、残りの95%はなんとなく時間をつぶしていると捉えており、自己実現などで時間を奪っていくには参加型がカギだと述べました。「物販だけでは売れない。キャラクターのTシャツを売るなら、たとえば2種類用意して、みんなに投票してもらうなど物販自体を参加や応援、競争意識に変えていく必要がある」。

カルト的なコミュニティはメディアの突破口なのか

今回のイベントでは、「カルト的なコミュニティ」といった言葉が何度か聞かれました。つまり、クリエイターの信者が集まる濃いコミュニティにアウトプットを提供し、お金をもらう、といったマスメディアとは真逆の場所でしょうか。ただ、内輪化・タコツボ化してしまう恐れがあります。佐渡島さんは「タコツボ化したとしても時代のタイミングや普遍性をもってヒットしていくのではないか。その一回で顧客が生まれて、経済圏が発展していくこともありえる」との認識でした。

高宮さんからは、コンテンツをメディアに合わせて最適化する話が出ました。動画ではMCN(マルチチャンネル・ネットワーク)、グーグル時代の検索型の課題解決サイトではnanapiなど。ただ、高宮さんは「コンテンツをつくっても、またSNSごとにつくりかえないといけない」と指摘。サイト向けのコンテンツがそれぞれのSNSにとって最適なかたちでないことがあるからです。

古川さんは海外の動画ニュースサイト「ナウディス」が自社サイトを持たず、ほかのプラットフォームに最適化している事例を共有しました。「今後は1時間の動画をつくってもYouTubeVineに合わせて自動的に適応するようになると思う。コンテンツをつくった人がこう見せたいというのが通用しない時代になっている」。

「固定ファンを囲うことは作家の表現にとって不幸なこと」

いちばん頭に残ったのは、佐渡島さんがいまの出版社にはコンテンツに興味のある人が入ってきているが、ビジネスモデルをつくった人たちはいなくなっているという点。

新聞や雑誌は当時のライフスタイルに最適な媒体でありビジネスモデルだとしたら、現在版へとアップデートする必要が生まれてきます。しかし、長らく同じビジネスモデルが通用してきた業界では、しばらくの間は中身をつくる人ばかり集まり、時代に呼応するビジネスモデルを発明できなくなっているのです。スマホのタップさえも面倒な時代というと極端かもしれませんが、現代の暮らしに適応したビジネスモデルやメディアのかたちづくりが早急に必要になってきています。

宇野さんは「新しいパブリックをつくること」が必要と発言。佐渡島さんは「各作家のコミュニティをつくる。それ以上は出てきていない」とまだ答えを出せていないようでした。古川さんは「かなりのコンテンツがコミュニケーションにとられてしまった。すごくおもしろい映画と彼氏からのメールが同じくらいの価値になってきている。ニコ動みたいに文脈と文化が生まれることでコミュニティをつくることが必要」と述べました。

ただ、カルト的なコミュニティでは才能やクリエイティブをつぶす可能性があることも議論されました。宇野さんは「固定ファンを囲うことが作家の表現にとって幸せなのか。不幸なことだと思う」、佐渡島さんも「カルト的なコミュニティからは新しいものが生まれない。ヒット曲をここでも歌ってとか、あの続編を書いてと言うファンだけではダメ」、高宮さんは「一度フォーマットができると、劣化版や類似のものが生まれ続ける。そうなるとクリエイティブの源泉となる作家を前線に出し続けられるかが問われる」とそれぞれの意見を交換しました。

別の角度から佐渡島さんは「映画はもともとはオリジナルに撮影したものだったが、マンガや小説などを原作にするようになってしまった。新人から育てることやクリエイターに危機感を与えるようなことが減ってきている」と現状の課題を提示。たとえば、別の新人が生まれたら、ほかの才能が休んで新しいチャレンジをしたり。「サザンオールスターズが何年も休めていたのは、アミューズがほかの才能を見つけて育てていたから」。才能たちが休んだり非連続な活動、または違う分野の知見を身に付けたりする期間は必要なのかもしれませんね。

ブログはファッション、ニコ動はパッション

新しい才能の発見において、はてなやnoteなど日本のブログサービス/メディアプラットフォームの問題にもつながるという宇野さんは「固有名詞が出てきていない」とその共通点をまとめます。「作品や人物名など固有名詞を出せたのはニコニコ動画。ブログは人単位だが、ニコ動は動画にファンが付いてコンテンツ単位のコミュニケーションが生まれていた。これがヒントになる」。

佐渡島さんはこれに対して「ニコ動はエンタメ分野の発信だったからできていたが、個人単位で同じようなジャンルを発信できる場所があれば変わってくるのではないか」と反論。宇野さんの「人単位でやっている限りコンテンツは鍛えられない。ドワンゴはお客さん(具体的な新しい日本人像)が見えていたのがよかった」という発言を受け、佐渡島さんは「お客さんが見えていることは、コンテンツづくりにとって大きい」と同意。「昔の雑誌では編集長やほかの作家がもっている熱がコンテンツ制作に影響を与えていたが、最近では雑誌からも消えてきている(カラーが弱まっている)」と続けました。また、宇野さんはニコ動ではランキングによってクリエイターの競争意識が生まれていたことが重要だった、と述べました。

宇野さんは最終的に、「カルトな固定客の共同体をいかに開くかのゲームをやるか、文化を趣味で消費する人を増やすしかない」という結論を出しました。だからこそ、文化を求めていない人にマンガや音楽などのコンテンツとの接点をつくり、楽しんでもらうための施策をひたすら考え続けなければいけなくなってくるのでしょう。佐渡島さんは「世の中が便利になればなるほど、面倒なことや非効率的なことに対して幸せを求めたりする。極端に面倒くさいコンテンツをつくることが挑戦になる」と語りました。

全体を通して、宇野さんが「日本の雑誌は戦後のカルチャー、特に中流のサラリーマンの文化と結びついている。これからは、新しい日本人のライフスタイルに入れこむチャレンジが必要」という旨の話していたことが印象的でした。スマホでのスキマ時間消費がさまざまなメディアのあり方を問い直し、存在自体が揺らいでしまう時代の(ビジネスモデルを含めた)メディアを発明するためのヒントがこのイベントの随所にあったように思います。また、佐渡島さんが準備中の「どんなものにもデータを宿すことができる」新アプリのデモもとてもワクワクするものでした。リリースが楽しみです。

イベントのほぼ全容が気になる場合は以下のTogetterまとめなどに目を通してみるとさまざまな気付きや発見があるかもしれません。

ニューヨーク・タイムズのApple Watch対策は「1行ストーリー」

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photo credit: Apple Watch via photopin (license)

2015年4月10日の予約、24日の発売が近づきそわそわしている方もいるかもしれない「Apple Watch」。各メディアも少しずつウェアラブルデバイスへの対応が求められてくるかもしれません。

近々アプリをアップデートするというニューヨーク・タイムズでは、Apple Watch対策は「1行ストーリー」を用意するとのことです。ほぼタイトルというか要約のようなものですね。

通知や行動促進といった意味合いが強くなりそうなウェアラブルデバイスなので、どのような工夫があるのか楽しみではあります。パッと見で理解できるようなタイトル編集が求められてきそうです。以下のような表示になるとのこと。

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テキストはもちろん絵文字のようなものも見受けられます。フォントの種類や大きさもさまざまテストしていくようです。Google Nowにおけるメディア提携なども合わせて注視したい動向になりそうですね。

Android端末の「Google Now」に、Googleサービス以外のアプリ(インストールしているもの)からのカードが表示されるようになる。まずはクックパッドやスマートニュース、Airbnb、Lyft、Ebayなど30以上のアプリが参加した。

「Google Now」で外部アプリのカード表示へ クックパッドやスマートニュースも - ITmedia ニュース 

米ニュースサイト「バズフィード」が将来有望なライターのためのフェローシップ開始

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月間訪問数が2億人を超えるアメリカの大手ニュースサイト「バズフィード」が将来有望なライターを育成するためのフェローシップ開始するようです。サイト上で発表しています。「BuzzFeed Emerging Writers Fellowship」と名付けられたフェローシップは、次世代を担うライターの発掘や育成のために設けられました。

4ヵ月のプログラムでは、ライティングや編集スキルについてはもちろん、キャリアに関するメンタリング、金銭的なサポートまであるようです。エッセイライティングやカルチャーに関するルポなどを集中的に学び、ライティングワークショップやメディア業界で働く編集者やライターとのディスカッション、フリーランスとしての食い方なども用意。

選出されたライターはBuzzFeed Newsのシニアエディターとともにニューヨークで働くことになるそうです。金銭面については1万2000ドルを給付予定。フェローシップから生まれた記事はバズフィードでも掲載される予定とのことです。スキルや姿勢を学び、実際にバズフィードという巨大メディアで記事も掲載される、駆け出しのライターなどにとっていい条件な気がします。

フェローシップの合格者は10月に決定し、それから4ヵ月の2016年の1月までフルタイムで働く予定。志願者はアメリカでの労働認可を受けている人でなければないといけないそうです。

今回の募集記事を投稿しているのは、バズフィードでLGBTを立ち上げ、現在はLiterary Editorを務める方。2013年秋には「ブックエディター」という役職も設置していたバズフィードが文学・文芸にもぐっと力を入れていくようです。Electric Literatureのインタビューによれば、2016年3月には文芸カテゴリーを設けるとのこと。

今回のフェローシップは考えていることのはじまりにすぎず、文学・文芸のムーブメントを同メディアにもってきたい、という発言もあるため、楽しみな動きになりそうです。21世紀の文芸誌のあり方を見つけることを目標に据えながら、まずは短いフィクションや詩、エッセイなどを届けていくことを目指します。フィクションもノンフィクションも読み物がバズフィードで息を吹き返すとしたら、出版業界にも大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。

ところでバズフィードは昨年10月、ジャーナリズムの名門であるコロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールが共同で調査報道のフェローシップを開始しています。こちらはメディア機関にマイノリティの人材が少ないことを問題意識として置いていたようですが、今回のフェローシップと合わせてメディア業界の課題にチャレンジしていることは評価できるのではないでしょうか。

またハフィントンポストも同様に、「米ハフポストがクラウドファンディング実施ーー『ファーガソンの暴動』の継続的報道に向け」という投稿で紹介した通り、クラウドファンディングを通じたライター育成をおこなったことがありました。

Webメディアは紙媒体と違い、基礎を学ぶ機会があまりなかったり、原稿料が安かったり、じっくり時間をかけた原稿がなかなか出せないこともあります。新聞や出版社などが力を落としている海外において、「ライター育成」というのは大きな課題のひとつでしょう。また、あまり収益にはつながらないけれどエンターテイメントとしてはニーズがありそうな文芸コンテンツの拡充を新興メディアが進めていくというのも重要なポイントだと思いました。

ぼく自身がWebメディアしかやったことがなく、編集やライティングをじっくり学んだことがないため、国内外のWebメディアがどのように実力のあるライターを育てていくのかはとても気になるところです。 

スナップチャットにメディアと広告が集まる理由——米利用者の7割が18〜34歳、「Discover」は1メディアにつき100万人が閲覧

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(左:スナップチャットの「Discover」ページ、右:CNNの国際ニュース)

開封すると特定時間が経つと消える動画メッセージアプリ「スナップチャット」が1月末に発表した新サービス「Discover」。CNNやYahoo! NEWS、National Geographic、VICEなど影響力のあるメディアが参加したことでも話題となりました。

「Discover」の投稿は24時間は消滅しないというもので、メディアのアイコンをタップするだけで動画ニュースを閲覧できます。バズフィードは交渉中でまだ入っていないですが、参加となったらさらにおもしろい展開となりそうです。利用シーンについては公式のYouTube動画がアップされているので、ぜひご覧になってみてください。 

さて、スナップチャットにこれだけの有力メディアが集まるのには、その規模とユーザー層にあるかと思います。規模はすでに1.7億人のアクティブユーザーを抱えています。

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(出典:ComScoreより)

ユーザー層については、ComScoreのグラフが一覧性があってわかりやすいです。18〜24歳の割合は2位のインスタグラムの倍ほどの45%。25〜34歳の割合はインスタグラムと並びトップとなっており、若い利用者層をデータでも実感できます。

アメリカにおけるスナップチャット利用者の7割以上が18〜34歳というのは驚異的です。35歳以上の割合の少なさも強調されるべき点かもしれません。

ちなみに、ブルームバーグの記事によれば、「Discover」に配信される動画やニュースの閲覧者は1メディアにつき平均100万人。「Discover」の広告は1000回の閲覧数につき100ドルといった設定という話もあります。また、広告はレベニューシェアとなるようです(媒体側の広告の場合は収益の7割が媒体へ、スナップチャットが広告を出す場合は半分ずつ)。これらのようなことから、広告出稿の場としてもどんどん魅力的になっているのでしょう。

メディアや広告、ストーリーテリングの再発明が起きそうな予感がしますね。

ニュース解説メディア「Vox」が初となるグラフィックエディターを採用

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ニュース解説メディア「Vox」が初となるグラフィックエディターを採用したと、The Drumなどが報じています。Voxに参画するJavier Zarracina氏はロサンゼルス・タイムズでグラフィック&データエディターの職に就いていた人物。

ボストンマラソン爆弾テロ事件の報道ではピューリッツァー賞受賞チームの一員だった彼は新天地では、動画チームとともに、動画におけるグラフィック活用をすすめていくようです。

Voxはこないだのオバマ大統領インタビューでも動画×グラフィックの力を見せていましたし、記事以外でのグラフィック活用はこれからのメディアにおいて注目したい点です。VoxのYouTubeチャンネルをみると、8万人以上が購読し、4000万回弱の再生回数を記録しています。以下の媒体紹介動画もかなりかっこいい仕上がりです。

日本でもニューズピックスにはインフォグラフィックエディターの櫻田潤さんが加入している事例があります。ニューズピックスの場合はVoxとは違い完全にモバイル最適化でのグラフィック文法を発明しようとしていることが特徴だと思います。

今回のZarracina氏は自身のポートフォリオにて、ロサンゼルス・タイムズをはじめさまざまな媒体でのグラフィックやデータビジュアライゼーションを公開しています。関心ある方はのぞいてみては?

 

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Mediumが収益化に本腰か? Vox Mediaの広告営業トップが参画

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ブログプラットフォーム「Medium」が新メディア「Bright」を公開——教育イノベーションを伝える」という記事でMediumの最新の動きを伝えたばかりですが、関連してもうひとつ。

上記の記事でもスポンサードメディアを立ち上げていることを紹介していますが、Mediumというサービスで気になるのはどのように収益をあげていくのかという点。このたび、Vox Mediaで広告営業のトップだったJoe Purzycki氏の参画が発表されています。

AdAgeによれば、同氏の役職はブランドパートナーシップ担当。企業のスポンサー契約や広告モデルを確立することになるのでしょう。そういえば課金をやっていないのはMediumらしくていいなあと思います。

Mediumでは一部の寄稿者に原稿料も出しているという情報もあり、そういったコストを含めいろいろお金が出ていそうです。Digidayの記事では99%の投稿者にはなにも支払われていないとのこと。規模としては、Digidayの別の記事ではMedium側はユニークユーザー数を2500万だとしているそう(comScoreでは300万ほど)。

ちなみに、Purzycki氏はVox Mediaに5年在籍、広告営業チームを率いて、2014年の年間総売上は5,500万ドル(約65億円) という数字を出しています。プラットフォームとパブリッシャーの交差点を行くMediumが良質なコンテンツにお金が還元していくために、どのような収益化の取り組みをおこなっていくのか、ただただ注目しています。

 

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ブログプラットフォーム「Medium」が新メディア「Bright」を公開——教育イノベーションを伝える

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ブログプラットフォーム「Medium」が3月31日、新メディア「Bright」を公開しました。テーマは「Innovation in Education」、教育におけるイノベーションです。

編集を担当するのは、課題解決型ジャーナリズムを提唱する「Solutions Journalism」に務めるSarika Bansal氏。ハーバード大学卒、マッキンゼー勤務やニューヨークタイムズでのインターンを経て現職という人物です。

ピンタレストが子どもたちの授業にもたらす革命、科学的にみた完璧な教室、戦争ゲームの影響で歴史専攻した人の話・・・など興味深い切り口のメディアが揃っています。このメディアでも、課題解決寄りのストーリーを提供していくようです。「The New Venture Fund」からの資金提供、ゲイツ財団のサポートなどを受けながら運営していくとのことで、教育に関心のある方は読んでみてはいかがでしょうか。

Mediumについてはこれまで何度か伝えてきましたが、当初のプラットフォーム戦略からどんどんと編集の色を強めています。いわゆるプラティッシャーという志向です。

Mediumの思想については、WIREDの「ミディアムは世界の何を変えるのか:Twitterをつくった男の次なる挑戦」という記事にくわしいです。「新しいアイデアを生み出す」、そして「イデアは交換したほうが、社会全体がより良い場所になる」ということだそう。

「いま、この世の中に生まれるメディアの量は多すぎる。それに比べて、新しいアイデアの創造は足りない。いまぼくらが暮らす世界を説明し、よりよい決断を下すための新しいアイデアを生み出すために、何ができるか、というところが起点になったんだ」

「ミディアムを立ち上げようと思ったときにもっていたヴィジョンは変わらない。そのヴィジョンを実行に移すための商品は大いに進化してきたけれど。立ち上げのときに実現したかったヴィジョンは、人がひとりで考えるアイデアよりも、人が集まったときのほうが良いアイデアを思いつくことができる、という考えが軸になっている。アイデアは交換したほうが、社会全体がより良い場所になる」

ミディアムは世界の何を変えるのか:Twitterをつくった男の次なる挑戦

実際のところ、Mediumが立ち上げている特定のジャンルに絞ったメディアは記事も強烈で濃いです。ジャーナルメディア「MATTER」(正確には買収してリニューアル)、テックメディア「Backchannel」、音楽メディア「Cuepoint」、 スポンサードメディアにはBMWをスポンサーに迎えた「Re:form」やホテル会社マリオット・インターナショナルがスポンサーについた「Gone」 などがあり、今回の「Bright」を加えると6つとなります。

今後どのようなジャンルを押さえていくのか、そしてBackchannelでは『グーグル ネット覇者の真実』『マッキントッシュ物語―僕らを変えたコンピュータ』などの著書でも知られるジャーナリスト、スティーブン・レヴィを起用したように人材の獲得にも目を向けていきたいですね。

「メディアの輪郭」のつくりかた——リサーチをはじめた理由とこれまでを振り返る

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(Photo by Aleks Dorohovich/Creative Commons Zero

メディアの輪郭」というブログを開始してもう1年半ほどになるようです。はてなブログの管理画面を見ていたら、ブログ作成日が2013年10月22日。これまでに300本近くの投稿をしてきたとのこと。開始は同年11月12日。初日に以下にある3本を投稿していることから、どこか力が入っている気がします。せっかくなので、自分の整理も兼ねて1年半をざっくり振り返ってみます。

「メディアの輪郭」をはじめた3つの理由

もともとの経歴は2012年はNPO法人グリーンズが運営するgreenz.jpというメディアでライターインターン、企業のコンテンツマーケティングを手がけるメディア企業で編集アルバイトを経験し、就活もせずどうしようかと思っていたときに、Wantedlyで求人を見つけた「現代ビジネス」で2013年6月からエディターをしているという流れです。

非営利/営利メディアのどちらも経験したことで、いろいろ考えたのがブログの開始時期に重なっているのかもしれません。大学は英語学科を出ているんですがなぜか編集の仕事をしているのには、いくつかの理由があり、それもブログをはじめたことにつながっています。

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(タイ最大の難民キャンプであるメーラキャンプで撮った写真

ひとつは新潟県佐渡島が出身であり、地方と都市の情報ギャップを感じたこと。ふたつは大学でミャンマーの難民研究をしていてタイとミャンマーの国境にある難民キャンプに行ったときに、先進国と途上国の情報ギャップを感じたこと。最後に大学後半でNPO/NGOの活動にも参加するなかで、社会課題に取り組む人は多いものの、課題やソリューションなどが思いのほか伝わってないと思ったこと。これらがメディアにかかわることになった主な理由です。

地方、途上国、NPO・・・どれも情報発信が遅れていたり、編集するものはあるものの編集する人がいなかったり。そんなことをひしひしと感じていました。まわりは就職で英語教師やホテル、航空・外資系企業などが多かったように思いますが、それでも編集を選んだのには情報発信におけるビハインドの実感が大きかったのでしょう。

ビハインドが大きいからこそ、メディアの最先端を知らないといけないのではないか。徹底的にリサーチをしてくわしくなって、そのなかで地方、途上国、NPOの情報発信で生かせることがなにかあるのではないか。そんな思いで開始し、いまもその思いの延長線上にいます。

メディアの輪郭をやっていると、ものすごいメディア好き(関心対象がメディアそのもの)な人と出会うことも多々ありますが、そのたびに自分は関心対象がメディアではなく、メディアというツールを使ってなにを実現するのかという方向に関心があるのだと再認識しています。メディアにあまり関心がなく勉強の意味合いが強いからこそ、リサーチを続けられているのです。

当初のテーマは「新興メディアの視点」と「大手メディアの実験」

「メディアの輪郭」というネーミングは、ただ自分がメディアについて本質的なことは書けないということや、そもそも意見や議論とかの発信が苦手なこともあり事例や取り組みを淡々と紹介するスタイルで長い目で多くの投稿を見ていったときに読者の方にとってなにか気付きがあればといった冗長でアバウトな由来です。

あと「メディアの本質」とかにしてしまうと、毎回ちゃんと書かないといけなくなる気がして、力を抜いていつでも書けていつでも辞めることができるように輪郭という言葉を選びました。独自ドメインをとっていないことやブログ専用のSNSアカウントをつくっていないことも上記の理由からです。ニッチなので無理せずじわじわと広がればいいなあと思っています。

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ブログをはじめるにあたり、次に決めたことは「なにを書くか」ということ。メディアの輪郭の場合、「新興メディアの視点」と「大手メディアの実験」という2つのテーマを掲げました(いまでは書評や取材後記のような使い方もしています)。新興メディアはたとえばバズフィード、大手メディアはニューヨーク・タイムズというと分かりやすいでしょうか。新興か大手かどちらかに絞ればもっとエッジが利いていたかもしれませんが、あくまで輪郭であり勉強であるので、まんべんなく取り扱う必要がありました。

新興メディアはテクノロジーを活用したり、SNSで流通を獲得したり、大手メディアにはできないメディアのあり方や未来を見つめていて、逆に大手メディアは資金や人員がいるからこそできるトライもあり、それぞれを見ることはいまでも非常に興味をそそるものです。

書くことを決めたあとは、いろいろと調べました。国内ではどんな人が海外メディアについて情報発信しているのか、海外ではどんなメディアや人がメディアについて情報発信しているのか。この2つについてざっくり調べた気がします。

前者は「海外メディアについて知りたい時に必ず読むブログ7選」という投稿で紹介。後者はツイッターのリスト(MEDIA INFOと 海外メディアが気になるときにサクッと見るリスト)とグーグルアラートで追うようにしています。グーグルアラートは50個ほど登録していて、主なものだと「BuzzFeed」「Vice Media」「Future of Media」「Audience Development」「Journalism startup」「Investigative Journalism」「Long Form」など。最近だと「Decentralized Web」とかも気になって登録しました。

グーグルアラートで1年間バズフィードの情報を追っていたこともあり、1万字を超えてしまった「収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト『バズフィード』の2014年を振り返る」という記事を時系列順で書くこともできたりしました。また、ブログで情報収集・発信を続けるにつれて、ブログやメディアでも紹介いただくようになりました。

転載、イベント登壇、寄稿、連載について

外部転載がはじまったのは、2013年11月12日にブログをはじめて2週間後の11月27日。BLOGOSにて「ニッチな穴を狙え! ジャーナリスト、ネットニュース編集者らが語った『新しいネットメディアの可能性』」という記事がはじめてでした。BLOGOSがきっかけでいろんな人に知ってもらうことができました。その後、ハフィントンポスト日本版All About News DigFashionsnap.comなどに転載されています。今後もできるだけ外部配信は増やしていけたらと思っています。

また、メディア関連のイベントで登壇する機会もたまにいただくようになりました。国内外のバイラルメディアを初期の頃から追っていたこともあり、2014年夏ごろには「キュレーションメディアサミット」「バイラルメディア祭り」といったイベントに登壇。

これまでスライドを3つ公開しているのですが、以下のものは7万回閲覧されています。3つ合計では11万閲覧ほど。イベントとは別に友人・知人からメディア相談を受けたときに、気分でオリジナルのスライドを用意してカフェで話したりすることもあったりするので、情報をまとめるのは好きなのかもしれません。引き続き勉強も兼ねてスライドはつくっていきたいなあと思います。

メディアの輪郭をはじめてから、現代ビジネスでも編集の傍ら「デジタル・エディターズ・ノート」という連載をもたせていただいています。国内外のメディア動向を追っていて、海外はこのブログよりも長めに書き、国内においてはあまり取り上げられていないけれど自分が注目している人やメディアをじっくり紹介することを意識しています。国内はいくつか例を挙げると以下のあたり。

ブログの話に戻ると、転載以外にも寄稿なども増えました。紙媒体では、『新聞研究』 『事業構想』、ネットメディアではTechCrunch JapanやJapan In Depthなど。そのほか、個人や企業のメディア関する相談が増え、週に数回ほどヒアリングを受けたりアドバイスをする機会があります。多様なメディアの状況を聞くことで視野が広がるのでとても楽しいです。そういえば、朝日新聞の記事でコメントが掲載されたこともありました。

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地道に続けていると、読んでくださる方は増えるみたいで、「Feedly Subscribers Checker 2」で購読者を見てみたところ、1400人以上の方がFeedlyで購読しているようでした。ニッチなトピックにかかわらず、この数字はとても嬉しいです。引き続き、仕事以外の時間で地道にリサーチを続けていきたいと思います。

続けられた理由は先述の地方、途上国、NPOという3つの軸での情報発信に向けてということや、自分が気になったものをそのときの気分の文量でしか書いていないこと、意外と海外メディアを追っている人が少なくてもったいない気がすること、紙/Web/スマホなどメディアのあり方が大きく変わろうとしていること・・・などいろいろありそうです。グリーンズのインターンを卒業するときに共同編集長の鈴木菜央さんからもらった「どこでもいいから(情熱的な)ニッチナンバーワンになれ」という言葉も影響しているのかもしれません。

改めて振り返ってみると、ブログ開設してからは情報源の確保と執筆くらいしかしていないですね。海外メディア事情については上の世代の方々に解説や持論を発信している人はいるため、基本的に自分の意見は伝えず情報を提供するスタンスをとっています。そういう意味ではこのブログは楽なのかもしれません。今年は本もなんとか読めているので紹介したり、もっと内容のある決定的な記事も書いたりしたいです。

「狙ったターゲットに役立つ情報を届ける雑誌はWebに取って代わる」——紙雑誌生き残りのヒント

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『編集会議』2015年春号を読みました。マーケティングに活かす「編集者」的発想法という特集タイトルで、企業のコンテンツマーケティングから雑誌編集長の対談、編集者とライターの打ち合わせ公開、プロの書き手6名のインタビューなど盛りだくさんです。

なかでも紹介したいのは、『Harper's BAZAAR』編集長の森明子さんと『WIRED』編集長の若林恵さんの対談。それぞれハーストとコンデナストというグローバルメディア企業の雑誌としての立ち位置は同じです。二誌にまず共通していたのは、ネタの豊富さ。海外版もあるため、日本にいながら世界中の情報を得ることができるということです。WIREDのウェブ版をみると、おもしろい翻訳記事が多いですよね。

ローカライズする際の工夫として若林さんは1万字くらいあるロングフォームのインタビュー記事をそのまま掲載することを挙げています。「『海外では、こういうスタイルは普通なんだぜ』という、内容だけでなく雑誌としての見せ方も含めて伝えたいんです」という言葉がありました。一方、森さんは掲載時に写真を切り取ったりレイアウトを変えることが厳しい規則があり、結果として海外のものをそのまま伝えるようにしていると別の理由を語っています。

紙とWebの編集体制については、どちらとも同じチームでやっているそう。若林さんは「紙とWebの読者層は、意外とかぶらないんです。極端にいえば、Webで読んだ記事を、雑誌で読んでも同じだと認識しないこともあるんじゃないか」という重要な指摘を示しています。

さらには紙とWebでは期待するほどのシナジー効果はなく、別チャンネルとして割り切っているとのこと。ただ、広告に関してクライアントにとっては両媒体で見せ方を変えて効果を見込むという意味ではシナジーがあると述べています。

ターゲティングについては、「『WIRED』の読者は、『WIRED』に掲載されている情報に興味がある人」と若林さん。「ターゲットを決めてしまうと、誌面の情報が単なるノウハウになってしまう」「"狙ったターゲットに役立つ情報を届ける"という機能性だけの雑誌はWebに取って代わる」といった理由からだそうです。

偶然にも前のページの対談に登場する『SPA!』編集長の金泉俊輔さんも「人間って合理性の高いだけのものに関して、感動したり怒ったりしないんですよ。そのためにも情報コンテンツのつくり手は、常識だと思うものを徹底的に疑ってほしい。常識がひっくり返ったところに喜怒哀楽があります。これは機械にはできない、人間だからできることです」といった発言をしていました。

そのほかにも「読者を信用すること」「若者が雑誌を買わないのは、雑誌を読んだらおもしろかったという体験がないから」など興味深いキーワードが出てきている今号の『編集会議』はおもしろかったです。

 

この1年でスマホからの動画視聴は1000万人増/SNS利用は700万人増——国内のメディアやスマホの最新事情を知るためのデータ15選

年初に「2015年のメディアづくりに参考になりそうなスマホや動画に関するデータ10選」という記事を書きました。以降もメディアやスマホ、動画視聴、コマースなどさまざまな分野における調査が出ています。気になるものをメモしていたので、基本的な部分から具体的なものまで、簡単に紹介。なんとなく、スマホを中心とするメディア環境がざっくりつかめるのではないかと思います。

1. PCからのインターネット利用者数減少が約5000万人でストップ

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(出典:ニールセン

ニールセンが3月に発表した「Digital Trends 2014」。そのなかでは、PCとスマホのインターネット利用者の推移のデータがあり、PCからのインターネット利用者数は約5000万人で減少がストップしていることがわかります。一方のスマホは4500万人を超えるなど微増が続いています。

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(出典:ニールセン

ほかにも上の表にもあるPCの利用目的(とスマホ利用での目的)も興味深いです。PCでは「必要な知識・情報を得るため」「新しい知識・情報や面白い情報を得るため」「商品やサービスを購入するため」の3つが上位を占めています。スマホではそれらがトップ10には入っているもののギャップがあるのは媒体の特性を理解するうえでもおもしろいですね。

2. SNS利用の現状:スマホからのSNS利用者は4243万人(2014年に700万人以上増)

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(出典:ニールセン

ニールセンが1月末に出した調査によれば、「スマートフォン利用者の92%がSNSを利用」とのこと。PCからのSNS利用者が3442万人なのに対し、スマホでは4243万人と2014年に700万人以上増えています。

利用サービスについては、LINEとFacebookがそれぞれ3400万人前後の利用者を抱えているそう。2014年に最も利用者数を伸ばしたサービスはInstagram。広告も芸能人の利用が増えている気がするので、2015年もビジュアルコミュニケーションは注目ですね。

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(出典:ニールセン

3. 高校生のスマホ利用:女子高校生の1日の平均使用時間は7時間

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(出典:デジタルアーツ

さきほど小学生のスマートフォン利用を紹介しましたが、こちらの資料では高校生のデータに触れたいと思います。調査の母数が少ないものの、男女平均で96%。女子高校生の1日の平均使用時間は7時間、さらには女子高校生の約4人に1人が「0時から3時」に使用しているとのこと。この調査での女子高校生のインスタグラム利用率が35%である一方、男子高校生のそれが6%というのもおもしろいです。

4. 小学〜高校のネット利用:コミュニケーション目的が89%(高校生)

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(出典:内閣府

内閣府が2月中旬に出した、平成26年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」は満10歳から満17歳に対する調査。母数のケタは異なるものの、先述の資料とも重なる部分が多いです。

高校生の95.8%がインターネットを利用し、そのうち63.3%がスマートフォンで2時間以上ネットを利用しているとのこと。高校生に関してデバイスの利用目的は、コミュニケーションが89%、音楽/動画視聴が80%弱。小中学生になるとゲームの割合が多くなっています。また保護者のインターネット利用についてもデータを発表していて、スマホ利用は7割弱で、各デバイスでの平均利用時間は109.2分となっています。

小学生に関しては、ICT総研が1月末に発表した「小学生のスマートフォン利用実態調査」によれば、小学生の携帯電話利用者は3人に1人(スマホ利用者は6人に1人)とのこと。小学生のスマートフォン利用者数は2018年度末には144万人にまで増加すると予想され、全児童数の22.5%が利用することになるようです。

5. 10代のスマートフォンの接触時間が、PC、テレビを抜いてトップに

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(出典:ジャストシステム

ジャストシステムによる『モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査』(総集編)では、12月度調査において、10代のスマートフォンの接触時間が、PC、テレビを抜いてトップとなったという象徴的なデータが示されています。「11月度調査では、10代女性の1日あたりのスマートフォン利用時間は200分を越え、スマートフォンは通話のためのツールではなく、一つのメディアとしてポジションを獲得した年」との分析もあります。

6. ニュースキュレーションアプリ:スマホ上で「SNS」「ゲーム」「動画」アプリ利用が1日平均約2時間

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(出典:ジャストシステム

同じく『モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査』には、ニュースキュレーションアプリについての項目も存在します。2014年はスマートニュースやグノシー、アンテナ、ラインニュースなどが成長し、2015年にグノシーが上場と、盛り上がっている市場です。

全国の15歳から69歳の男女1,100名を対象の調査ですが、利用率はYahoo!ニュース、スマートニュース、ラインニュースという順。スマホ上では「SNS」「ゲーム」「動画」アプリに1日平均約2時間、10代では3時間以上使うというデータも出ており、2015年もさらなる時間の取り合いが繰り広げられていくことでしょう。

7. ニュース/ポータルサイト・企業サイトが購買に与える影響

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(出典:アドビ システムズ

アドビ システムズ日経BPコンサルティングに委託して実施した調査によれば、ニュース/ポータルサイトや企業のウェブサイト、ソーシャルメディアが購買行動に与える影響が大きくなっているという結果が出ています。逆にテレビや新聞、雑誌は軒並み激減しており、この傾向はしばらく続くことでしょう。

また、テレビ・新聞・雑誌を見て気になった商品の最新情報をWebサイトで調べる消費者が88.3%いるとのこと。つまり、テレビ・新聞・雑誌からすぐに行動に移らないという見方もできそうです。 

8. 動画視聴:ミュージックビデオが44%でトップ、「ながら視聴」は61%

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(出典:オプト

オプトによる「動画視聴行動調査2015」によれば、動画サイトで視聴した動画の分野のトップは「ミュージックビデオ」で調査対象1200名の44%となっており、昨年比12ポイント増です。そのほか、おもしろ、お笑い、映画、ニュースなどが続いています。

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(出典:オプト

また、ながら視聴に関しても"年末年始"限定のデータを出していて、61%となっています。そのときのデバイスは56%がノートパソコン、44%がスマホと回答。さらに上のグタフはながら視聴のシチュエーションを示しており、ノートパソコンではメールしながら、スマホではLINEをしながら、という違いが出ています。

9. この1年でスマホから動画視聴が約1000万人増加

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(出典:ニールセン

動画についてはニールセンの「ビデオ/映画」カテゴリの最新利用動向をチェックしてみましょう。この1年でPCからの動画視聴が減少し、2015年1月時点でスマホが3701万人、PCは2682万人となり、スマホから動画視聴が1000万人近く増えていることがわかります。

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(出典:ニールセン

各スクリーンからの「YouTube」「ニコニコ動画」「GYAO!」という箇所では、GYAO!のみPCからの視聴が増加しています。共通点は、一訪問あたりの利用時間はスマートフォンよりもPCの方が長いということでした(ニコニコ動画では、スマホからの利用時間がの3分、PCからは27分で約9倍の差がある)。

3サービス全てにおいて、「PCは男性、スマホは女性」の割合が高くなっていることも興味深いポイントだと思います。

10. 音楽視聴:「動画アプリ」からの視聴が56.1%とトップ

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MMD(モバイル・マーケティング・データ)研究所はスマホでの音楽視聴についてのデータを発表しています。iOSユーザーの32.9%、Androidユーザーの20.2%が「ほぼ毎日」スマートフォンで音楽を聴いているとのこと。また、視聴方法については「動画アプリ」が56.1%、「無料音楽配信アプリ」が33.2%、「購入したCDからスマートフォンに取り込んでいる」が32.7%という結果に。有料/定額はまだまだ少ないようです。

11. スマホ広告:2014年のスマホ広告市場規模が3,008億円(2015年は3,903億円との予測)

 

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(出典:CyberZ

サイバーエージェント子会社CyberZの調査では、2014年のスマホ広告市場規模が3,008億円で、前年比162%と高成長だったことが分かっています(前年予想時は2,304億)。この背景には、「スマートフォンの特性を活かした広告媒体や広告フォーマットの登場により、スマートフォン向け広告商品の多様化が進み、広告主のスマートフォンにおけるプロモーション環境は大きく改善」といったことがあるようです。

ちなみに、2015年にはスマホ広告市場は3,903億円と予測されています。ニュースアプリやキュレーションメディアのマネタイズとしても運用されることが多いスマホのネイティブ広告市場も右肩で上がっていくとのことです。

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(出典:CyberZ

12. アプリ経済:2013年度は約8200億円規模、年次90%成長

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(出典:Google Japan

グーグルと野村総合研究所NRI)がまとめた「インターネット経済調査報告書」2014年度版は、インターネットが日本経済全体にどのように貢献しているかを把握することができる貴重な資料です。

調査では、スマホから生まれたビジネス領域を新しく「アプリ経済」と捉え、2013年度における規模は約8200億円という数字を発表。2014年時点で56.5 万人分の雇用創出をしており、アプリ経済が2011~2013年度にかけて、年平均成長率90%と高成長を遂げていると分析しています。

13. コンテンツマーケティング動向:実施理由の67%がブランド認知、半数以上がアウトソース

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(出典:エコンテ

エコンテによる「コンテンツマーケティング調査レポート(2015年版)」が、コンテンツマーケティングの現状をつかむのに最適な資料です。まずは実施理由。ブランド認知がもっとも多く67%、顧客獲得が50%となり、そのほか見込み客の育成やエンゲージメントが続いています。

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(出典:エコンテ

実際にどのような手法でアプローチしているかというと、ソーシャルメディアや自社ブログが多い結果となっています。ソーシャルメディアのなかでは、コンテンツマーケティングにフェイスブック取り組むという回答が7割という結果に。6割がフェイスブックの効果を感じているとのことです。

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(出典:エコンテ

また、おもしろかったのが、コンテンツをアウトソースしているかどうかというもの。半々くらいとなっていて、デザインを外部に手がけてもらうことがいちばん多い結果となっています。

そのほかにもコンテンツマーケティングのむずかしさ、過去の情報発信/今後の情報発信、実施効果をどういう軸でおこなっているのか。「コンテンツマーケティング調査レポート2015年版」はこれからコンテンツマーケティングを導入する際の説明や提案に向けても有益な資料になると思います。

14. ハッシュタグ:約4割が利用経験あり、気になる商品や情報を検索するため

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(出典:アライドアーキテクツ株式会社)

アライドアーキテクツ株式会社が発表した「女性のハッシュタグ利用状況と利用しているSNSについての実態調査」はこれまでのデータよりも切り口が具体的なものですが、非常に興味深いです。36%がハッシュタグ利用経験があり、利用SNSツイッターが83%とトップ。

「気になる商品や情報を検索するため」が6割を超えていることから、ECなどでももっと活用されるようになるのでしょうか。実際、食品や化粧品の検索を経験している人は4割を超えているとのことです。

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(出典:アライドアーキテクツ株式会社)

理由については、「検索が簡単なため」(28%)、「情報が整理されているため」(19%)、「リアルタイムで情報を得られるため」(16%)、「見ているだけで時間が潰せるため」という順になっています。

15. スマホからのEC利用:「キーワード検索を利用」は77%

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(出典:ゼロスタート

ロスタートが3月に発表した「スマートフォンでのEC利用調査」によれば、消費者の62%がインターネット上のショッピングモールを利用しており、40%がECサイトのアプリやスマートフォン向けサイトを利用しているとの結果。

スマホからのEC利用にともない、「スマートフォンでの購入頻度が上がった」(42%)、「商品情報の比較頻度が上がった」(35%)、「店舗に行く前・店舗内でスマートフォンで商品検索してから購入」(20%)というデータも出ています。サイト内での行動では、「キーワード検索を利用」が77%との結果も注目です。

おまけ:雑誌広告の広告注目率は45%、精読率は約30%

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(出典:ビデオリサーチ

最後におまけとして、紙媒体のトピックをひとつ。ビデオリサーチによる第2回雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」の結果を紹介(21社36誌、合計646素材の広告を対象に調査)。

掲載された広告に「注目」した(確かに見た)人の割合を示す「広告注目率」は、36誌646素材平均で44.7%でした。
また、読者のうち、広告を「確かに見」て「内容まで読んだ/じっくり見た」人の割合を示す「広告精読率」の平均は28.9%でした。

広告に注目した読者の66.6%が広告商品・サービスに「興味関心」を抱き、53.0%が「購入・利用意向」を示しているとのこと。ウェブ広告でもこのような調査を探してみたいですね。 

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ひとつひとつのデータをバラバラに見ることはあっても、なかなかまとめて見ることは少ないのではないでしょうか。まとめて見ることで、意外な関連が見つかったり、全体感の理解につながったり、次のトレンドを読むことにつながると考えています。なにか参考になれば嬉しいです。

 

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「本を楽しんでいる時間は共有しづらい」——新しい本との多様な出会いをつくるということ

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今年に入ってからブログで本を紹介することが増えたのですが、先日、本と出会うiPhoneアプリ「Stand」について取材することができました。StandはiOSアプリで、非常にシンプルな設計の本のアプリ。

バーコードスキャンかワード検索でどんどん本を投稿していくことができます。開くたびにタイムラインが表紙だらけなので、本好きの方はヘビーに使えるかもしれません。同じ本を投稿したユーザーが紐づけられたりとソーシャルな機能もおもしろいです。

現在は、Webサービスエンジニアの井上隆行さんとブック・コーディネイターの内沼晋太郎さんがこのアプリを手がけています。内沼さんの本屋講座に参加した井上さんがアプリを見せたことで、内沼さんはまさに新しい「本屋」のあり方だと感じたそう。

 「最初に話を聞いた段階では、ほかの本棚アプリや読書管理サービスとの違いが明確ではないと感じました。でも実際に画面を見たり、モックアップを触るなかで、ひょっとしたらこれは全然違うものになるんじゃないかと思ったんです」(内沼氏)

「理想はいろんな本好きが共存できる状態」---井上隆行氏と内沼晋太郎氏に聞く、シンプルなアプリ「Stand」だから生まれる本との出会い

シンプルでフラットに投稿が並ぶことがとてもいい点だなと思っています。基本的には本の紹介と発見という2つの楽しみ方だありますが、さまざまな状態にある、さまざまなユーザーが投稿できる場所なのです。

ぼくは本を読んでも読書管理サービスを使うことがあまりありません。でも、ツイッターやインスタグラム、時にはブログに本を買ったことや読んだこと、考えたことなどを投稿することはあります。それはたぶん、普段づかいしているサービスだからでしょうか。

Standには欲しい本も買った本も、これから読む本、読んでいる途中の本、読み終わった本・・・いろんなタイミングで本を気軽に投稿できるのが心地いいです。もちろんコミックや雑誌好きの方なども投稿されていて、先述の記事タイトルの「いろんな本好きが共存」ということを実感できます。コメントもできますし、しなくてもいいのでとりあえず自分の本棚的に使うことも可能です。

さきほど「さまざまなユーザー」と言いましたが、ユーザーは読者のみならず、本屋や編集者、出版社などの本の中心でありまわりにいるプレイヤーも利用していくことでしょう。一般ユーザーと同じく表紙とコメントでの投稿がフラットに並ぶなかで、どのような使い方ができるのか楽しみです。

たぶんしばらくはシンプルなままで、どこかのタイミングでもっとコミュニケーションできるようになったり、アマゾンなどECとも紐付けしたりするのではないかと思います。ぼくは新潟の佐渡島というど田舎出身で本屋もほとんどなく、本との出会いがほとんどなかったので、地方の人の活用が増えたり、でいなかった人が発見にしたらよりアプリの可能性が広がるのではないかと思います。

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ぼくがStandを知ったのは、「本のためのインターネット? Standとそのこれから」というイベントにたまたま参加したときこと。StandがTwitterのように時系列が並ぶのではなく、おもしろい人やコンテンツが繰り返しピックアップされるTumblr的だよね、という話を覚えています。

ほかにもアマゾンのほしいものリストを読み込んで、誰かがリストにある本を投稿すると通知が来るのはどうかというのもおもしろかったです。Twitterのお気に入りもそうですが、ほしいものリストもとりあえず入れているものが多く掘り返すことがないので、こういった機能がついてくると、これまでになかった本の出会いが生まれる気がします。

あとは「本を楽しんでいる時間(瞬間)は共有しづらい」という言葉も出ていました。そういう意味で、Standを使うなかで、自分が最近読んだ本を別の人がずっと前に読んでいることを知ったり、いろんな瞬間で投稿できるのは本の楽しみを多様な時間軸で切り取ることにもつながります。また、たとえ投稿しなくても、いろんなの人の思考や価値観の源泉みたいなものを本からたどることもできたりするのでおもしろいと思います。

standbk.co

 

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個人サイトとしてはじまった「ViralNova」の躍進——20名体制で月間訪問数「1億」超え

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2013年の終わりに「立ち上げ半年で3000万PVのメディア『ViralNova(バイラルノバ)』は1人体制らしい」という記事を書いたことがあります。バズフィードやアップワーシーなどバイラル/キュレーションメディアが注目を集め、その後追いサイトが多くでてきたころで、バイラルノバもその一つでした。

最近、このサイトにフォーチュンなどの海外メディアが再び焦点を当てています。先述の記事では「運営1人/月間3000万PV」ということで十分キャッチーでしたが、その後も成長を続け、月間1億訪問数とのこと(ちなみにバズフィードは2億)。

2013年冬には売り先を探していたようですが、いまでは外部からCEOも雇い、メディア企業として生まれ変わりました。個人で運営していたときのオハイオからニューヨークに移動し、オフィスを開設。20名以上のスタッフが加わり、規模拡大に成功しました(バズフィードは900名弱)。スタッフはTumblrYouTubeReddit、Imgur、Twitterなどに張り付いて話題を拾っているとフォーチュンの記事でも言及されています。

バイラルノバはネイティブ広告に本腰を入れ、さらなる収益化に向かいます。トップ画像においても右下の記事はスポンサードコンテンツとなっているように、ところどころ広告が入っていることを確認できます。昨年は1000万ドル(12億円)の売上を記録したようですが、今年は倍増を計画しているとのこと。

メディアの規模としてもさらなる飛躍を目指します。DIYやサイエンス、動物など特定のジャンルも強化しており、それぞれにフェイスブックページを開設。バイラルノバのメインのフェイスブックページには200万以上のいいね!が集まっていますが、それぞれのジャンルでも潜在的なファンを囲っていくのはバズフィードなどもやってきたやり方でもあるので、今後の伸びも楽しみです。

 

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