メディアの輪郭

更新するだけ健康になれる気がしています

読者が絞り込まれた価値あるメディアづくりには、「声なき声」に耳を傾けることが大切

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Chikirinの日記」というブログを書かれているちきりんさんの『「自分メディア」はこう作る! 大人気ブログの超戦略的運営記』という本を読みました。

「考えたこと、書いたことをそのまま受け止めてほしい」

インプットよりアウトプットが好きで紙の日記帳を書いていたちきりんさんがブログをはじめたのは2005年のこと。行動の記録ではなく、思考の記録として日々書き記しているようです。また、匿名での活動を選んだ理由については以下のようなことからとのこと。

私としては、そんな先入観を持つことなく、ぜひ私の考えたこと、書いたことをそのまま受け止めてほしいと考えていました。肩書きによる信用補強がなくても、読む価値がある文章だと思ってもらえるのかどうか、それが知りたかったのです。(36ページ)

賞味期限の長い記事を書くことでも知られるブロガーのRootportさんも「ネットでは『誰が言ったか』よりも『何を言ったか』/匿名主義の信条」と書かれていたことを思い出しました。Rootportさんは「ブログは共感と代弁のメディアだから」「ネットでは『誰が言ったか』よりも『何を言ったか』が大切だと信じているから」という理由を挙げています。

価値あるメディアとは「読者ができるだけ似通っているメディア」

また、ちきりんさんがブログを書くときには「1エントリにつき1メッセージ」ということを心がけているとのこと。文章だけなら30分、図表や写真修正・加工などがあればさらに30分ほどかけて書いていると紹介されています。

ブログの起点は、「これについて書く」とか「この本を紹介する」ではなく、「このことを伝えたい!」というメッセージの発生なのです。(46ページ)

伝えたいメッセージを決めて、そのための論理構成を決め、必要な情報を集め、書く、という流れで作業しているそうです。ちきりんさんは自身のブログのゴールを「価値あるメディアに育てたい」と設定。本書のなかでは、その定義を「読者ができるだけ似通っているメディア」「何らかの共通点を持って、読者が絞り込まれているメディア」としています。

また、ちきりんさんの掲げる自分メディアをつくるための5か条も参考になる部分でした。それぞれ「コンテンツを散逸させない」「ネットの中の人にはならない」「つながる世界でつながらない」「オープンな場所に居続ける」「信用力を売らない」というものです。

これらの項目をくわしく読むと、個人的な日記としてブログをはじめていますが、きわめて読者の目線を大事にされていると強い印象を受けました。その後の項目でも、ブログに反応する読者ではなく、とくにひっそりと読んでくれているサイレントマジョリティを気にしていることも書かれています。

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これまで紹介してきたことは本書の前半の内容なのですが、後半にはベストエントリ集も収録されているので、いろんな読み方ができます。ちきりん年表やこれまで43社から出版依頼があったというタイムラインも表で見ることができておもしろかったです。

また、この本が『「Chikirinの日記」の育て方』という電子書籍をもとにした「電子書籍の紙化」ということも興味深いと思いました。